1_66.第四艦隊旗艦の最後
デール海峡中間海域 ガルディシア第四艦隊 5月3日 午後12時半
「彼奴等の動きはどうだ、ハイマードルフ。如何な2個艦隊と言えども、射程外からの砲撃に対抗出来まい。
「第二艦隊は左に展開、第七艦隊は右に展開。一時、我が艦隊に対して包囲の動きを見せましたが、後退中です。相手の被害状況は、射撃の煙で確認出来ません。」
「良し、いいぞ。このまま反逆者共が後退するならば、その後退に合わせて前進せよ。第二、第七の旗艦を狙えよ。必ず仕留めろ!」
ベルレンバッハ少将は艦隊を全滅させる積もりは無かった。指揮命令系統を潰せば、自ずと反逆者達から解放され正気に戻る筈だと。その為、第四艦隊は集中的に両艦隊の旗艦を狙って撃っていた。しかし、じりじりと後退し続ける両艦隊旗艦には当たらない。
と、そこに甲虫のようなバタバタと煩い飛行機械が来た。
「我々は日本国海上自衛隊である。ガルディシア第四艦隊に警告する。我らは、ガルディシア皇帝からの依頼を受け、当該海域で哨戒行動を展開中である。直ちに戦闘行為を停止せよ。戦闘を停止しない場合、実力を持って排除する。」
なんだあれは?
あれに第二、第七艦隊が欺瞞工作を受けたのか?
なるほど、そういう事か。
「誰かあれを撃て。敵の工作手段だ。そもそも、あのような飛行機械を陛下がご存知な訳が無い。貴様等、さっさと撃ち落とせ!!銃を構えろ!!」
え?どうやって??
砲撃最中の甲板上で、空に向けて銃を撃つ?馬鹿な…と誰もが思っていたが、一人の海兵が狙いを定めて撃った。そしてその弾は、SH-60Kに偶然にも当たった。勿論弾かれたが、当たる、という事の確信を得られた海兵達は勢い付いて皆がそれぞれ勝手に撃ち始めた。
「こちら哨戒01、哨戒01、司令部。」
「哨戒01、こちら司令部。」
「艦隊から攻撃を受けている。被害無し。警告は無視。戦闘は停止せず。最終警告後、哨戒01は一旦退避する。以上。」
「司令部了解。哨戒01、一旦退避了解。」
一度上昇した後、SH-60Kは旗艦レゼルヴォート艦橋近くまで寄った。そして最後の警告を行った。
「ガルディシア第四艦隊に告ぐ。これは最終警告である。直ちに戦闘を停止せよ。戦闘を停止しない場合、攻撃を開始する。」
そしてSH-60Kは、最後の警告後、そのまま飛び去った。その飛び去る様子を見て、追い払った、と勘違いした甲板の海兵達に恐ろしい運命が襲い掛かった。
「敵第一グループ先頭艦艇に艦隊艦ミサイルを1発お願いします。第一グループの先頭艦艇撃沈後、再度ヘリで警告を行ってください。 "次の目標は貴艦である。総員退艦せよ"、と。で、総員退艦した第二グループ先頭の船から攻撃を行ってください。次に第三グループに同様の警告後攻撃。同じ手順で行ってください。それでも降伏しない場合は、仕方が無いので全艦艇を沈めて下さい。」
「了解しました。…出来れば先頭の船の様子を見て降伏して頂きたいですね。」
「それではまず先頭の船からお願いします。」
「了解しました。目標第四艦隊旗艦、ハープーン発射準備。」
「目標ロックしました。ハープーン発射準備完了。」
「ハープーン発射。」
「発射しました。」
第四艦隊旗艦レゼルヴォート艦橋では、兵達が沸き立っていた。よし、我々の方が士気も上だ。やつらは逃げ回るだけで何も出来ない。このまま早い所、第二か第七の旗艦を補足出来れば…
「ハイマードルフ、あれは何だったのだろうな。まぁ良いわ。全艦攻撃を再開せよ。早く彼奴等に当てろ。」
「了解です。」
「何か光るものが高速で本艦に接近中!!!」
「なんだ!何が来た?!!面舵一杯、避けろ!!!」
何か光る正体不明の物体は、海面を低空で飛びつつレゼルヴォートの直前でホップアップし、そのまま艦橋に飛び込んだ。レゼルヴォートは、艦橋そのものが大爆発をし、爆発によって発生した火災が消えず、消火作業も虚しくもう一度更に大きな爆発をした。この爆発によって艦が真っ二つにへし折れて海に沈んだ。
ガルディシア第四艦隊は全員この光景を目の当たりにし、誰もが口を聞けなくなった。僅か一撃で戦艦が沈んだのだ。
そして、再びぶんぶんと煩い甲虫が、第二戦隊の戦艦オラニエンの前に来て、警告を行った。