2.3 並根
寝静まった夜の上に、台所から薄明かりが伸びる。光線が詩歌を見守っている。加奈子と詩歌は10時過ぎまでアニメを見て寝た。日付が変わった今、二人の息が時計の音のように満ちている。寝息に耳をすませる。心音に同期して彼の”物語”の”筋書き”をたしかめる。
担任の浅川先生は詩歌が誰かを彼が守ろうとしていた、と記録している。誰を?どうして。詩歌の”物語”探る。塗りつぶされて、文字が欠落している。消されていない、声を見つける。
「***ちゃんと仲良くしてくれるのはわかるわ。でも、わかるでしょ?こういったらいけないことだけど。あなたとは住む世界が違うのだから」
わたしは普段使いの眼鏡を抑える。冬の冷気が頭痛を冷やす。
ー住む世界が違うー
浅川先生の”物語”の同じ部分を思い返す。***ちゃんは問題に直面していた。教頭との話し合いの後の廊下だ。***ちゃんのトラブルの詳細を探ろうとしして、息を詰める。問題の内容は消されている。
生徒の名簿の作りかけで、わたしはテーブルに上体を突っ伏して目を閉じる。ファンヒータが秘密を隠すように低く唸る。眠りが忍び寄る。悪意の混じったおせっかいのように、親密に。