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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
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1_59.皇帝の決断

ガルディシア ゲルトベルグ城 帝国歴227年5月3日 午前10時


「そろそろ帝都ザムセンはゲルトベルグ城に到着します。」


「わかりました、ありがとうございます。高田さんの情報では、城の前に広場があるようなので、そちらに。」


「ああ、あそこですね。了解です。」


オフプレイは着陸をする為、ローターが垂直に立ちつつあった。この界隈では聞かない爆音と下向きの風が辺りを騒がした。ゲルトベルグ城前の広場ではガルディシア人がパニックを起こして散り散りになっていた。


「皇帝陛下!!ニッポンの飛行機械が!」


「慌てずとも余にも聞こえておる。あのニッポンの者共は一体何をしに来たのだ。国交樹立の交渉か? その前に、ゾルダーに連絡を入れると言っておった筈だが。」


「直ぐにゾルダー中佐に確認してまいります。」


「ああ、まて。その前に近衛に緊急の招集をかけよ。それとニッポンの使者が来たら、ここまで案内せよ。」


今、この段階で来るとは…恐らく北ロドリア海海戦の事であろうか。それもこちらとしては先制攻撃を受けたという大義名分がある故、その線で押し通せば良いだろう。最悪、話にならなければ集めた近衛兵で捕縛すれば良い。如何に向こうが技術的に進んでいようが、所詮人間がやる事だ。人の選択の幅など高が知れておるわ。


「陛下!ニッポンの使者達が武装解除に応じません。如何致しましょうか?」


「なに?何故だ?」


「分かりません。尚、本日皇帝陛下にお目通り叶わぬ場合、デール海峡の上陸部隊の命運は決まる、と申しております。」


「な、なんだと!?一体何故それを…どこで……。よい…解除せずによい…そのまま直ぐに通せ。」


謁見の間に、日本の外交使節団が案内されて入ってきた。外交使節団の団長は女だった。そして、それ以外は完全武装した日本兵だった。何やら前に映像で見た連射可能な長い銃を持ち、それ以外にも見た事の無い様々な何かを付けている、緑色の服を来た男達だった。


「ニッポン人よ、本日は何用か?いや、それよりデールの上陸部隊の命運とは何事か?」


「私は日本国外務省に所属します轟と申します。貴国ガルディシア帝国担当に任命され、大変光栄に思っております。以後よろしくお願いいたします。後ろに控えておりますのは、陸上自衛隊 第一空て、」


「そのような挨拶は良い。本題を申せ。」


「それでは失礼して…現在我々は貴国ガルディシア帝国と同様、他の国にも国交樹立の為に様々な国に対してアプローチを行っております。貴国が北ロドリアで海戦を行い、またデール海峡で侵略行為を行っているエステリア王国もその一つです。前回、日本国の高田が国交を結ぶ為には最低限である以下三条件を提示致したかと思います。

 

 ① 日本-ガルディシア間の不可侵条約の締結

 ② 第三国との戦争状態にない事(侵略されている状態を除く)

 ③ 領土拡大を目的とした戦争行為を禁止する事


然るに現状を鑑みると、②と③に於いての条件が守られているとは言い難いと言えます。我々日本国としては、直ちに上陸部隊の撤収とエステリア王国との休戦を要求します。」


「貴様等ニッポンに何の権利があって、そのような要求を行う? そもそも、北ロドリア海では先に我々が撃たれたのだ。エステリア王国海軍の先制攻撃だ。いわば偶発的な事故の不幸な結果だ。しかし起きてしまった事は仕方が無いが、攻撃されたのなら我々は防衛を行う権利がある。防衛の為のデール海峡制圧なのだ。そもそも、貴様等ニッポンは余の主権を犯している。」


「我々は権利で申し上げている訳ではありません。勿論我々の要求を跳ねのけるのも貴国の自由です。然し乍ら、その判断は貴国の機会の喪失と他国の繁栄という選択肢を選ばれたという判断を我々はせざるを得ません。」


「ああ、要するに貴様等の技術が他国に渡るという事か?それを選ぶのも我々の自由ではないのか?おい、衛兵。急ぎ参れ。こやつらを捕縛しろ!」


どうせ近接での戦闘は武器の優越等帳消しになる。近接なら銃よりも剣の方が早い。しかもここはやつらにとっては敵地、こいつらを人質にとって、ニッポンとの交渉の道具に…


と、謁見室に衛兵が剣を構えて突入してきた。


「状況開始!」


とニッポン兵の怒鳴り声がしたと思った瞬間、大音響が鳴り響き、耐えがたい光が辺りを包んだ。部屋に居たガルディシア人全員が何も聞こえなく、何も見えなくなった。薄っすらと目が見えるようになると、ニッポン兵達が長い銃を撃っている光景が見えた。部屋に居た衛兵は全て昏倒していた。


「きっ、貴様等、我々と戦うつもりなのか!?」


「いえ、これはあくまでも偶発的な事故の不幸な結果です。貴方流に言うとですね、皇帝陛下。

その為、我々は希望します。前述の三条件に立ち戻って頂きたいと。文明国同士は武力ではなく言葉で分かり合えると思います。皇帝陛下、どうかご理解いただける事を願います。」


「む、むぅ…ここで我が衛兵を全て殺しておいて…貴様等、ここを無事に出られると思うなよ。」


「あ、それはですね。今回は麻酔弾ですので暫くすると目が覚めます。次回に同様な事が発生した場合は、その限りでは御座いません。どうか今一度、冷静にご判断下さい。尚、今回皇帝陛下からの停戦命令及びその言質が頂けませんでした。誠に残念に思いますが、これよりデールの貴軍の海軍戦力を殲滅させて頂きます。勿論降伏を選択する兵は受け入れますよ。それでは失礼致します。」


轟と第一空挺団の一行は、そのままゲルトベルグ城を後にした。


不味い。あいつらはきっとやる。

あの映像で見た恐ろしい長距離兵器が我が艦隊を全て沈める?せっかく北ロドリア海海戦で生き残った第四、第七艦隊が…あれ程の資金と資材を投入して作った陸上戦艦が…駄目だ、駄目だ。それは駄目だ…何とかしなければ…


……待てよ?

我々に戦争を行わせない、という事はエステリアも同様か? 一方的に我々が戦争出来ない訳ではなく、同時にエステリアも、そして、ヴォートランも戦争が出来なくなると言う事か? まだ、それなら我慢が出来る。奴らにやられる事も無くなるからな。何れあれらの技術を習得すれば、その時は…しかし今敵対は駄目だ。何れにせよ、デールに展開する戦力を戻すにはどうしたら…?


ああ、そうだ!!

停戦と帰還命令をゾルダーからニッポン軍に流せば良いのか!!ニッポン軍から、余の命令であると伝えれば良いのだ!!余は…余は…天才か!


「誰か!!誰か!!ゾルダーを大至急呼んで参れ!!!」

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