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跳び鰐討伐

 クロス達は跳び鰐に背を向けて駆け出した。

 3階層への登りまでは直線で100メートル以上あり、とてもではないが足の速い跳び鰐からは逃げ切れない。

 クロス1人ならどうとでもなるが、新米冒険者4人を連れていてはそれも無理だ。


 クロスの狙いは手前にある横に伸びる通路。


「ここで足を止める。皆はこのまま行けっ!」


 殿を走るクロスは通路に飛び込むと直ぐに伏せ撃ちの姿勢を取った。


 跳び鰐は捕食者としての本能の赴くままに横に逸れた1体の獲物よりも先に逃げる4体の獲物を追う。

 クロスの狙いはそこだ。

 アルド達を追う跳び鰐の側面を狙う。


 クロスの目の前を通過しようとする跳び鰐。

 伏せ撃ちの姿勢のクロスは低い位置から跳び鰐の横腹を狙って引き金を引いた。


ドンッ!


 弾丸は右前肢の根元付近から跳び鰐の右脇に命中し、肺を貫く。


『ギュワッ・・・』


 肺を破壊されて血と空気を吐き出しながら足を止める跳び鰐。

 クロスは即座に次弾を装填して引き金を引く。


ドンッ!


 2発目の弾丸は跳び鰐の右脇腹から体内に飛び込んだ。

 弾丸に内臓を引き裂かれた跳び鰐は堪らずにのたうち廻り、仰向けになるとその動きが鈍くなる。


「今だっ!今なら攻撃が通りますっ!」 


 クロスは跳び鰐に駆け寄ると仰向けのままのその顎に銃剣を突き刺して叫ぶ。

 普通の鰐同様に咬合力は強力でも顎を開く力が弱い跳び鰐だが、2発の弾丸を受けた上に、下顎から上顎まで串刺しにされ、瀕死の状態だ。


「はいっ!」

「あとは私に任せろっ!」


 戻ってきたアルドとシルクが跳び鰐に斬り掛かった。

 ナーシャは守りの祈りで、アリアは弓で2人を援護する。


「尻尾には近づかないように!一撃で骨が砕けます」


 跳び鰐の武器は顎だけでない、強靭な尻尾の一振りで人間など簡単に吹き飛ばされてしまう。

 瀕死の状態とはいえ、思わぬ一撃を振るってくる可能性がある。


「アルドッ!気を付けてっ!」

「えっ?うわわっ!」


 迂闊に尻尾に近づいたアルドがナーシャの声で慌てて飛び退いた。


「苦しかろう、今楽にしてやるぞ!」


 偉そうに言いながらも、狙ったわけでもないシルクのサーベルの一突きが偶然にも跳び鰐の心臓に突き刺さり、弱っていた鼓動を止める。

 結果、シルクの一撃がとどめとなり、跳び鰐は完全に沈黙した。


「やった・・・こんな強そうな魔物を倒した、すげぇっ!」

「ふんっ、私にかかればこの程度の魔物なんて他愛もないわ」


 格上の魔物を倒して気持ちが昂るアルドとシルク。


「何言ってんの!クロスさんがダメージを与えて、押さえつけてくれていたからでしょう!」

「それはそうだけとも・・・」

「シルクも図に乗ってはいけません。貴女がとどめを刺したのも偶然ですよ。クロスさん達がいなければ私達はとっくに鰐のお腹の中ですよ」

「分かっておる。分かっておるが、少し位図に乗ってもいいではないか・・・」


 ナーシャとアリアが冷や水を浴びせるようなことを言うが、それが現実であり、アルド達も分かっていることだ。


 慢心は禁物だが、シルクの言うとおり少し位なら自信と成長に繋がるだろう。


「まあ、いいじゃないですか。結果として皆で跳び鰐を倒したことは事実です。そして、全員が無事だった。これは冒険者として何よりも大切なことですよ」


 慢心は禁物だが、シルクの言うとおり少し位なら自信と成長に繋がるだろう。


「そうだよな。クロスさんのおかげとはいえ、俺達は無事だったんだ」

「そうよね。ちょっとだけだけど、白等級の冒険者としては凄いことかもしれないわよね」


 クロスの言葉にアルド達は互いに顔を見合わせて笑みを浮かべる。


「それに、跳び鰐の牙や魔石は結構高く売れますよ」

「「「「えっ?」」」」


 つけ加えるクロスの言葉を聞いた4人の目の色が変わった。

  

 跳び鰐は獰猛である一方で相手が自分より強者だと察すると直ぐに逃げてしまう習性がある。

 中級以上の冒険者なら然程脅威ではないのだが、元々の生息数が多くない上にそのような生態のため討伐するのが難しい、比較的レアな魔物なのだ。

 その上、牙は粉末にしてあらゆる薬品の元になるので、ギルドでもそれなりの価格で買い取ってくれる。

 それはクロスにしてみれば大した額ではないが、新米冒険者にとっては結構な高額であり、回収して帰れば多少はゆとりが出るだろう。


「やったぞアリア!これでご飯が食べられるぞ」

「ええ、そうですね。宿の部屋も追い出されずに済みますね」


 シルクとアリアの会話を聞けば2人がかなり切羽詰まった状況だったのが分かる。

 クロスは最初から跳び鰐の素材には興味がないし、生活にも困っていないので、アルド、ナーシャ、シルク、アリアの4人で山分けするように申し向けた。


 クロスの提案をアルド達は一旦は拒否したものの、跳び鰐の素材などクロスにしてみれば大した魅力もなく、興味がないと聞いて、しぶしぶ?(喜んで?)承諾したのである。


 その後、跳び鰐の素材を回収した5人は第3から第1階層の帰り道で素材採取をしながら地上に戻り、無事に水の都市へと帰還することができた。

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