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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
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1_72.ヴォルン港の酒場にて

ガルディシア ヴォルン港 帝国歴227年5月10日 午後21時


ガルディシア帝国が海戦で引き分け、デール海峡では一方的に沈められたという噂はバラディア大陸に野火の様に広がっていた。いくら帝国が情報統制を行っても、ボロボロの姿で港に帰ってきた軍艦を眺めていた港町の住人や、デール海峡ガルディシア側で戦闘を見ていた住民の口を塞げない。


ここガルディシア北方、第四艦隊駐留地であるヴォルン港の酒場では…


「第四艦隊の司令官も副司令官も今度の海戦で死んじまったらしいな。帝国は無敵と謳ってたもんだが、どっこいエステリアもやるもんだ。」


「おう、それなんだがな。俺の親戚がデールで漁師をしてるんだが…なんかでけえ見慣れない船が第四艦隊を攻撃してた、ってよ。」


「どこの船だよ。俺が聞いた話じゃ第七と第四が味方撃ちしてた、って話を聞いたぜ。」


三人でひそひそ話をしていたテーブルに、ふらりと酔っぱらった男が空になったグラスを片手に、突然彼らのテーブルにどっかと座った。


「おう、面白そうな話をしてるじゃねえか。」


3人は"もしやこいつ憲兵か?"と警戒の眼差しを向けるが、その男は構う事なく話を続けた。


「そんな警戒すんなよ。俺ぁ、軍にちょいとしたツテを持ってんだがな。面白い話を色々聞いたぜ。聞きたいか?聞きたいだろ?なら話は簡単よ。酒ぇ奢ってくれや。」


三人の男のうち、一人は"なんだ、酔っ払いか"という表情だ。もう一人の男は興味があるのか、じっとこの男を見ていた。最後の一人は、友人との酒宴を邪魔された事に怒っていた。


「はぁ、勝手に突然座って何言ってんだオメエ!」


「まぁ待てや、ストルツ。その面白い話とやらを俺は聞きたい。あんた名前なんてんだ?酒は何だ?エールで良いのか?」


「俺ぁよ、フェイケルってんだ。昔、軍に居たのよ。近くに連れも居るからよ、後でそいつにも奢ってくれや。俺の話を聞いて面白い、と思ったらな。」


「おう、面白かったらな。話してみろや、フェイケルさんよ。」


「あのよ、海戦の話はまぁいいやな。皆知ってんだろ?問題はその後よ。海峡に現れた軍艦てのもニッポンって国のよ。」


「え?ニッポンってあれか?海戦の後でガルディシアやら他やらの船員助けて回った、ってお人良しのアレか?」


三人はフェイケルの話に興味を持った。

何故なら、ヴォルンの港町では海戦後にやってきた大型の船から降りて来た負傷兵やらが、ニッポン国の軍艦に助けられた、治して貰ったと、話して回っていた。軍がすぐに緘口令を引いた時には後の祭りだった。しかしこの時点ではニッポン国の船は救助した事のみの情報だったのだ。その噂のニッポンの話題だ。当然興味を引いた。


「おう、そうよ。ところがよ。何かニッポンの軍艦は、皇帝陛下の命だかを持って艦隊止めに来た。まず第二艦隊にニッポンの軍艦は行ったのよ。デールの南だな。第二艦隊は寝耳に水のそんな話、聞く耳は持たなかった。でもって、第二艦隊は何隻かニッポン軍に攻めにいったのよ。ところが僅か2分で全艦返り討ちにあったって話よ。」


「それは何対何だったんだ?ニッポン軍100隻対第二艦隊50隻とかだったら当たり前だぜ。」


「まあ大人しく聞けって。ニッポン軍は5隻、第二艦隊は12隻よ。しかもその後に、ガルディシア軍の秘蔵っ子陸上戦艦ってのが100隻居たんだが、順繰り30隻一方的に沈められて、降伏したってよ。」


「なんだその陸上戦艦って。聞いた事ぁねえぞ。」


「いや、ストルツ…俺ぁ聞いた事がある…あれってこの事だったのか。さっきの俺の親戚の漁師からチラっと聞いた話なんだが…」


すっかり三人組はフェイケルの話に引き込まれていた。


「で、こっからが本格的に面白い話よ。後から来た第四艦隊がよ、同じく皇帝の命で止めに来たニッポン軍の事を嘘だと思っちまったんだな。止めようが警告だそうが、第四艦隊は聞きやしねえ。で、怒ったニッポン軍が1発。たった1発で戦艦沈めちまった。」


「ははっ、フェイケルさんよ。そこから嘘だろ。1発で戦艦が沈むとか聞いた事ぁねえやな。面白可笑しく話を作ろったってそうは行かねえぞ。」


「いや、ちょっと喉が渇いたな。酒くんねえか?」


「おいおい今の所よ、酒奢る程の楽しい話は聞けてねえ。喉が渇いたんなら自分で頼みな。」


「冷てえな。おい、ねえちゃん、エールくれ、大至急だ。こんな面白い話してんのに、酒がねえと喉の滑りがよろしくねえ。で、だ。その1発ってのが第四艦隊の司令官代理殿の船よ。残った第四艦隊の連中、話し合いに持ち込もうとしたんだけどよ。完全に怒り捲ったニッポン軍にそんな話は通じねえ。もう1発喰らったのも、ローブスブルグ級の戦艦よ。だが、それもやっぱり1発で爆沈しちまった。」


「…ローブスブルグ級だと?あんた、その話をどっから仕入れた?」


「どこだって良いじゃねえか、そんな事。それもアレかい。あんたこそ憲兵か何かなのかい?」


「馬鹿言ってんじゃねえ、俺のどこが憲兵に見える。俺ぁこの辺界隈じゃ名前の知れたエウグストのベールだ。おめえ、この名前を知らんとモグリと言われるぜ。」


「おおそうなのかい。以後よろしくな、ベールさん。で、話の続きなんだが…あ。ちょうど俺の連れが来たわ。こいつを同席させてもいいかい?」


「オメエほど話面白いんなら歓迎だぜ。おう、ここ座んな!」


「すんません、店探して遅くなりました。エンメぐふっ…フェイケルさん」

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