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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
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1_52.北ロドリア海 救助活動

北ロドリア海 227年5月1日 午後3時


「どうやら間に合ったようだな…」


「まだ海上に生存者がおります。救助作業を開始します。」


「ガルディシア艦艇から発光信号!」


「ガルディシア人に信号解読を要請。艦橋に上げろ。」


戦場の跡におおすみが到着した。

おおすみは、ガルディシア人もヴォートラン人もエステリア人も差別せず、その戦域の全て人の救助作業を行い始めた。と、その時に付近を遊弋するガルディシア艦艇からの発光信号に、おおすみに乗船していたガルディシア人が呼ばれた。ブリッジに上がったトア伍長はあたりの風景を見て茫然とした。ガルディシアの船もヴォートランの船もそこら中で煙を上げていた。海面には多くの破片と人が浮かんでいた。


「お、来たな。君の名はトア伍長だったな。早速だが働いて貰おう。あの信号は何と言っている?」


「あ、はい…貴艦の所属と目的を知らせ、です」


「なるほど。ではこう伝えてくれ。"当艦は日本国海上自衛隊所属 掃海隊群第一輸送隊所属 輸送艦おおすみである。当該海域への展開は救助作業を行う為である。"」


「了解です。当艦は…」


ニッポン?どこの国だ?聞いた事無いぞ…?急にやって来て救助作業とか、どこのお人よしだ?


グラーフェン中佐は目の前の光景を見て、混乱した。見た事も無い船がやってきて、勝手に救助活動を行っている。しかも救助活動を行っている連中の装備はこりゃ一体なんだ?何やら黒い小さいボートが、救助者を次々とボートで回収し、そのまま大きな船"おおすみ"の方に連れていっている。また、白と赤に塗られた空飛ぶ機械から、人がロープで降りてきたり、引き上げたり。

これは一体何をしているんだ?? 救助を優先的に行っている、という事はこちらには敵意は無い? それであっても正体を知らねばならん!


「再び発光信号!」


「何と言っている?」


「"本艦はガルディシア海軍第七艦隊旗艦アレンドルフ也。日本の船に告ぐ。直ちに停船し臨検を受けよ。"」


「ふーん。公海で臨検ね。次の様に送って。"貴艦は如何なる根拠に基づいて本艦を臨検するのか。根拠となる法律を示せ。"」


「"言うに能わず。本艦は貴艦に攻撃も辞さず。本艦の要請に従われたし。"」


「まぁ、正体不明の船が突然現れたらねぇ。当然かな。救助用にゴムボート全部出しているんだよね?それじゃ、ヘリで挨拶に行きますか。"今、そちらに行く"と送って。」


"おおすみ"とやらからそちらに行くと発光信号が来たが、一体この状況でどうやって来るのかと思っていた。あの小さなボートで来るものだとばかりに思っていたが、回転する羽のついた甲虫の様な空飛ぶ機械で彼らはやって来た。


「日本国海上自衛隊所属 輸送艦おおすみ艦長、所沢一等海佐です。」


「ガルディシア帝国海軍所属 艦隊司令官アルスフェルト伯爵である。早速だが聞きたい。貴国ニッポンとはどこにある国なのか?」


「我々は中央ロドリア海に位置します。以前は嵐が吹き荒れていた海域の中央ですね。」


「なに?そこには以前調査の為に駆逐艦を送り込んだのだが…」


「駆逐艦マルモラ号ですね。日本に来ていましたよ。艦長のゾルダー中佐は本国首都ザムセンに送り届けたのですが…マルモラ号は帰還途中に何等かの事故が発生し、爆沈致しました。」


「何と!?マルモラを??ゾルダー中佐?!ニッポンに来ていた??え?首都ザムセンに送り届けた??ど、どういう…??」


正体不明の人物から見知った名前と地名を聞いたアルスフェルト伯爵は、瞬間に大混乱した。

傍らでゾルダーの名を聞いたグラーフェン中佐が割り込んだ。


「なんと!ゾルダー中佐とも面識があるという事ですか???」


「ゾルダー中佐は数日日本に滞在し、その後日本とガルディシアの国交に関する橋渡し役として、皇帝陛下との謁見の際に同席して頂きましたよ。つい10日程前の事だったかと。ご存知無かったですか?」


10日程前?ちょうど皇帝会議の頃だ。突然の方針変更の原因はこれか。それにしてもゾルダーめ。こんな重要な情報を我々に伝えないなんて…いや、しかし方針の変更を伝えられたのだ。これは秘匿したな。ともあれ、これから国交を結ぼうとする国であるなら強硬な態度は良くない結果を生みそうだ。


「なるほど、了解いたしました。改めて先程の非礼をお詫びいたします、トコロザワ一等海佐。何分先程迄戦闘中であった為、少々気が立っていたようです。全くもってお恥ずかしい限り。」


「いえいえ、こちらも名乗らずに突然現れましたからね。そもそも既に貴国には我々の情報が行き渡っていると勘違いしていたのも事実でありますゆえ、お互い水に流しませんか。」


「そうしてくれると有難い。救難活動との事、大変感謝いたします。」


「それが仕事ですから。では救助活動に戻ります。何かそちらで足りない物があればご連絡下さい。ああ、そうだ。これを渡しておきましょう。この海域内であれば、十分通信可能ですので。」


グラーフェン中佐は小型の無線機を渡された。そしてゾルダーと同様、簡単な無線機の使い方を習った。

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