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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
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2_14.漆黒の森の警戒線

ブルーロの一行は夜通し進み続けた。

結局、何か分からない追跡するモノを撒くことは出来なかった。オットー曰く、"一定の距離を取って追跡を続けている"そうだ。その追跡の気配も朝が来る頃には消えていた。気配が消えて一定期間を経た後に、ブルーロ一行は寝る為の陣地を作り警戒線を作った上で、見張りを交代で立てて寝た。


日が暮れる直前に、一行は活動を開始した。

陣地を引き払い、進む方角を確認し、飯を食った。ブルーロは森があとどの位なのか、あの追うモノがどこまで追って来るのかを考えていた。当初森は150kmの範囲で広がっているものと想定していた。つまり、通常の我々なら遅くとも3日で踏破出来る距離だ。だが…現時点で60kmも移動していないだろう。一日20km弱の移動距離だ。とすると、残りは100km、つまり5日は掛かる計算だ。俺達が持ってきた食料は一人7日分。これだけあれば森を抜け、街道に入り、どこか人里でもあれば食料は入手可能、駄目でも畑から獲れば良い、と思っていた。


だが、こいつは大きな計算違いだぞ…食料は切り詰めても持ちそうだが。既に3日目。しかも森を抜けるまであと5日。何も障害が無くて、だ。あの変なモンに追われながらの移動が厄介だ…日中にあいつをどれだけ離したかは分からんが、昨晩の移動速度を考えると、夜にあっという間に詰められるに違いない。20kmの差…奴が来るまで何分持つだろうか。


「隊長、ヤバいですね。方向が分かりませんや。微妙に進む方向が違っていても修正する術が無いですわ。」


「やはりか…コンパスも相変わらず効かないな。」


「森に入った時点でクルクル回ってまさぁね。日中移動するなら太陽と風景があるんで別に気にしちゃ居なかったんすがね。夜に移動となると、ちょっと厄介ですね。」


「仕方が無い。あの変な奴に追いつかれたらやばい。只管信じて進むしかないな。こんな事は言いたくは無いが。」


「俺もそんな事は聞きたく無かったですよ、隊長。」


ゲラゲラと野卑な笑いが一行を包む。冗談でも言えるうちは未だ士気が高い。士気の高いうちに森を抜けたい。ブルーロは、まずオットーに気配を感じるかどうか確認した。


「オットー。奴は俺達を追跡しているか?気配はあるか?」


「…今の所、気配は感じられませんね。」


「よし、今の内だぞ、前進!森を抜けるぞ!!」


ブルーロの計算では2時間程度で接触すると見ていた。果たしてそれは、ほぼ計算通りにブルーロ達の前に姿を現した。そして、それは部隊を絶望へと叩き込む長い夜の始まりだった。



--

エステリア王国東部 アルスランの町 帝国歴227年 5月26日 19時


ボーパル大尉は街道を封鎖している騎兵部隊からの連絡を受けていた。曰く、アルスランの町から35km程度離れた街道で、昨晩にかなり遠くから銃声が響いていた、と。しかも森を見渡す事が出来る丘の上から、銃声がした辺りに、ちらちらと光が見えた、という事らしい。


…いたぞ。間違いない、奴らだ。

ここから35km程度しか逃げていないという事か。いや昨晩で35kmなら…現時点で20km弱で55km地点辺りか。今は夜だから動いていないだろう。…よし、狩るぞ!


「保安部隊は全員ここに大至急集合!それとエブレ、騎兵部隊の隊長を呼んでくれ!」


保安部隊は直ぐに全員揃った。そして、騎兵隊長が居っとり刀でやって来た。


「騎兵隊長ギュダンだ。どうした、ボーパル?」


「おお来たか、ギュダン。実はな…先日の暴動を覚えているだろうが、アレの首謀者と思しき奴らを補足したかもしれん。あの日我々はアルスランの町を厳重に包囲したが、南の森に逃げ込んだ奴らが居るようなのだ。」


「いや、それは無いぞボーパル。あの日我々騎兵部隊は、アルスランの南をがっちり固めておったぞ。」


「何かの瞬間に人数が低下したとか、他に気をつられたとかは無いか?」


思い出したようにギュダンの顔色が変わる。


「そういえば…北の橋が爆発された時に、一部部隊を割いたな…その位のタイミングで野良犬が襲ってきたが…もしや…」


「いや、人間のやる事だ。完璧なんざ無い。問題はここからどう挽回するか、だ。そこでギュダン、相談だ。我々保安部隊と共同で山狩りをしたい、と言いたい所なんだが…」


「山狩りなら俺達騎兵はあまり役に立たんぞ?」


「まあ話は最後まで聞いてくれ。どうやらこの森には山怪が出るらしいのだ。この山怪は、人と会うと人を魅了し、そして殺す。大変危険だ。それが森に居るようなのだ。出来れば遭遇したくない。」


「なんと。その山怪に銃は効くのか?剣は?」


「銃が当たると穴が開くらしい。だが、動きは滅法早いと聞く。」


「ふむ。夜に戦うのは不利だな。」


「ところが夜しか現れないのだ、厄介な事に。まあ良い。俺の話は簡単だ。大体そうだな…アルスランから南に降りて、40kmから50km地点辺りに警戒線を設置する。そこを保安部隊と騎兵部隊、共同で警戒する。やる事は、森から出ようとする人間を押し戻す。森から出さない。山に入った連中は、その怪異に呑まれてもらう。」


「えげつないな、ボーパル…」


散々やられたからな…とボーパルは笑った。さて警戒線の外に、その山怪が出て来なければ良いが…出てきたら、そいつらと同じ運命になるかもな。


「よし、分かったら行くぞ!」

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