表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
52/327

1_51.北ロドリア海海戦-③

北ロドリア海 227年5月1日 午後1時半


戦艦ヴィターアール艦橋からはもうもうと煙が立ち昇っていた。


「旗艦ヴィターアール艦橋に敵弾命中!」


「なんだと!閣下は!?グロースベルゲン大将は御無事か?」


「艦橋部分、煙の為確認不能!」


「あ…艦橋が吹き飛んでいる…これは…」


戦艦ヴィターアールは指揮官を失っても、各部は動き続けた。砲塔は個別に砲撃を続けていた。前進も続けていた。周辺は味方や敵の戦闘艦の残骸や行動不能となった艦で溢れていた。ヴィターアールはそれらの船にぶつかりながら、ゆっくりと前に進む。まるで意思の無いゴーレムのようにゆっくりと。ああ…既にあの艦の指揮能力は喪失している…


「ヴィターアールはもう駄目だ。俺が代わりに指揮を執る!各艦に通達、私はベルレンバッハ少将である。グロースベルゲン公爵の代理として第四艦隊の指揮を執る。」


ベルレンバッハは傍らの副官に尋ねる。


「ハイマードルフ、敵は我々を後方から半包囲を企図しているな?」


「我が艦隊の右翼を突破した敵は、中央部分を包囲しつつあります。このままですと、半包囲が完成します。」


「うむ、包囲が完成する前に逃げる。各艦に通達、可及的速やかに当該戦域を離脱した後に戦力を再編する!」


艦橋ごと吹き飛ばされたグロースベルゲン公爵から、指揮官代理としてベルレンバッハ少将が艦隊指揮を代行した。ベルレンバッハは、艦隊再編と左舷前方への離脱を指示し、再編中に中央後方を攻撃されつつも、艦隊の損害をそれ以降押さえて再編を成功させた。


エステリア艦隊は第四艦隊の右翼を左斜めに突き抜け、そのまま西側にから第四艦隊を半包囲しようと旋回した。包囲を嫌った第四艦隊だが、司令官喪失からの立ち直りに若干の時間を浪費した。この若干の時間をエステリア艦隊は上手く利用した。


「ん…おい、敵艦隊の動きが鈍くなったな。」


「はい、エスダン将軍。どうやら指揮系統に打撃を受けた模様です。」


「よし!我々はこのまま敵第四艦隊の後方に回り込むぞ。このままここで応戦しても第七艦隊から撃たれる。」


「了解しました。全艦隊、我に続け。敵第四艦隊中央後方を包囲!」


「包囲が完成しても長居するなよ。一撃喰らわしたら離脱だ。敵も直ぐ立ち直るだろうからな。」


第四艦隊中央部分後方には、比較的装甲の薄い艦が集中していた。そして司令官喪失によって艦隊は既存の命令が墨守された。即ち、"前進しつつ右舷に攻撃を集中せよ"、だ。エステリア艦隊は、既に後方に回り込もうとしているのに。


司令官代理からの新しい命令が来た段階で、中央後方部分の艦隊にはかなりの被害が出たが、第四艦隊の司令官代理が艦隊を把握した時点で、エステリア艦隊は包囲を解いて、ヴォートラン方面に離脱を開始した。


第七艦隊は、ヴォートランの残存艦隊を掃討しつつ、エステリア艦隊の追撃を開始していた。既にヴォートラン艦隊残余は戦意を喪失し、降伏旗を掲げている船も少なくない。だが、エステリア艦隊は、巧妙に第四艦隊を半包囲しながら砲撃を中央部に集中させ、そのまま離脱した。


「どうやらここまでの様だな。」


「はい、アルスフェルト伯爵。エステリア艦隊の追撃は行わなくても宜しいので?」


「うむ、戦闘終了を各艦に通達。生存者の救出を行うぞ。しかしグラーフェン中佐、上手く行ったな。」


「一部被害が出ましたが…概ね成功かと。」


「巨大な艦船が西南西より接近中!!」


「なんだ!?どこの船だ?」


「…甲板上に武装が何も無い船です。あれは…何の船だ?どこの船だ?」


大勢は決し、この戦場に勝者は居なかった。そして戦場に日本のおおすみ級輸送艦が到着した。

おおすみは、この海域で勝手に負傷者の救助を開始した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ