パンはパンでも食べられないパンについて本気出して考えてみた
「パンはパンでも食べられないパンってな~んだ?」
知らない人はいないのではないかと思われるほど非常に有名ななぞなぞである。その模範解答は「フライパン」らしい。しかし、どう考えてもおかしいだろう。『パンはパンでも』という前提に明らかに反しているではないか。これが、「パンという二文字が含まれており、なおかつ食べることができない単語を挙げよ」というなぞなぞであれば納得できるが、今回の場合あくまで解答はパンの中に限られているはずだ。
そこまで思考を巡らせて、俺はとんでもない勘違いをしていた可能性があることに気付いた。フライパンというのは調理器具ではなく、fried bread、つまり揚げパンのことを指しているかもしれないではないか! なぜ「fried パン」という中途半端な英訳をしたのかはとりあえず脇においておくとして、少なくともパンの範疇における答えとして認められる。
しかしどうして揚げパンが「食べられないパン」なのか。ここに、このなぞなぞのもう一つの仕掛けが隠されている。出題文は、あえて誰が食べられないのかという主語について言及していないのだ。つまり、全人類が食べられないのではなく、このなぞなぞの考案者本人が食べることのできないパンだということである。
もし小麦アレルギーだというのであれば、他のパンについても食べられないはずだ。もちろん食べられないパンの中の一つである揚げパンも解答としては当てはまるが、とてもスマートな答えとはいえない。
ここで再び「fried パン」という不思議な英訳について考えてみよう。これは揚げパンの揚げの部分だけを英語に変換していることになる。この理由は、単純に考案者がパンの英語について知らない、言い換えればまだ習っていない子供だということで説明できるのではないか。揚げパンは小中学校時代に好きだった給食のメニューのアンケートで堂々一位を獲得するほどの人気を誇っていることは有名だ。
ここまでくれば謎は、ほぼ解けたも同然である。
このなぞなぞの考案者は、通っている小学校で時々メニューに登場する給食の揚げパンが大好きだった。しかし、両親が海外に転勤することになり、彼もまた日本を離れることになった。外国にもフライドドウやチュロスといった揚げパンに似たスイーツは存在する。しかし、彼が食べたいのは、あの懐かしの「揚げパン」なのだ。覚えたての英語を駆使して懸命に訴えるものの、彼が求める「fried パン」は、どんな一流のパン屋でも手に入れることはできなかった……。
「……つまり、答えはfried パン、揚げパンなんだ!」
「違うよ、おじちゃん。正解はフライパンだよ!」
「おじちゃんの話、めちゃくちゃつまらないうえに長~い!」
「ママ~!! おじちゃん、大人のくせにパンのなぞなぞも知らないんだって~!!」
お盆に実家に帰省してきた親戚の子供達に出題された「パンはパンでも食べられないパンってな~んだ?」というなぞなぞについて本気出して考えてみた結果、彼らから「なぞなぞ不得意屁理屈ダメダメおじさん」という不名誉なあだ名をつけられることになった。