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2 アリシアの現状



 ……しばらく頬を抓ったり顔を洗ったり二度寝したり色々試してみたが、結局コレは夢じゃないという事実を受け入れるしかないようだ。

 なーんでよりによって『疾走令嬢』の世界、それも悪役令嬢(アリシア)になんか……。



 ……嘆いていても仕方がない。まずは現状の整理をしなきゃ。

 どうやら、ここは乙女ゲーム『駆けずり回れ、疾走令嬢!』の世界らしい。ドッキリとかじゃないっぽい。身体そのものが変わってるし。


 その『疾走令嬢』がどんなゲームかと言うと、ストーリー自体は陳腐でベタな恋愛アドベンチャーゲームだ。

 主人公である侯爵令嬢『ミラージュ・レイン・フィッツガルド』ことミラが学園生活を送る中で、悪役公爵令嬢『アリシア・ヨルナ・ラステルベルグ』の悪事を暴いていき、断罪イベントを起こすのに充分な証拠を集めることができればクリアというシンプルなゲームだ。

 ちなみに日数制限あり。かなりタイトなスケジュールでイベントやフラグを回収しなきゃ逆に貶められて簡単に詰んでしまうという高難易度。


 しかも恋人となる各キャラのルートごとにイベントがほぼ一新されていて、周回時に同じイベントで前の週と同じように立ち回るだけじゃ駄目。

 頼もしい味方だったキャラが、他のルートでとてつもなく厄介な強敵となって悪役令嬢とともにこちらを追い詰めてくる絶望感を味わうことも珍しくない。


 恋愛アドベンチャーゲームというより、推理もののノベルゲーや潜入ステルスアクションゲームをやっている感覚に襲われることもしばしばあった。

 『駆けずり回れ』のタイトルに相違ない忙しさで、とにかく数多くのイベントをこなしつつ恋愛フラグを立てて、あるいは悲劇のフラグをへし折ったりしてパートナーをはじめとした主要人物たちの好感度を稼がなくてはならない。


 なにせ悪役令嬢もバカじゃない、というかむしろ謀術算術武術魔術どれをとってもほとんど隙が無いハイスペックぶり。

 こんな怪物相手に立ち向かわなきゃならないヒロインにはプレイしながら同情したものだ。

 まあその怪物が現在の私なわけですが。



 あ、ちなみにこの世界、普通に魔術とかが存在する世界です。手から炎とか出したり空を飛んだり、概ねファンタジーものに出てくる魔法と似たようなもんだと思えばいい。

 あとRPGに出てきそうなモンスターも存在するし、なんなら幽霊とかもいて生きている人間に憑りついてくる例もある。……今の私も似たようなもんか?





 さて、そんなファンタジーだか学園ものだかRPGだかノベルゲーだがよく分からないこの世界に転生してしまったわけですが。

 どうしようか。


 とりあえず今後の方針としては、まず第一に私の破滅フラグ回避。当然といえば当然。


 つっても、コレは割とどうにでもなる。

 だってそもそも本編でアリシアが断罪されるのは、悪事を暴かれることが原因だし。

 要は悪いことしなきゃ裁かれる心配はないということだ。簡単。マジチョロいわ。

 

 とか一瞬思いそうになったけれど、そんなことはない。

 主人公(ミラ)悪役令嬢(アリシア)の周りにいる人間も大概ヤベーヤツ揃いで、敵に回したら厄介なキャラしかいない。

 むしろ味方になっても面倒なヤツすらちらほらいる。帰れ。


 自身の破滅を回避するためには、そういった周辺人物たちへの対応も考えなきゃいけない。

 ……そういったイベントをこなすのは主人公(ヒロイン)の役目だろ。なんで悪役の私がそんなことせにゃならんのか。あーメンドイ。


 テンプレだけど、ゲームの知識を活かして主要人物たちを味方に付けつつ、主人公(ミラ)と敵対しないように立ち回る。これが最善かな。

 味方に付けても面倒なヤツがいるとは言ったけど、敵に回すよかいくらかマシだ。

 こうなったら逆ハーレム作ってでも生き残ってやるわ。



 にしても、綺麗な身体してるなぁアリシア。

 悪役とはいえ、さすがは公爵令嬢と言うべきか身嗜みに余念がないのがこうして眺めているだけでも分かる。


 あ、でも右手の親指の爪だけなんがトゲトゲしてるっていうか、噛み痕がある。

 そういえばゲームでも不機嫌な時によく親指の爪を噛んでる描写があったっけ。……やっぱアリシアのモノなんだなーこの身体。



  (私の身体を返して)

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