表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
83/327

2_08.ブルーロ特殊作戦団

エステリア王国東部 アルスランの町 帝国歴227年 5月20日 午後8時


「もう2週間も連絡が来ていないな。一体どうなっている…」


ブルーロ大尉はどうにも不安になっていた。

ブルーロ特殊作戦団はエステリア王国東部のアルスランの町に潜入していた。このアルスランの町は更に東の鉄鉱石鉱山の麓にある。アルスランの町は鉄を産出する為、その鉄を加工する技術を持つガルディシアとの繋がりが古くからあり、ガルディシア出身者も多く住んでいた。


ブルーロ特殊作戦団は24名がこの町に潜入していたが、以前のエステリア治安部隊の捜査により8名が捕まり、現在16名が身を潜めていた。


本来の作戦では、ガルディシア第二艦隊の上陸部隊がエルメ海岸を攻略し、上陸を果たした場合、エステリア陸軍の集結する地点までの450kmの間隙を埋める為、東部アルスランに展開する軍を北部に移動する。そこでアルスランの警備能力が低下した段階で、アルスランの不満分子をもって大規模な反乱を起こしエステリアの解決能力を麻痺させる、という手筈だった。


エルメ海岸上陸作戦の助攻であるエステリア東側の反乱策動は、エステリア治安部隊と軍隊の誘引には成功した。が、その成功が故に身動きが取れない。このアルスラン周辺にはがっちりと軍隊が固めていた。しかもガルディシア移民や出稼ぎが多い事も知られている為、治安部隊の目は大変に厳しい。


そして、その上陸作戦もどうやら失敗に終わったようで、ここ東部に迄ガルディシア軍撤退の情報が伝わってくる。それ以降ブルーロ達へ本国ガルディシアからの指令は止まってしまった。だが、流石に2週間も止まった例は無い。


「ホルツからの連絡は来たか?」


「あれから有りません。恐らく街道は封鎖されてますんで、こっちに伝達寄越すのも難しい状況かと思います。ああ、でももしかしたら…あいつ等は西側なんで、上陸作戦の際に撤収しているかもしれませんね。」


「町の噂でガルディシア艦隊が撤退した、という話。ここの治安部隊が移動しない所を見るとそれは真実なんだろう。だが、噂で所々出てくるニッポン軍って一体どこの軍隊だ?」


「それなんですが…どうやら中央ロドリア海の嵐が晴れたら、そこに現れた国だとか。」


「そいつは俺も噂で聞いた。問題は艦隊の撤退理由が、ニッポン軍が皇帝陛下に圧力をかけた挙句陛下の戦闘停止命令をニッポンが持ってきたって話の部分だ。ここが一番分からん。ポッと出の新興国がガルディシアに圧力?」


「噂は話に尾ひれが付きますがね。話半分で考えても、理解出来ませんね。」


「反乱工作の方、どうにかしないと不味いな…。」


このアルスランでは、ガルディシア人に対する待遇が良くない。元々他所の国から来た人間に対して待遇の良くない土地柄であったが、昨今の帝国の行動の結果、"雇ってくれない"、"馘になる"などが頻発しガルディシアを捨てエステリアで生きる事を決めていたガルディシア移民達でさえも例外では無かった。その為、アルスランに住むガルディシア移民達の不満は相当に高まっており、ブルーロ達はここに火を付けたのだった。だが作戦が中断している今、いつ暴発するか分からない移民達を抱えたまま、ここに潜伏し続けるのは危険だ。


「いっそのこと、あいつらを焚きつけて再び大暴動を起こして、その隙にアルスランを脱出して西に行きますか?」


「そうだな。そろそろ俺達も限界が近い。艦隊が撤収しているなら、俺達がここに居る理由も無い。だがこれだけ兵がアルスランを包囲している状況でそれも難しい。以前探っていた脱出に関する情報収集を再開しよう。」


「ここのガルディシア移民はどうします?」


「もう少し抑えておけ。脱出のタイミングで暴動と行こう。」


「了解!」


彼らブルーロが掴んだ情報は概ね正しかった。

だが、ホルツ特殊作戦団は、既に上陸作戦時に西部海岸のフェルメ二等大佐の部隊が行っている哨戒に引っ掛かって捕縛されていた。即ち、ブルーロ作戦団は完全に孤立していたのだ。それが故に、彼らの脱出の判断は正しい。


但し、完全に時期を逸していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ