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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
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2_06.ラチアーノの密談

ヴォートラン王国 227年 5月15日 午後10時


ヴォートラン王国は東西に細長い大きな島である。この島の西側を国王ファーノ4世が統治している。そして王弟フィリポが大公領として東側を統治している。そして中央にアクレイデ伯爵領がある。その領土の比率は6:2:1で、残りの1は様々な貴族領だ。


そのフィリポの大公領にある港町の一画の薄暗い酒場で、ラチアーノを中心とした数名の密談が行われていた。閑散とした薄暗い酒場の片隅でラチアーノは口を開いた。


「国王のアレは何か掴めたか?」


「エンナ島で何かの実験を繰り返している模様ですが、中々警備が厳重で潜入出来ません。また、周辺の村落が警戒ラインとなっている模様です。島出身以外の人間は直ぐに見つけられます。」


「そうか。恐らく飛行機械らしきものだろうが…あの動力機関の開発関係設備やら人員やらが、本島から全てエンナに移動したのは我々に情報を掴ませない為であろう。我々にあの島出身の者は居なかったか?」


「確認してみたのですが、居りませんでした。が、例の海戦に参加した海兵の中に居るかもしれませんので、組織の選別時に同時に確認を行っている最中です。もし、居るのであれば、優先してエンナ島への潜入要員として使います。」


「うむ。頼んだ、タウリアーナ。アドラーノ、ニッポンの方はどうだ?潜入出来そうか?それとニッポンの情報の緘口令は?」


「ニッポンの場所は既に判明しております。ニッポン迄の航海は問題はありません。既に何組かがニッポン近海迄は接近してはおります。ただ…。」


「ただ?ただなんだ?」


「海上で一定ラインを超えるとニッポンの船が来て追い返されます。このライン自体は大まかには分かっているのですが、何故我々の船がそこに接近したことを相手が掴んているのかが分かりません。潜入は全て別の経路で行っておりますが…全てがそのラインでニッポンの哨戒に引っ掛かりました。夜昼の区別無く、です。恐らく我々の知り得ない探知能力を持っているか、と。」


「ニッポンには、我々が来た事が判明している…と?噂に聞く、西方大陸の魔道か?」


ラチアーノは、救助された乗員の聞き取りも行っていた。

しかし彼が乗員の口から目の当たりにした情報たちは、動力や医療に関する物ばかりであり、戦力やそれに付随する情報は殆ど得ていなかったのだった。そして王弟側にレーダーの情報は未だ入っていなかった。


「直観ですが、それとは違う類ではないかと…何れ潜入を行った船は全て漁船を装っておりましたし、警告を受けた時点で引き返してはおりますので、恐らくニッポン側は我々の意図と目的は知られてはいないと思います。単純に迷った漁師、程度の認識かと。」


「む、そうか…。エンナよりむしろニッポンへの潜入に成功して欲しい所だな。何れにせよ潜入は引き続き試みよ。仮に拿捕された場合は絶対に目的を気取られるな。それと、拿捕された際には絶対に自害するなよ。分かっているとは思うが、死んだ時点で自己紹介になるからな。」


「承知しております。それと緘口令の件ですが…ご存知の通り、我々王弟派の居る大公領と国王直轄領の間にはアクレイデ伯爵領があります。伯爵は中立でありますが、大公領に対して情報収集の耳を持っております。恐らくそこには漏れた可能性があり、最悪国王側に情報が流れている

可能性も否めません。」


「そうか。やはりな…伯爵の耳は掴めそうか?ちなみにあの御方の希望は我々が情報と利権を独占的に確立せよ、だ。もし障害になるようであれば、耳を調べて処分せよ。」


「承知しております。しかし、恐らくですが本人が間者である自覚無き者かと。相当に調べてはおりますが、それらしき者が出ておらぬのです。」


「厄介だな。いっそ伯爵をこちらに引き込めば楽なのだが…」


「伯爵は先の海戦でオルビエト艦隊の全滅をご存知らしき様子。恐らく勢力の弱った我らに与する事は無いでしょう。」


「であろうな。弱った我々が盛り返すか否か。ニッポンを如何に取り込めるかに我々の浮沈がかかっているからな。頼むぞ、アドラーノ。」


「承知しました。」


「では此度の海戦で救助された海兵の選別作業だが…。行いたい事と消耗率を考えると、全員を投入したい所だな。といってもそうはいかないが…」


「ラチアーノ様、海軍の再建はどのように?」


「うむ、あの御方が領地で再度海兵の募集を行う。しかし軍艦の再建は誠に難しい。鉄が不足しているのだ。エステリア王国からの鉄輸出が、ガルディシアの妨害でな。本来であれば我々がガルディシアの妨害に破壊工作で対抗せねばならん事であるが…あの御方は、それよりもニッポンに軸足を移した。その為のニッポン潜入なのだ。」


「なるほど、我々はその狭間で動かなければならないのですな。」


「そう言うな、アドラーノ。先ずはニッポンの情報収集と潜入、次に国王の秘密実験、最後にあの情報がどこまで漏れ、どこが漏らしているか。選別の方、潜入の方、それぞれ貴様等宜しく頼む。」


「了解しました。」


薄暗い酒場の片隅に集まった人達は静かに解散して消えた。

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