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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第二章 ガルディシア発展編】
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2_03.日本の現状

総理官邸 2025年5月15日 午前10時


「現状で我が国の衛星打ち上げに関する報告は以下の通りです。まず、打ち上げが完了し運用を開始したものは以下3点です。


 ・気象衛星ひまわり10号

 ・防衛通信衛星きらめき3号

 ・光学多様化1号


ちょうど、これらは既に準備された物があり、打ち上げを待つだけの段階であった為、早急に打ち上げが可能でした。以下は、これから順次打ち上げの予定です。


 ・レーダー多様化1号

 ・みちびき5号~(GPS通信衛星)


近々に以上の衛星を打ち上げた段階で、この惑星の全貌が見えてくると思われます。」


「ふむ…了解した。海図の方はどうなっている?」


「日本から半径1,000km以内に関しては概ね。浅い部分に関しては、大体把握しておりますが水深の深い部分に関しては、マルチビーム音響測深船を導入しておりますが…何分にも数の問題と、他国の了解の問題で一部しか進んでおりません。何しろ我々は、今の段階で3か国しか知らない訳ですから。」


「ガルディシアに海底ケーブルを引く件は?」


「ガルディシア中部、旧エウグスト部分に引くのが一番早いかと。現状、既存の海底ケーブルは途中で寸断されておりますが、この寸断されたケーブルを寸断部分から延長する方法で行い、ガルディシアとの最短距離で敷設を行うのが一番早い方法ですのでそれで進めています。ちなみに、この方法だと300km程の敷設で済みます。ガルディシア側と日本の切断部分の双方から敷設開始した場合は、それぞれ150kmの敷設なので引くだけなら3日程で可能です。既に取り掛かっているので、予定では明日には敷設が終了します。」


「うむ、分かった。早急にそれで進めてくれ。あとは…原油の問題か。ヴォートランはどうなった?ああ、今行っているのか。まだ連絡は来ていないのか?」


「今の所、まだ外務省からの報告は上がっておりません。」


着々と日本は体制を整えつつあった。

とはいっても、国内は食品と燃料、そして情報の統制が効いている。その為、国民には不満が高まりつつあった。その国民達は僅か600kmの隣国に、以前よりも危険な国家が存在している事を未だ知らなかった。また、漁船関係は日本の近海200km以内に行動を制限され、尚且つ燃料の配給制によって遠出も出来ない。つまり体制を整えつつ、デットエンドまでの線も近づいている。


「最後は食料の問題か…」


日本の食料自給率はカロリーベースで37%程度。しかし生産額ベースでは66%である。つまり口に入れるカロリーベースで計算すると67%も輸入しなければ、日本人は餓える事になる。しかし、この計算方法は廃棄する物も分母に入れる計算式であり、数値が低めに出る傾向にある。実際に輸入が全く途絶えた状況下において、実質的な数値を元に統制を行わないと、どこかに歪みが出てしまうのだ。

最低でも90%台に乗せたい所だが…


「ガルディシア政府は食料を輸出する意気込みはあるのですが…あの大陸上で全土に食料が行き渡っているかという問題もありましてそれは所謂支配階級であるガルディシア人が、非支配階級であるエウグスト人やダルヴォート人への食料を価格や流通量によって統制している可能性があります。潤沢に食料を得る為には一次産業に従事するか、軍人にならざるを得ないという状況であるならば、今回の日本への食料輸出は、所謂飢餓輸出となるかもしれません。そうすると、ガルディシア人以外の住人から反日感情を持たれる可能性もあります。一概にすぐ輸入するというのは、早計かと。今の所、全てが推論でありますが…。」


「とは言ってもな。喫緊の課題であるからには、何等かの解決をしなければな。ガルディシアの内政状況は引き続き調べてくれ。ヴォートランやエステリアの交渉での食料関係の輸出は?」


「どちらもこれからです。ああ、ヴォートランは今現在ですね。近々にエステリアには表敬訪問を予定しておりますので、その際に。」


飯島総理は心の中で焦っていた。

我々が残された時間はそれ程無い。


その頃、ガルディシアでは高田がガルディシア人と奮闘していた。高田が持ち込んだ機材を設置可能な場所をゾルダーに提供してもらい、それらの機材を組立て、設置していたのだ。それらは、ソーラーパネル発電システムとバッテリー。所謂、電力事情の良くない途上国などで展開する為のセットだ。家屋を提供してもらい、その家屋の屋根にソーラーパネルを設置し、それらをバッテリ充電設備に繋げ、通信機材をその家に入れた。


「タカダさん、これで全部出来たのですか?」


「ええ、発電・充電・給電・送受信設備、全て整いましたよ。あとは、海底ケーブルさえ繋げれば、通信可能となります。でもまぁケーブルの上陸地点、ここより離れてますからね。上陸地点から、ここ帝都ザムセンまでは200km近くありますので…中継設備も必要になりますね。」


「そうですか。何れにせよ陛下は設置を急ぐようにとの指示なので…ただ、新しく何かを作らなければならない場合がご相談下さい。なるべく私の方で調整して実現しますから。」


「ゾルダー少将、助かります。」


「それでは、何時ぐらいにその通信が可能になりますか?」


「そうですねぇ…中継を船で行うならば、割と直ぐに。」


実は海底ケーブルの上陸部分を旧エウグスト地域にした事で、ここらを管轄するル・シュテル伯爵に莫大な利権が入る事になる。これが、後に彼ル・シュテル伯爵の領地に大変な問題が発生する事になるのだった。

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