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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
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2_09.ブルーロの脱出口

エステリア王国東部 アルスランの町 帝国歴227年 5月24日 21時


この夜、再びアルスランに暴動が発生した。

暴動の理由はガルディシア人の扱いに起因する事だ。だが、人の国に来て好き勝手出来る権利なんざどこの国にも無い。そう思いながら治安部隊を率いるボーパル大尉はアルスランから王都に

続くミュール街道の町側に立ち、叫んだ。


「ここは封鎖した!メルロ軍曹は第2分隊を率いて南に回れ!北には軽歩兵隊が固めている。連携して包囲するぞ!」


この騒動中、秘かに人の動きを見つめる集団が居た。

予想通り、町の西側出口つまり王都に続く街道側を治安部隊が塞いだ。町の北部には軽歩兵隊が固めて海への脱出を防いでいる。ここまでは予想通りだ。そして逃げるには東の山側か、南の森か。しかし、この時期に山に入るのは自殺行為だ。五月は山に未だ雪も残り且つアルス山脈は装備が無いと越えられないほどに厳しい山だ。


つまり逃げ道は南の森にしか無い。だが、町から森に出るには少ないとは言え騎兵が見張っている。その為、騎兵をどこかに誘導しなければならない。


「ギュンター、エバーハルト!町の西方での騒動を拡大しろ。住人を煽れ!騎兵をどうにかせんとならんのに、更に治安部隊に南を固められると町から出られん。暴動が拡大したら、直ぐに拠点ドーラに撤収しろ。ヴァルター、爆薬の準備は出来たか?準備が出来たら北方の橋を爆破して歩兵部隊の連中を引き付けろ。爆破次第、直ぐに拠点ベルタに撤収して合図を待て。撤収合図は笛弾だ。南の森へ突破する。全員、行動開始!」


「了解!」


ブルーロは暴動が拡大する所に戦力が集中すると見ていた。その為、脱出路とは別の所で騒動を大きくし、その騒動に乗じて脱出を行おうと画策していた。既に殆どの活動拠点を引き払い、3つになった残りの拠点を使って、この混乱を裏から煽っていた。


「ボーパル大尉!報告します!北方の海に続く街道の橋が爆破されました!」


「ちっ、只の暴動じゃないな…。誰か扇動している奴が居るぞ、これは。エブレ!ここを守れ。俺は北の橋に行く。怪しい奴が居たら遠慮なく捕縛しろ。抵抗したら殺せ。」


「了解です!」


ボーパル大尉は中隊を二つに分け、北西と西に張り付けた。そしてアルスランの町を半包囲していた。ちょうど爆破した橋は、ボーパル大尉の保安部隊第2中隊60名と、軽歩兵隊の200名の守備範囲の継ぎ目にあった。その為、どちらの管轄かで保安部隊と軽歩兵隊が揉めた為、初動が遅れた。そこにボーパル大尉がやって来た。


「軽歩兵隊の責任者は誰か!?」


「貴様は何者だ。人に問う時は自ら先に名乗れ。」


「俺は保安部隊のボーパル大尉だ。貴様は誰だ?」


「これは失礼。軽歩兵隊隊長のセギュール大尉だ。」


「セギュール大尉。分かっているとは思うがこれは陽動だ。誰か知らんが、この騒動を裏から扇動している奴が居る筈だ。何等かの目的がある筈だが、包囲しているだけではどうにもならん。町の住人達は乗せられて暴れているだけだが、真に危険なのは騒動を扇動している奴だ。」


「ほう。だとして何か策はあるのか?」


「我々保安部隊を街内に投入する。その際このアルスランの町を完全包囲して欲しい。町から脱出を図る連中が騒動の原因だ。軽歩兵部隊は、脱出を図る連中の捕縛を頼む。」


「ふん、貴様に命令される謂れは無い。本部に確認後、要請が通ればそのように致す。」

 

こいつ…気に入らん。

多分だが、保安部隊に対して敵意を持っているに違いない。恐らく前線に投入されていれば栄達もあろうが、こんな辺境で保安部隊の真似事をさせられている、その責任は保安部隊が役立たずだから自分達歩兵部隊が派遣された。保安部隊の連中め、ってな所が理由か。だが、そうも言ってられん。


「それでは遅いのだ!命令ではない、要請だ!俺の一存で、問題があれば俺の責を問えばいい!とにかく包囲を頼む!!」


セギュール大尉は返事もしなかった。

ボーパル大尉は引き返し、保安部隊に対し集合をかけた。街中に投入する分隊をそれぞれ地区毎に分け再度保安部隊に新たな指令を出した。…だが、このやり取りが致命的な時間のロスだった。


「ヴァルターから連絡です。爆破成功、軽歩兵隊は混乱中。全ての保安部隊が一旦集められてます。」


「そうか、良し。ヴァルターは拠点ベルタを引き払え。騎兵の方は未だ居るか?」


「騎兵はアルスラン西側への応援に駆け付けた模様です。南に張り付いている騎兵の数は10騎未満。犬を放ちますか?」


「良し。笛弾上げろ。南に犬を放て!アルスランを脱出し、南の森に入るぞ!!」

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