1_64.アンベール大佐のきりしま見学
第6護衛隊旗艦たかなみ 午後12時
アンベール大佐は遠藤一尉にヘリで連れられて来た。まず空に上がるのも初めてなら、ヘリに乗るのも初めてのアンベールだ。飛び上がって驚き、その高さに驚き、最後にはヘッドセットで会話が出来る事に驚いた。そのまま護衛艦きりしまの後部に着陸し、乗船した。
「ようこそ護衛艦きりしまへ。アンベール大佐。私が艦長の佐々木一等海佐です。」
「エステリア陸軍 要塞守備隊隊長のアンベール大佐です。どうも無理を言って申し訳ありません。」
「いえいえ、それでは艦を案内しましょう、こちらへどうぞ。どうか足元にお気を付けください。」
「おお、是非に。」
艦内に案内されると、通路の様な所を通り…木で作られた部分が何も無い。全て金属だ。足元も、壁も、天井も。少し暗い通路は、太いパイプや細いパイプが走っている。だが、そのど
れもが漏れた形跡も無く綺麗だ。床もとても清潔に見える。通路を抜けると、一番先に見学を希望した砲を見せて貰えた。
「これが54口径127mm単装速射砲です。実際に先程、ガルディシア第二艦隊分遣隊に使用しています。砲塔は、こんな感じで動きます。」
甲板上の砲塔も砲身も何かを追うかの様にぐるぐると動く。聞くと、1分間に40発で24km先まで撃てるという。しかもだ。この砲塔には人が配置されていないのだ。一体どんな仕組みで、どうやって動かしているのか…そういえば先程あのヘリとかいう飛行機械の操縦手は30kmと言っていた
が欺瞞だったのか?正確な情報を掴ませない教育なのかもしれんが…だが、こちらとしては24kmも30kmであっても、こちらからは届かないという意味では何の意味も無い。しかもこれだけの長距離砲、これだけの追尾を持っていながらにして、1分で40発も発射可能だと?4km先の目標を目視で撃つ我々の行為が幼稚に見える。ちなみに砲弾も見せてもらったが、非常に洗練された流線型の砲弾だ。この形状だけで、どれだけ工業技術が進んでいるのかが分かる。しかも一抱え程もあるこの砲弾が1分で40発なのだ!道理で数分間で12隻も攻撃可能な訳だ…こんな船がここに4隻も居るのだ。投射弾量を考えると寒気がしてくる…
「我が艦の主兵装は、こちらになります。」
…床??はて??なんの冗談なのだ?ササキ艦長は床を指さしている。床には蓋が沢山並んでいるだけだぞ??
「これは垂直発射システム VLS Mk41と申します。この蓋が開くと、中には誘導弾が入っておりまして、その誘導弾が物凄い速度で飛んで行きます。通常、我々はそれをミサイルと呼んでおり、蓋の数だけミサイルが詰まっております。また、この蓋の中のミサイルは様々な種類がありまして、状況に応じて使い分けております。」
アンベール大佐は説明を聞いても訳が分からなくなっていた。そのまま中に案内さてると、通路がピカピカに光る濃い青緑の床となり、それ以外が黄色い床となっていた。どちらも誠に清潔な状態であり、さっきまで戦闘を行っていた船とは思えない。最後に艦橋に上がり、何人もの兵が犇めき、ガラスの板を見ていた。このガラスの板には様々な情報が表示されるのだしかも何キロも先の物の位置も分かる仕組みだという。そしてその仕組みは砲にも応用しているのだという。
それは…10km先の目標に当てる訳だ。
「いや、凄い物を見せて頂きました。ササキ一佐殿。」
「いえいえ、喜んで頂けて私も大変喜ばしく思います。
「艦長!ガルディシア第四艦隊と思しき艦隊が南下中。15ktで南下。ガルディシア軍第二、第七艦隊との距離26km。あと30分程で両艦隊と接触します。」
「了解した。
"グラーフェン中佐、こちら護衛艦きりしま。そちらに艦隊が近づいて来ている。貴軍の第四艦隊でしょうか?"」
「"当該海域に存在する艦隊は他に第四艦隊しか無い筈です。然し第四艦隊との連絡が途絶している模様なのです。発光信号に応答がありません。もしかしたら…"」
「"了解、警戒して下さい。"」
…何やら面倒な事になってきたようだ。
「アンベール大佐はこのまま、ここでご覧になっていますか?私はCICに移り…あー、戦闘指揮室に移ります。戦闘指揮室は大変申し訳ありませんが、部外者は立ち入り出来ませんので、この艦橋からお楽しみください。では。」
え?俺、ここに残されるの?