恋は突然やってくる
水波 凪沙今年で18歳。恋愛をした事がない高校3年生。
白狼優矢今年で17歳。高校2年生の転校生。
栗木由華18歳。凪沙の幼なじみの親友。
吉川蓮18歳。学年一のイケメンモテ男。
中学ではなんとなく部活と勉強を頑張っていたから恋愛とかとは無関係のままそこそこいい学校に進学した。高校ではいわゆる二軍と言う位置についていて目立つ訳でも無くだからと言って目立たないわけでも無い。割と友達も多い。1番仲がいいのは幼なじみの栗木由華。幼稚園から高校まで一緒でなんならずっとクラスも同じ。でも由華と私は真逆で由華はスポーツ少女で運動ならなんでもできバスケ部に所属している。彼氏もいる。誰でも仲良くなれる。明るくてノリのいい性格。一方私は運動は陸上しか出来ず勉強もそこそこで恋愛すらした事がない。この度高校生活最後の年にジャンケンに負けてクラスの副委員長となってしまった。絶対に向いていない。なんでこんな時に。
「水波さん。このプリント長谷川から預かったよ。」
そう言って私にプリントを渡したのは中学からの同級生の吉川蓮くん。学年一のイケメンモテ男で狙っている女子の数から倍率は日に日に高くなる。しかし私にとっては普通の男子で友達としては好きだけど恋愛としては見れない。お母さんの言う通りに顔より中身で選びたい。顔なんていくらでも変えられるけど中身はいくつになっても変わらないから。
「ありがとう、委員会のやつね。」
お礼を言うと蓮くんは爽やかな笑顔で「どういたしまして」といい、いつも一緒にいる男子のグループに戻って行った。プリントの提出期限を確認して自分の席に戻ると由華が待っていた。
「水波、大変そうだね」
由華が自販機で買ってきたであろうパック型のカフェオレを片手に言った。
「まぁね、ジャンケンで負けちゃったし。」
と私が答えると由華は「お勤めご苦労」といい私に買ってきてくれたカフェオレを渡してくれた。
「由華〜!ありがと〜!由華のそういうところめっちゃ好き〜!」
と由華に抱きつくと由華は子をなだめるように「はいはい」と私の頭を撫でた。
「水波さん、プリント蓮くんから貰った?」
話しかけて来たのはクラスの委員長の長谷川誠くんだった。初めてクラスが一緒になったからあまり面識はないけど悪い人ではなさそうだった。
「あ、うん。さっき貰ったよ」
プリントを見せて答えると長谷川くんは
「よかった、じゃあ今日の放課後の委員会の集まりで使うみたいだから持ってきて。あと代表委員会の委員長を決めるみたいだから考えておいて。」
と言った。「わかった」と返事をすると長谷川くんは教室を出ていった。(代表委員会とは学級委員が入る委員会)そういえば今年の3年生は初めて学級委員をやる人しかいなかったっけ。代表委員会副委員長は2年生がやることになってるしまたジャンケンかな。
「学級委員大変そうだね〜。そういえばさ2年の転校生の話聞いた?めっちゃイケメンの。」
と、由華が話題を切り出して来た。
「何それ聞いてない。」
と答えると由華はカフェオレを飲んだ後に言った。
「2年の転校生がめっちゃイケメンで前の学校でバスケと陸上やってたんだって。それで学級委員長になったらしいよ。すごいよね。」
「へー、でも私には無縁だね。性格が良くないと。かっこよく見えない」
「律儀だね〜、まぁいつか水波にも春がやってくるでしょ。顔いいしモテるんだから。」
「お世辞はいいよ、そもそも私告白された事ない。」
と言うと由華は驚きのあまり口を大きく開けた。そして私を見るとクラスの男子達を見てから
「えーーーーー!」
と叫んだ。突然の事にみんなが驚いて私と由華視線が集まった。急に注目されて恥ずかしくなり由華の口を塞いで教室を出た。そして校舎と体育館の間の渡り廊下へ逃げ込むと由華に
「ちょっとそんなに驚かないでよ!びっくりするし変に目立ったじゃん!」
と言うと由華は私の肩を掴むと同情するように
「可哀想に、意気地無しばっかりだったんだね。」
と言った。なんのことか分からず沈黙が続くと昼休みが終わってしまい予鈴が鳴り急いで教室に戻った。結局放課後になってしまいなんの事か分からずに委員会に向かった。委員会は会議室でやるようで学級委員が誰か居ないか探していた。結局見つからず1人で会議室に行くとまだ1人しか来ていなかった。
(早かったかな)
そう思って中に入ると見た事ない2年生が居た。由華の話していた子だと思い3年生の座る場所に行くとイケメンの2年生が私に気づいてこっちを見た。ほんとにかっこいい子だなと思ったけど特に話す事もなかったからプリントを読んでいた。でもやっぱり知らない人との沈黙はさすがに辛かったから一応私は先輩だし話しかける事にした。
「ねぇ君、転校生でしょ?名前なんて言うの?」
私の問いかけに緊張する様子もなくこっちを見て
「白狼優矢」
とだけ言った。低い声だなーと思いながら会話を続けようと必死に考えていた。
「どこから転校してきたの?」
「千葉」
「結構遠いね。親の転勤とか?」
「まぁそんな感じ」
そんな会話を続けていると続々と人が集まってきていつの間にか会話は終わっていた。そして先生も来ると委員会が始まりまずは1年生と転校生だけ自己紹介からということになった。1年生の自己紹介も終わり優矢の番になると優矢は立ち上がって自己紹介を始めた。
「白狼優矢です。2年1組の委員長やってます。よろしくお願いします。」
そう言い自己紹介は終わり始めに代表委員会の委員長副委員長を決めることになった。でもやりたいという人は誰もいなかった。結局またジャンケンということになり適当だなーと思いながらジャンケンをすると綺麗にフラグ回収をするように負けた。なんとなくこうなる予感がしていたからかなんとも思わなかったけど副委員長になる人はなるべく話しやすい人がいいなと思っていた。
「じゃあ副委員長も決まったね。」
という先生の声でみんなが静まり返りジャンケンの時よりも心臓をバクバクさせていた。
「今回の代表委員会委員長は水波さん副委員長は白狼くんよろしくね」
と先生が言った。白狼って優矢かと思い優矢を見ると興味が無いのかどうでも良さそうな顔をしていた。とりあえず一言と言われ前に出て頑張りますと在り来りなことを言うと優矢も精一杯頑張りますとだけ言った。そして委員会の進行をして活動を決めて案外早く終わった。でも委員長と副委員長は報告書と振り返りと活動表の作成があり会議室に残ることになった。
「じゃあ改めてよろしく。」
と私が優矢の目の前の席に座って言った。
「よろしく」
と優矢も言うと不思議だなと言わんばかりの顔をした。
「何?何か変?」
と私が素直に聞くと優矢は
「いや先輩だったの気づかなかった。」
と言った。そういう事かと思い
「あー、確かに分かりにくいよね。背も私の方が小さいしシューズも全学年同じだし。珍しいぐらいだよね。そう言いう時はブレザーのボタン見るといいよ。学年ごとに違うの。今の3年生は茶色で、2年生は青で、1年生は緑。」
と私はブレザーを見せながらいった。優矢は「そうなんだ」といい興味があまりなさそうだった。
「じゃあ仕事するか〜。」
といい報告書を書き始めると優矢は振り返りを書き始めた。しばらくして書き終わると次は活動表を書くことになって優矢の隣に言った。
「うわー、あんた足長」
と私は思ったまま言うと優矢は「そうでも無いよ」といい活動表を考えていた。
「1ヶ月に1回挨拶週間があってその日は当番の人が校門の前で挨拶するんだ。来週にしようか。」
と私が言うと優矢も賛成して割と早く終わった。
「じゃあ私達の仕事も終わりだね」
と私が言って解散になった。急いで部活に向かい1時間だけ練習ができた。
次の日は割と早く学校に着いた。でも何人か教室にはいて由華が来るのを待っていた。由華を待つ間は学校の中をグルグル回っていて同級生や後輩と何人かすれ違った。時間が過ぎると由華がきていつも通りたわいの無い話をしていた。
「1時間目保体じゃん。合同かな?」
由華が不満そうに言った。1時間目が体育だと割と大変で着替えてからすぐに体育館に向かわなければいけない。
「どうだろうね、体育何やるんだろう。」
「バスケしたいな〜。」
「私バスケ苦手なんだよね〜。球技だいたい出来ない。」
「えー楽しいのにもったいない。」
そしてHRが終わり着替えてから急いで体育館に向かった。体育館の中に入ると優矢がいた。どうやら2年1組と合同みたいだった。優矢も私に気づいたようだったけど話しかけにくいみたいだった。それもそのはず周りには3年生の先輩もいるし私は由華と話をしていたからだろう。助け舟を出すように
「優矢、おはよう。」
と挨拶をすると優矢は
「おはよう」
と言った。相変わらずクールだなと思い、
「振り返り先生に提出した?」
と会話を続けようと思い聞くと優矢は考え事をしているような硬い顔をして
「提出はした」
と言った。優矢の行動がおかしいと思い
「私何か変なことした?」
と聞くと優矢は子供が拗ねたように
「名前覚えてない」
と言った。可愛い所もあるじゃんと思いクスクス笑うと優矢は
「1文字は覚えてるし」
と威張るように言った。
「当ててみてよ」
と私はイタズラをする感覚出言うと優矢は顔をしかめてから
「み、から始まるのは知ってる。み、み、」
と、言っていると由華が
「仲良くなったんだ。」
と耳打ちしてきた。すると優矢は
「思いだした。みなみ」
と言った。水波は苗字だけど一応当たってるしなと思い
「正解。よく出来ました。」
と私が言うと優矢は子供扱いされたと思ったのか
「子供扱いすんな」
と言った。クールだけじゃないんだと思いニコニコ笑っていると由華が
「水波、そろそろ始まるよ」
といい急いで反対側のコートに行った。授業は由華念願のバスケで苦手だからといい割と目立たないポジションについた。男子が使っている間はコートの端の方で休んでいると後ろから
「水波」
という声が聞こえた。誰だろうと思い振り返るとネット越しに優矢がいてバスケットボールを持っていた。
「優矢、なに?孤立してんの?」
と痛いとこをつくように私が言うと優矢は怪訝そうな顔をして、
「転校3日目舐めんなよ。まじで友達できねぇから」
と言った。私はどう反応したらいいか分からず同情するように
「寂しくなったらいつでもおいで」
と、いった。すると優矢達の番になったらしく優矢はかっこよく笑って
「見てて」
といい私の返事を待っているようだった。
「わかった、見ておく」
と私が言うと走って行った。男子の試合が長引いていて優矢の方をなんとなく見ていると優矢と目が合った。すると優矢は相手からボールを奪って相手ゴールに走っていくとダンクシュートを決めた。すごいなと思い関心していると優矢は次々とゴールを決めていってあっさり試合が終わった。
「優矢すごいじゃんあんなバスケ上手いんだ。」
と優矢を褒めると優矢は自慢げに笑って
「前の学校でエースやってた。」
と言った。通りでバスケがこんなに上手いわけだ。
「すごいなー、私球技全然できないのに」
と羨ましいと、思い言うと優矢が
「教えてやるよ」
と言った。私はさすがに申し訳ないと思い遠慮すると優矢は
「じゃあ代わりに勉強教えてよ」
と言った。私も勉強なら得意だしそれならいいかと思い。
「いいよ、勉強も言ってくれれば幾らでも教えるし。」
そういうと優矢は少し考えてから言った。
「今日昼休み暇?」
「うん」
「図書館で勉強教えて」
「いいよ、わかったなんの教科?」
「数学」
「了解、数学は得意教科だよ」
そうしているうちに私達の番が来てバスケの試合が始まった。私は後ろの方でゴールを守っていると由華が来て
「水波も前でて!」
といいボールの取り合いいわゆる戦場に放り込まれたでもこういう事が苦手で引きさがろうとすると前にいた敵チームの子がほかの子の足に引っかかり倒れて来た。
「危ない!」
という声も遅く私は頭から倒れてしまった。頭を強く打ったものの幸い意識はあって頭よりその子の頭がみぞおちにあたりそこのほうが痛かった。私は途中退場をして年の為医務室に向かうと頭には何も無く冷やす為の保冷剤をもらいみぞおちはどうしようもなかったからかとりあえず様子を見ることになった。保健室を出るころはもう休み時間になっていて急いで教室に戻った。ギリギリチャイムまでに間に合い安心していると由華が来た。
「水波頭大丈夫だった?すごい音だったから。」
と由華が心配そうな顔をして言った。
「頭の方は全然平気。みぞおちの方が痛かったし」
と笑って言うと由華が
「そういえばおおかみくんが来てたよ水波のことが心配でって」
と言った。でもおおかみくんが誰か分からず首を傾げると
「2年生のイケメン転校生」
と由華が説明した。白狼だからおおかみくんかと思い納得すると由華が
「すごい心配してたよ誰よりも。後で行ってあげなよ」
と小さな声で茶化すようにいった。
「いやいやいいよ!優矢だって忙しいだろうし次会った時でいいよ。」
と慌てて言うと由華はふーんとニヤニヤ笑って言ったチャイムがなってしまい席に座ると授業が始まった。授業は英語で私にとっては苦手だからしっかり話を聞いていた。授業が終わると次の授業が理科の実験で理科室に移動だったから急いで準備をしていると教室に優矢が急いで入ってきた。
「水波」
私に気づいてつぶやくとこっちに来て
「ほんとに大丈夫か?頭打ってたからあとお腹抑えてたし。」
とほんとに心配してるんだと伝わるほどの声でいった。変に目立ちそうだったから荷物を持って教室を出ると優矢は
「よかった生きてた。」
といつものクールな顔から少し笑がこぼれながら言った。
「生きてるよ、もう平気。」
と私が言うと優矢は笑みを絶やさずに
「うんよかった。」
と安心した声で言った。ほんとに子供みたいだなーと思いながらありがとうと言うと由華が来た。するとさっきの笑顔はどこへ行ったと思うぐらいクールキャラに戻った。
「水波、私先に行ってるね。」
と由華が急ぎ気味に言うと
「私も行かないと」
といい優矢に、後でねといい急いで理科室に向かった。授業にはギリギリ間に合い怒られずに済んだ。授業が終わると急いで教室に戻り次の国語の準備をした。するとまた優矢が来てこっちにきてという代わりに手を振った。
「どうかした?」
と私が来ると優矢は
「さっき話せなかったから」
と恥ずかしそうに言った。なんか猫みたいだなと思いながら
「そっか聞きたいことあった?」
笑顔で言うと優矢は少し驚いた顔をした。不思議に思って聞いてみると
「ウザがられると思った。」
と言った。素直だなやっぱり子供みたいと思い少しクスクス笑うと
「ウザがら無いよ。転校生で不安なこといっぱいあると思うし仲良しの方がいいでしょ?」
そういうと優矢は少し嬉しそうな顔をするとほんの少しだけニコッと笑った。
「昼休み図書室で待ってる。」
と優矢が言うと私は
「うん」
と笑顔で答えた。そして優矢はじゃあまた後でと言うと振り返り軽く手を振った私も振り返すと優矢はそれを見てまた手を振って帰って行った。教室に入ると由華がニヤニヤして待っていて「なに?」と言うと由華は
「おおかみくんに気に入られてるね〜。」
と茶化すように言った。私は転校してきたばっかりだしなと思い「そうかな〜?」と言うと由華はまだニヤニヤ笑っていた。
「もしかして由華、優矢のこと好きなの?」
と聞くと由華は当たり前のように
「なわけないじゃん。彼氏が1番好き。」
といいニコッと笑った。由華の彼氏は他校の子で中学の同級生。ただ私は面識がないからどんな子なのかはよく分からない。
「高校卒業したらどうするの?」
となんとなく聞いてみると由華は「うーん」と少し考えてから
「とりあえず大学かな。同じ大学行けたらいいけど」
と笑って言った。由華は将来の事をちゃんと決めている。すごいと思う。私は何がしたいか分からないから。高校3年生にもなってそろそろ決めないとというのはちゃんとわかってる、つもり。でもやっぱりいざとなると分からなくなる。お父さんの仕事はIT系の仕事。お母さんは本屋をやっていて私に合う参考書をプレゼントしてくれる。お兄ちゃんは大学生で海洋学を学んでいて、将来は海洋学者になりたいらしい。でも私は夢がない。具体的に何をすればいいか分からない。したいことなんてない。やりたい事はとことんやる性格だからかやりたい事は既に全部やってしまった。考えるだけ無駄か。
「そういえばさ由華も陸上の大会でない?」
なんとなく話題を変えたくて聞いてみた。由華は体力があるから長距離向きだし陸上部3年の女子は私しかいないから何とか話せる人を捕まえたい。
「うーん。バスケも大会近いからなー。おおかみくんじゃだめなの?」
由華がまた優矢の話題を出してきた。
「優矢は嫌がるでしょ。第一私は女子の仲間を捕まえたいのであって」
「ついでにおおかみくんも捕まえたいと」
由華が話に割り込んできた。私好きなんて分からないし、もちろん優矢も由華も友達としてはすごく好き。でも恋愛となると頭にハテナマークが浮かぶ。「由華みたいな女子友を捕まえたいの。第一優矢は年下だし年上が、好きな男子なんてめったにいないでしょ。」
「分からないじゃん。それにあの反応は絶対に水波を意識してるよ。じゃないとあのおおかみくんが犬になる訳ない」
「犬って、由華は友達として好き。優矢も友達として好き、それ以上でも以下でもないよ。」
私がそう言って席に座ると由華も自分の席に戻って行った。そもそもまだ会って2日目で好きになるわけないよ。絶対に気のせい。優矢のこと考えるとこんなに心臓がバクバクするのは気のせい。