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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
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1_53.北ロドリア海 救助完了

北ロドリア海 2025年5月1日 午後5時


「この辺りの海域での生存者は全て救出しました。生存者はガルディシア人が2,680名。ヴォートラン人1,437名、エステリア人438名。内、重傷者は345名、死者78名です。現在集中治療室2床を含めて病床8つは全て埋まっています。また、手術を待つ重傷者は手術室の空き待ちの状況です。」


「ふーむ、思った以上に多い…手術室が足りないな。護衛艦いずもと補給艦ましゅうを呼んでくれ。近くで待機している筈だ。"戦闘は終了、この海域に戦闘無し。緊急に手術室を求む"、と連絡しろ。」


艦長の所沢一佐は、報告を聞いた後で今後の行動を考えた。

政府からの指示では、


 ① 戦闘には一切加わらない。

 ② 海上で戦闘に参加した全ての国に対して救助を行う。

 ③ 治療を必要としないガルディシア人は、直ぐに近隣のガルディシアの港に届ける


という命令を受けていた。

未だ国交の無いヴォートランとエステリアに関しては、恐らく今回発生した負傷者を治療した後に、国交の糸口にする腹積もりなのだろう。しかし、おおすみの能力を遥かに超えた救助人数だ。幸い、ガルディシア第七艦隊の艦隊司令官と連絡をつけられた為、動けるガルディシア人はガルディシアの船に移って貰おう。


「重傷者の中で動かせないガルディシア人は何人居るか?」


「今現在で2名です。1名は集中治療室に入っております。」


という事で、早速無線機でグラーフェン中佐に連絡をした。


さて、残りのヴォートランとエステリアの人達には…将校と兵に分かれてもらい将校は居室に、兵は車両甲板に分けた。それでも空間が足りない。車両甲板は立ったままの人も多い。あと2、3時間後にいずもとましゅうが来たら状況も変わる。今、苦しんでいる重傷者への対応も可能となる筈だ…


ガルディシア海軍第七艦隊旗艦アレンドルフ 227年5月1日 午後5時


「ザザッ、こちら輸送艦おおすみ。グラーフェン中佐、応答願います。」


「お。はい!ぐ、グラーフェンです。聞こえますか?これ、送られたのか?あ、話し終わったら離すのか。これで」


「はい、聞こえますよ。おおすみの所沢一佐です。こちらの救助活動は全て終了しました。

 ガルディシア人の救助者は2,680名、この救助を行った方々のうち、動かせる人達をそちらの艦隊にお渡ししたいと思うのです。そちらの艦艇の中で、人を乗せる余裕がある船がありますか?」


「はい。聞こえました、了解です。本日はそろそろ日も落ちます故、明日改めて確認したく思います。」


「ちなみに近隣の港はヴォルン港になりますよね。ここから200kmあるか無いか位か…LCACで届かないな…。了解しました、明日朝にまた改めて。」


「了解です。改めて宜しく。」


ふーむ、無線機か…便利なシロモノだ。

やや暗くなり始めたこの北ロドリア海の中で、双方の船の距離は1kmに満たない。しかし我々はこの距離を発光信号か手旗信号、信号旗で連絡する事になるし、それ以外に手段は無い。ところが、この無線機とやら…あの遠くに浮かんでいるおおすみの艦長と、まるで隣に居るかのように会話が可能なのだ。感心していると、アルスフェルト伯爵が声をかけてきた。


「今のを見ていたぞ、グラーフェン中佐!」


「あ。伯爵、これは申し訳ございません。

 ニッポン軍の無線機にて、輸送艦のトコロザワ艦長から連絡がありました。曰く、救助人数は2680名、ガルディシアの船に移せる人は移したい、との事です。」


「いや、咎めたのではない。そう、その無線機だ。それは如何なる原理で動いておる?我々にも作る事は可能か?」


「皆目見当がつきません。電気で動いている事は間違いないのですが。ただ、これが艦隊分あると…何倍もの戦力を加えた事に匹敵する事と思います。」


「グラーフェン中佐もそう思うか。どうにかしてニッポンから入手出来ないだろうかなぁ。100個、いや10個でも良い。最悪、4つでも良い。艦隊の要所を占める船に搭載出来たなら…グラーフェン、後でニッポンに交渉して貰えぬか?」


「自分も救助者引き渡しの際に交渉を試みようと思っておりました。明日、小官が交渉致します、伯爵。」


「うむ、頼む。頼りにしているぞ、グラーフェン!」


…調子の良い人だ。

だが、ある程度俺を信用してくれるからこそ、俺も思い切った手を打つ事が出来る訳だからな。

ともあれ明日には救助者を収容してヴォルン港に戻れる。その時には、ニッポンの無線機が手に入っていれば良いのだが…

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