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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
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1_69.それぞれの後始末-エステニアの場合

エステリア王国 コルビェール宮 227年 5月5日 午前10時


エステリア王国の作戦会議室の中で、ジョスタン将軍は嫌な汗をかき続けていた。あの判断は正しかった筈だ。敵の主上陸地点と疑われる場所に、陸軍兵力のほとんどを張り付けていた。上陸してきた敵部隊を直ぐに叩き潰す為だ。それが今、国王から糾弾されている。


「して…ジョスタン。事実だけを語れ。フェルメ二等大佐からの援軍要請は何度あった?」


「国王陛下、四度ありました。しかし陛下、私の判断では敵の上陸予想地点は、」


「良い、ジョスタン。それは聞きたくない。次の質問だ。援軍要請を断ったのは何度だ?」


「四度、全てであります。」


国王ル=フェイヨン8世は深いため息をついた。

今回は運よくニッポンの介入により、エルメ海岸上陸は防がれた。しかしもしニッポン軍が居なかったら、着上陸したガルディシア軍は、遮る事ない450kmの間隙に突入していた筈だ。一度そこまで浸透されると、東で起きている騒乱も含めて国が亡ぶ。ジョスタンの失敗は、自ら目の届く範囲のみの情報と固定化した思考で決断した事だ。しかも、今この場でもそれに気が付いていない。


「そうだな、ジョルダンよ。最後に聞く。エルメが突破された場合、どう対応する?」


「無論、直ちにエルメに赴き、敵を殲滅致します。」


「敵にむざむざ橋頭保を作られ、増援が到着し、陣地が構築された場所に突っ込み、無駄に兵を損失する、という事か。」


ジョスタンは答えられない。


「もう良い、ジョスタン。暫く謹慎せよ。追って沙汰は申し付ける。さて、アンベール大佐。貴公が見たニッポンの話を聞きたいぞ。フェルメも来ているのか?ここに呼べ。」


「失礼します、フェルメ二等大佐であります。」


「うむ。貴公らのニッポンの話を聞きたいのだ。可能な限り、詳細に語れ。」


「はっ。了解です。詳細に語ります。まず私が乗船した船は護衛艦きりしまと申しまして…


1時間程後…


「なるほど、それ程迄に彼我に技術の差があるのか。しかもだ。貴公らの話を聞く限り、好戦的では無いようだ。法律と手順を重視し、秩序立って行動しておる様に見える。…まず、余の考えにニッポンと敵対の意思は無い。可能な限り、友好的に接したい。国交も含めてな。我が国とニッポンの間にはガルディシアが居る。つまり地勢的に我々はガルディシアを挟撃できる状況となる。無論ニッポンが好戦的では無いと理解しているが、間に居るガルディシアはそうでは無い。そうでは無いが挟撃状態であれば暴発もすまい。労せずして、西の問題が片付くのは大歓迎よ。」


「左様に御座いますな。我が海軍としても、西の問題が大き過ぎましたからな。これに係る経費の無駄を考えると、交易に比重を移した方が良いかもしれませんな。ニッポンが居る限り、この辺りで海戦を挑む国は暫く居ない状況と言えましょう。」


「うむ、そこよ。エスダン将軍。安全に交易が可能となれば、ヴォートランとも安全に交易が出来る。また、大陸東の山脈向こうにも行く事が出来よう。その前提となるのはニッポンとの友好関係だ。そこで将軍。それとアンベールとフェルメ。貴公らは1階級特進し、只今より、ニッポン国と国交樹立の橋渡しを命ずる。可及的速やかにニッポンとの国交樹立を成すのだ。国交樹立の暁には、色々とニッポンから学ぶ事も多かろう。その辺り、貴公らに任す。一刻も早く頼むぞ。」


「了解いたしました。」


「ところで、だ。エスダン中将。以前頼んだ件、早めに実現をな。」


「あ、ニッポンの軍艦への乗船ですか?」


「うむ、楽しみで仕方が無いのだ。それとニッポンとの外交交渉で必要な物があれば直ぐに申せよ。」


「はっ、何分にも相手があっての事ですが…必ず実現するよう致します。ご期待下さい。」


アンベール准将とフェルメ大佐が退室した。


国王ル=フェイヨン8世は西部及び北部における心配事が無くなった今、東部国境の騒乱を今度こそ鎮圧する積もりだった。


「さて…ようやく東部国境に集中出来そうだな。」

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[一言] エステニアとエステリア、どちらが正しいのでしょうか?
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