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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
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1_71.それぞれの後始末-日本の場合

危機管理センター 2025年5月5日 午前10時


日本もまた追い詰められていた。

何しろ原油の入手が断たれて一滴も新規の原油が入って来ない。民間使用に関して厳重な制限をかけ、ありとあらゆる手段を講じた。重油型火力発電を全て停止し、原子力発電に切り替えた。

国内産の石炭をベースに液化石炭、所謂合成石油の製造を目指した。それには茨城の高温工学試験研究炉を利用して、原子力石炭液化試験を行い、これまでにある製造方法よりも効率の良い合成石油の製造が可能なプラントの製造を行っていた。また、それとは別に従来の方法での合

成石油プラントも作られつつあった。しかし、何れにせよ合成石油生産が波に乗るまでは無いも同然だ。経産大臣からは、重油をなんとかしないと今後の食料生産にも関わると指摘を受けた。


しかし入手先が無いのだ。

入手先があるのなら…飯島総理は可能な限り外交を進め、無主地があれば日本が領有宣言した上で、地質調査等を全力で行うつもりだった。その外交は、近隣諸国の戦争状態に巻き込まれて遅々としか進まない。それならばいっその事、と内調高田の案に乗り、積極的に干渉や武力を

背景にしつつ、平和を周辺諸国に強制する方向で動いていた。


しかし、この手法も既存の燃料があるまでの手法なのだ。燃料が切れてしまえば何も動かせず、技術や施設は後退しか無くなる。今、この世界で日本は時間制限がついた超人なのだ。超人として動けるうちに、問題を解決したかった。


そんな中、とある情報により危機管理センターに希望が見いだされた。ヴォートラン王国を上空から偵察していたグローバルホークからの情報を分析していた自衛隊情報本部の分析員からの情報だ。


「総理!朗報です!どうやらヴォートランには航空機の類がありますぞ!」


「ほう、そうなのか。で、朗報とは?」


「分析した結果、グライダーの類ではありませんでした。何等かのエンジンが存在する航空機です。エンジンは燃料を必要とします。つまり!」


「ああ、そうか。ガソリン乃至はそれに類する燃料が存在すると?」


「そういう事です。もしかすると、ヴォートランは産油国かもしれません。または産油国が別にあり、貿易上の繋がりがあるとか。今の所、上空から見る限り石油プラントらしき物は発見出来てはおりませんが…引き続き調査を続行します。」


「そうなのか…そうすると国交樹立の為の優先度は高くなるな。もう少しヴォートランの情報が欲しい。ヴォートランと接触したのは誰だったか?」


「輸送艦おおすみの所沢一佐です。接触したのは、ヴォートラン王国王弟フィリポという人物です。」


「それだけだと分からんな。危険な国でなければ良いが…。それとだ。高田君、ガルディシア帝国の方はどうなった?」


「今回の海戦及び上陸侵略計画の頓挫によって、暫くは外に目を向ける事は無くなるでしょうねぇ。失った艦隊の立て直しが必要ですから。ただ外務省の轟君が警告に行った際に、彼女らを城で拘束しようとしたのは事実でありますので、この先の交渉ではこの件に対して何等かの釈明をして頂かないと、という状況です。」


「こちらが彼らの艦を沈めた件に関しては何か言ってきそうか?」


「それは当然言うでしょうねぇ。こちらとしては、"皇帝陛下の命である"事を前面に出して警告出したにも拘らず皇帝の命令に従わなかった者がこちらに危害を与えてきそうになったので止むを得ない処置をしました、という事で通します。」


「うむ、了解した。ちなみにガルディシアの窓口のゾルダー氏は信用出来るのかね?」


「ええ、それはもう。」


高田は薄く笑った。

完全にゾルダー中佐は、高田のコントロール下にあった。


「さて。エステリアの方はどうなのかな?海峡辺りで接触があったと聞いているが。」

 

「あちらの海軍のエスダン将軍を通じて情報収集中です。どうやらエステリア国王は、ル=フェイヨン8世という人です。この国王は、日本に対して大変興味を持っているようです。曰く、"ニッポンの軍艦を見学したい"と要求している様です。」


「その辺りは海上幕僚長、どうだろうか?」


「ええ、それは構いませんが、何か希望はありますか?無ければこちらで勝手に決めさせて頂いて構いませんか?」


「ああ、それは任せる。」


これはそれぞれの国に、まず出張所的な何かを作った方が良いな。そもそも、小型の無線機一つでは何れバッテリーも切れる。それぞれの国に給電可能な何かがあれば、それでも良いが…恐らく無いだろう事を前提として、発電設備の整った施設の設置を各国にお願いしなければな…


「それと、総理。海上保安庁からの要請がありました。船の大型化、人員の拡充、武装の強化等々。」


そう、新しい周辺環境に対応する為には必要な事なのだろう。しかし優先順位という物があるのだ。


「どれも一朝一夕には出来ないな。近々には海上自衛隊と共同で、だな。」


飯島総理は、ヴォートラン情報を聞いて大分心が軽くなっていた。ヴォートランに原油があれば…それに類する類の物があれば…

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