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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
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1_54.北ロドリア海の夜

危機管理センター 2025年5月1日 午後10時


「ガルディシアとエステリア連合の海戦も一段落しましたねぇ。次は外務省に働いてもらいますかねぇ。」


先程三沢基地から帰ってきた内調の高田が軽口を叩く。三沢基地からこっち、何やらとても上機嫌なのが不気味だ。


「それなのだが、高田君。君がガルディシア皇帝と謁見した際に、去り際に約束した3点。全く彼らは守る気が無い様に見えるが。」


「総理、それは違います。

 アレは言い逃れが可能、と思っているんですよ。それが第七艦隊の動きにより明白です。第七艦隊は一発も撃たずに敵の目前を遊弋してました。これは"相手から撃たせる"挑発行為です。この世界の軍艦を所有している国で、敵国或いはそれに近い存在に目の前でアレをやられて発砲しない国は無い、と考えて正解でしょう。発砲した時点で、"先に撃たれた"大義名分の完成です。」


「ああ、盧溝橋とかトンキン湾とかか…。」


「実の所、別にそこは構わないのですよ。問題は上陸部隊の存在ですね。あれこそ侵略の準備です。今後の交渉の展開を考えると…自衛隊にもうひと働きしてもらうのが良いように感じますね。」


「もう、ひと働きとは?」


「ガルディシア上陸部隊の殲滅。それとエステリアとの外交交渉。あ、こっちは自衛隊じゃないですね。」


「それは出来んぞ。先制攻撃をする、というのか?」


「まずエステリアに外交交渉を行います。そうですね…今、収容されている海戦時の救助者の方々。あの方々を国に届け、我々が何者かを開示し、交渉を持ちかける。まだエステリアの情報がイマイチ掴めて無いんですが、彼の国も鉱物資源はわりと豊富なようですので、交渉の価値ありです。その上でガルディシア上陸部隊が正にエステリアに着上陸する辺りで上陸阻止と同時にガルディシア皇帝への外交的圧力。"エステリアは現在日本と外交交渉中である。直ちに戦争行為を停止せよ"と警告、攻撃続行の場合、実力行使ですね。」


「君は簡単に言うな。

 ただ、警告を出した上でこちらの要請に従わず、というならば…海上幕僚長、どうだ。この線で動けるか?」


「今の時点で可能は可能と思いますが…正直に言って、燃料の調達が不明瞭な状態では何れ行き詰まります。何等かの方法で、燃料の調達や確保を確たるものにしなければ。行動の自由が無くなります。」


「その為の外国との交渉だよ、海上幕僚長。これはその為の先行投資といったものだ。」


高田はよくある若者を騙す時のキャッチの言葉の様だなぁ、と思いつつ総理の言葉を聞いていた。


北ロドリア海 2025年5月1日 午後10時


午後8時に護衛艦いずもと補給艦ましゅうが到着した。そこで、まず補給艦ましゅうの方に手術の必要な重傷者を移した。集中治療室に居た1名のガルディシア人はそのまま移動せずにおおすみに

残り、移動出来るガルディシア人は護衛艦いずもに移動した。ヴォートランとエステリア人はそのまま輸送艦おおすみに残った。護衛艦いずもなら、5,000人は乗艦可能だろう。今夜一晩なら何とかなるだろう、という腹だったが、ともあれ救助部隊はこれで取り合えず一息ついた。



ガルディシア第四艦隊の再編が終了した頃、戦闘は終了していた。ヴォートラン艦隊は壊滅し、エステリア艦隊は西に逃げた。ベルレンバッハ少将は再編後に追撃を考えていた。


いずれエステリア艦隊は北に迂回しつつ国に戻ろうとする。と、するならばこの北ロドリアのエステリア寄りの場所で待ち構えてやってきたエステリア艦隊を殲滅する事が可能ではないか?旗艦である戦艦ヴィターアールとグロースベルゲン公爵を失った今、何か確実に戦果を上げねば、一体どんな責を問われる事か…


「ハイマードルフ、追撃は可能か?」


「難しいと思います。エステリア艦隊が元の港に確実に戻るのであれば、それも可能ですが…」

 

「ああ、あのままヴォートランの港に逃げ込む、と?」


「しかもヴォートラン本国から追撃艦隊が出ないとは限らないです。そちらに進むのは、こちらの危険が非常に高いですね。逆にエステリア本国に行く場合ですと、港の選択の幅が広すぎて、逃がす可能性の方が高く、どちらも断念した方が良いかと。」


「むぅ…まずは第七艦隊と合流し、アルスフェルト伯爵と話す。今後の展開は第七艦隊と協議する。」


発光信号を第七艦隊に送った後、連絡船で第七艦隊旗艦アレンドルフに乗船したベルレンバッハ少将は見慣れぬ船に気が付いた。


「乗艦許可ありがとうございます。私は第四艦隊司令官代理ベルレンバッハ少将です。司令官のグロースベルゲン公爵は戦死されました。」


「そうか。残念であった。私は第七艦隊司令官アルスフェルト伯爵である。まずはご苦労であった。」


艦橋まで来たベルレンバッハ少将の目に留まったのは、艦橋の外に広がる光景の中に見た事も無い船が居たからだった。しかもその周辺で動いて回る見た事も無い形の小さなボート達。


「ん?あの船は何ですか?大きい癖に甲板に武装が無い。一体どこの船なのでしょうか?」


「ああ、あれはニッポンという国の船だ。何やら中央ロドリア海から来たそうだ。只今、皇帝陛下と外交交渉中らしいぞ。」


「ご存知で?あれは何をしているのですか?」


「あれはニッポンの救助活動のようなのだ。あの小さいボートで海上に浮かぶ負傷者を助け、本船に連れてゆく。あの飛ぶ奴はわからん。あとで説明を聞いてみようとは思うが。」


「随分と高度な…見た所、敵味方の区別をしていない様ですが?」


「ああ、彼らは全員救助するらしい。親切な事だな。それよりも貴公、"無線機"という物を知っているか?これがそうだ。大層便利なシロモノなのだ。」


ベルレンバッハ少将は違和感に包まれていた。

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