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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
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1_56.皇帝の判断

ガルディシア帝都ザムセン 帝国歴227年5月2日 午後4時


帝都ザムセンには、北ロドリア海で行われた海戦の速報が届いた事により、上へ下への大騒ぎとなっていた。無敵無敗を謳われた帝国第四艦隊グロースベルゲン公爵の戦死。そしてここ数十年、負けるという事が無かったガルディシア帝国が、海戦で引き分けに終わった。艦隊の艦数だけなら、未だその威容を保っていたが、指揮官戦死という言葉から来る衝撃は大きい。


帝国艦隊の戦略目標は、敵2艦隊の撃滅と海峡への挟撃。かかるデール海峡上陸作戦に、北から第四、第七艦隊、南から第二艦隊そして上陸用新兵器の陸上戦艦100隻。作戦の第一段階として、艦隊の撃滅。この作戦の第二段階デール海峡上陸が残っているのだが、それが今後どうなるのか?帝国国家の国家元首である皇帝の判断が、行く末を決めるのである。


この報を聞いた瞬間に、皇帝ガルディシアIII世は吼えた。


「一体どういう事だ!何がどうなっておるのか!?何故、グロースベルゲン公爵が死ぬ?あれは単独で2艦隊を相手にする事も可能な艦隊の筈だ!!」


「陛下、敵ヴォートランが第四艦隊に対し、決死の突進を行った結果、接近戦を強いられ、突進してきた敵艦隊の砲撃により…」


「そんな事は分かっておる!そもそも我々の艦隊に何故接近を許したか、だ。第七艦隊は一体何をしていた!」


「第七艦隊は、"砲撃禁止"を守り、敵艦隊を引き付けておりました。」


「"砲撃禁止"だと!ああ…砲撃禁止とはアレの件か…?」


「はい、左様に御座います。ニッポンとの交渉を鑑み、敵に先に撃たせよ、との事で。第七艦隊は第四艦隊の発砲許可の後に、砲撃戦に参加しております。」


「くっ、我ながら間抜けな顛末となった物だ。ちなみに第七艦隊の被害は如何程だ?」


「アルスフェルト伯爵は敵艦隊の射程ぎりぎりの距離で引き付けていた為に被害はそれほどでも無かった、との事。尚、砲撃戦も敵艦隊後方から砲撃戦を仕掛けた為、これも被害はあまり出なかった、との事。」


「ちなみにこれはニッポンには知られてはおるまいな?」


「残念ながら陛下、当該海域にて戦闘終了の頃合いにニッポンの軍艦が現れ、漂流していた両軍の兵士を救出していた、との報告があります。彼らにより相当数の兵士が救出された模様です。」


「なんだと…!?」


「既に第四、第七艦隊が入るより早く、ニッポンの大型艦艇が収容した負傷者達をヴォルン港に降ろしている、との事です。また、手術を伴う治療を要する重傷者は、こちらで面倒を見るとの

ニッポンからの報告を港の者が受けています。」


皇帝ガルディシアIII世は考えた。デール海峡は未だニッポンの連中は知りやしない。きっとあいつらの目は北ロドリア海に釘付けの筈だ。


それにしても第七艦隊は発砲禁止を守り、先に撃たれたようだ。であれば、未だ大義名分は立つだろう。問題はエステリア上陸の件だ。どういう理由を付けたものか…


いや…。北ロドリア海におけるエステリア海軍からの戦闘行為の結果、我が国は戦争を強いられた。が故に、敵の策源地に対する攻撃は必然。防衛だといって、敵が攻めてくるのを待つだけでは戦争は終結しない。ましてや、攻撃側は好きな時に好きな場所を攻撃する事が可能だ。当然そうなる前に戦場の主導権を我々が握らねばならない。


「第四艦隊の被害は如何程だ?」


「全艦の1/3弱程度、30隻程が沈められました。行動可能な船のうち、攻撃参加が可能な船は報告待ちです。」


「元々倍の規模だからな。すると今で通常艦隊並みという事か。それでは作戦続行は可能であろう。どうなっておる?それと第二艦隊と上陸部隊は如何か?」


「只今、両艦隊共にヴォルン港で補給中です。明日には出港可能か、と思います。第二艦隊及び上陸部隊は待機となっております。」


「むぅ…伝書出せ。作戦続行だ。作戦開始は明朝7時。第四、第七艦隊の到着を待った上でデール海峡の攻略を開始せよ。第二艦隊はデールでの要塞砲撃戦に参加するように。」


「ニッポンは宜しいのでしょうか?」


「何、1日もあればあいつらが知らぬ所で終わるだろうさ。占領してしまえば、後はどうとでもなるであろう。」


皇帝ガルディシアの決断は、ガルディシア帝国の行く末を大きく変える事となった。

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