第八話 また別の場所に
申し訳ありません。三か月振りの投稿になってしまいました。
本当にすいません。
どうか見放さずに読み続けていただけると幸いです。
「被検体の量子分解、始まります。」
カプセル越しにその声が聞こえた瞬間、真那を途方もない激痛が襲った。
「…っぐうう…っがあ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝!」
真那は体全体を鑢に掛けるような痛みに叫び声を上げた。
「っい˝い˝い˝い˝…。っあ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝!」
(…っだめだ!…意識が保てない!……。)
そうして真那は、叫び声を上げながら、意識を手放した。
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「ねぇねぇお兄ちゃん大丈夫?」
(幼い子供の声…?)
真那はその子供の声で気が付き、目を開け上体を起こしながら辺りを見回す。
「此処は…?いったい…?」
辺りは、一面に光そのもので出来た花のようなものが見渡す限り花畑の様に広がり、空は夜で星の光が無数に瞬いている。
星の光と花の光で夜だというのに昼間の様に明るく、自分の周囲の確認ははっきりと出来たが、先程の声の主は見つけられず戸惑う。
「あれ…?さっき声は誰が…?」
真那は声の主を探す為に再度周囲を見渡すも人らしきものを見付けられず、首を傾げる。
あるのは、遠くに星の様に輝く無数の光と自分の直ぐ傍に漂う三つの光の玉、そしてクリスタルの様な物で出来た花らしきものが一つあるだけ。
(…さっきの声も気になるけど…。あの実験が始まって、物凄い激痛に襲われてから記憶が途切れてるし…いったい僕はどうなったの…?)
「…はぁ…まいった。…どれだけ冷静に状況分析しようにも…意味不明過ぎて…もう無理…。」
真那はそうぼやきながら項垂れる。
「お兄ちゃん痛いとこない?」
「っえ…だれ!?…どこに居るの!?」
再度聞こえた子供の声に再度反応するも、辺りを見回してもやはり人らしきものは誰も居ない。
「…お兄ちゃん…私達目の前に居るよ?」
今度は別の子供の声まで聞こえ始める。
「…っえ?…(複数?)…えっと…ごめんよ、申し訳無いけど、君たちが何処に居るのかさっぱり分らないんだけど。
君たちの声が聞こえる方向を見ても光の玉が漂ってるくらいしか見つけられないんだよ。」
真那は少し申し訳なさそうに子供の声に問い返す。
「その光の玉が僕達だよ。」
「…はい?…ちょっと待とうか…ってかちょっと待って、動揺抑えるから。」
「はーい!」
真那は顔に手を当てて考え出す。
(…うーん…そりゃ異世界とか魔法なんて言う単語も有ったし、光の玉が喋るのもおかしくないんだろうけど…いくらなんでもなぁー。…駄目だ…理解できないこと多すぎぃ…はぁ…)
真那は内心で途方に暮れながらため息を吐く。
すると、今度はまた別の声がクリスタルの花らしきものから聞こえ始める。
「これこれ、そんなに矢継ぎ早に声を掛けても混乱に拍車をかけるだけだろうに…お前達とて此処に来て直ぐは、もっと酷かったであろう?自分達の事もあって心配なのは分かるが、もう少し落ち着きなさい。」
「「「はーい!」」」
その声は老人の様にも聞こえるし、若い女性の様にも聞こえ、先に話かけていた子供の声達を窘める。
そして、その声は真那にも話しかける。
「…すまないのぅ…この子らは人見知りすると思い、何も言わなくても直ぐには話しかけはしないと思っておったら…即君に近づいて話しかけるとは思わなんだ。」
「っは…はぁ。」
真那はその謝罪に訳も分からず生返事を返す。
「まぁ…気を悪くせんでもらえると助かる。あの子らも君と同じ境遇だと言えば分かるであろう?あの子ら自身がここに来た時の事を思い出して君の事を心配したのだろう。君には耐性があるようだが、あの子らにはその様なものを習得する経験など重ねてこなかったのだから。」
「っ!…そういうことですか。(何の訓練も受けていない僕よりも幼い子供があの痛みをうけたのか!大の大人でも発狂するレベルだったぞ!)」
真那は内心の憤りを押さえつけながら立ち上がり、三つの光の玉の方へ向かい手を添える。
「お兄ちゃん痛いところない?」
「僕達の時物凄く痛かったから」
「大丈夫?」
真那は幼い子供達のその声に優しく笑いかけながら答える。
「僕は大丈夫だよ。あのくらいへっちゃらさ、今まで物凄く鍛えて来たからね。だから心配しなくても大丈夫だよ。」
「本当?本当?」
「っえ…あれが平気なの!?すごい!」
「大丈夫!!」
「ほっとしたね!」
「ね!」
「うん!」
三つの光の玉から響く声は真那の答えにびっくりするも安堵したようで、その声音からも伝わってくる。
暫くの間その幼い声達に付き合っていると、先程の声の主であろうクリスタルの花が近寄ってきた。
「優しい子だのう…。では…そろそろ本題に入ろうかのう。ミラ、リコリス、ノア少しの間私はこの少年と難しい話をする、横で聞いていても良いが静かにのう。」
「「「はーい!」」」
そうして三つの光の玉と入れ替わる様にクリスタルの花が真那の正面に来る。
「では、始めようかのう。」
真那も姿勢を正し返事をする。
「はい。お願いします。…っあ、すいませんまだ名乗っていませんでしたよね。僕の名前は岩動真那といいます、よろしくお願いします。」
「っおお、これは丁寧に…こちらこそよしなにのう。…ただ申し訳ないことに私には名前が無くてのう申し訳無い。」
「いえ、気にしないでください。…もう名前の有無でどうこうとか不思議に思う余裕なんて無いので。」
「確かにのう…」
いろいろとあきらめたような雰囲気で答える真那にクリスタルの花は苦笑いにも聞こえる声音で相鎚を打ったのだった。