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帰還、そして・・・

 目的の角熊に加えてワイバーンを3頭も仕留めたクロスとザリード達。

 流石にワイバーン3頭はクロスのクローラーでも運べないのでワイバーンについては特に価値のある部位だけを回収して持ち帰ることにした。

 それでもザリード達が依頼として引き受けた角熊よりもよほど価値がある、思わぬ収穫だ。


「クロス、ワイバーンの素材だが、それぞれ仕留めた分、お前が1頭、俺達が2頭の分配でいいか?」


 帰りの道すがら、運転席の横に座るザリード(エリーヌと席を交代した)が提案する。

 1頭はクロスが仕留めたとはいえ、クロスにとっては割の良い提案だ。


「それでいいんですか?依頼外の討伐でザリードさん達4人で2頭と私が1頭では公平な分配とは思えませんが?」


 確かに人数で割ればザリード達は2人で1頭の計算になり、1人で1頭分のクロスとは差が生じてしまう。


「構わない。実際に1頭はお前が1人で仕留めたわけだし、何よりお前に借りを作りたくない。だからこれで後腐れなしだ」


 そこまで言われてはクロスとしても文句はない。

 ワイバーンの分配については双方の同意ということで分配することになった。


 その後はトラブルもなく都市に帰還したクロス達。

 ギルドの前までクローラーを乗り付けて獲物を降ろすとザリード達はさっさと受付に向かい、依頼完了の手続きを済ませに行った。


 クロスもフィオナの窓口で素材採取とザリードからの依頼の完了報告を済ませ、ワイバーンの素材の買い取りを申し込む。


「依頼完了については確認しましたので報酬をお支払いします。ワイバーンの素材については査定に時間を要しますのでお支払いは後日となります」


 いつもどおりカウンターの上に報酬の貨幣を並べてクロスに確認させるフィオナと並べられた報酬を無造作に懐にいれるクロス。


「ありがとうございます。それではこれで・・」

「クロスさん、ちょっと待ってください!」


 早々に立ち去ろうとするクロスをフィオナが呼び止めた。


「はい、なんでしょうか?」

「先日、エマさん達と共同で行った捜索依頼についてです」


 報酬の支払いについてティアがやらかした件だ。

 フィオナはティアのやらかしについてクロスに説明する。

 クロスとエマ達の間で同意していた共同依頼について、ギルド内の引き継ぎされていたことをちゃんと把握していなかったティアが報酬を全額エマ達に払ってしまったこと。

 エマ達は既に水の都市から旅立ってしまっていて、報酬の回収もままならないこと。

 公都のギルド本部に報告して賠償する場合には調査を含めて時間が掛かること等を説明した。

 因みにティアは現在謹慎中ということだが、今回の件が公になればティアの処分問題にまで発展することは敢えて伏せてある。

 それを伝えてしまえばクロスは


「そういえば合意していなかった」


とか


「合意したと思っていたのは自分の勘違いだった」


と言い出すことが分かっているからだ。

 そうなればギルドとしては大事にせずに済むのだが、それをクロスに強いてはいけない。


「今回の不手際はティアだけの問題でなく、私を含めたギルド全体の問題です。いずれギルド長から正式に謝罪の機会を設けさせていただきますが、先ずもって私から説明をさせていただきました。本当に申し訳ありませんでした」


 そう言って深々と頭を下げるフィオナ。


「フィオナさん、頭を上げてください。・・・そういえば、エマさん達と合意していなかったかも、私の勘違いだったかもしれません。だから謝罪や賠償の必要はありませんよ。全ては私の勘違いが原因なのですからね。謝罪が必要なのは私の方です」


 案の定のことを言い出すクロスにフィオナは複雑な心境に襲われる。

 怒りや苛つきに似た感情だ。

 それがティアやギルドに気を使って自分だけが不利益を被ろうとしているクロスに向けられたものなのか、クロスにこんなことを言わせた自分自身やギルドに向けたものなのか分からない。

 きっとその両方なのだろう。

 だからといってクロスに謝罪の言葉を言わせるわけにはいかない。

 フィオナは無表情のまま顔を上げてクロスを見上げた。


「分かりました。今回の件は双方に認識の誤りがあったということでよろしいでしょうか?」

「そうですね。余計な手間を掛けさせてしまって申し訳・・・」

「それでしたらっ!・・・今回の件はこれで落着ということで」


 クロスの言葉を遮り、強引に事態を終結させるフィオナ。

 普段は物静かなフィオナの鋭い声にギルド内にいる他の職員や冒険者が何事かと様子を覗っている。


 フィオナの気持ちを理解したクロスもそれ以上は何も言わない。


「分かりました。それではこれで」


 カウンターを離れ、ギルドを後にするクロス。


 ギルドの出入口で2人の冒険者とすれ違うが、クロスは特に気にすることはなかった。


「・・・何故に妾・・私がこんなところに」

「仕方がありません、お金が無いんですから。生きるために稼ぐ、労働は尊いものですよ」

「だからといって、よりによって冒険者とは・・・」

「他に能が無いでしょう?それに、仕事をしないとご飯を食べられませんよ」

「ふん、しっかり稼いで、たっぷりと栄養を取ってすぐにでも力を取り戻してみせるわ・・・」

「あれだけ食べたのに全然力が戻らないじゃないですか。燃費が悪すぎますよ」

「ぐぬぬ・・・」


 そんな会話もクロスは聞き流し、全く気にしなかった。

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ワイバーンの残りのお肉は魔王様のお腹の中かな……?
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