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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
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1_48.上空からの視点

日本 三沢基地某所 2025年4月29日 午後12時


「おおお、港の船が動き始めたぞ。総観だな。」

「ん?ヴォルンの港か?ガルディシア人呼んで来い。」


三沢基地に配備してあるグローバルホークの偵察飛行により、ガルディシアとエステリア及びヴォートラン連合海軍の動きは筒抜けだった。そして三沢基地に駆逐艦マルモラの乗員数名が、情報関連の協力を行っていたのだった。協力を要請されたエウグスト人は"ガルディシア人"と呼ばれる事に若干嫌な顔をしていたが、呼ぶ方の日本人はエウグスト人と呼ぶ事を忘れていた。


「ガルディシア人の方々に協力のお願いです。この中でガルディシア艦隊の識別が可能な者は居ますか?」

 

「あー、自分、多少は判別つきますよ。どうしました?」


「艦隊情報の鑑定を願いたい。ご協力お願いします。」


「分かりました。付いて行けば良いですか?あと、こいつは艦に詳しいので連れて行きますね。」


エンメルス曹長は、ファルマー上等兵を連れてグローバルホークの指揮管制室へと入った。この部屋ではグローバルホークが見る視界が、目の前の大きなモニターに展開していた。


「まず、この港はヴォルン港で間違い無いでしょうか?」


「ああ、間違いない。…凄いな、上空から撮っているんだ。艦隊の数、多くないか?第四艦隊…もう一つは第七艦隊か?」


古巣の第七艦隊を見かけてエンメルス曹長は多少驚く。


「この大きな艦にズーム合わせて…はい。この艦は分かりますか?」


「あれは…第四艦隊旗艦の最新鋭戦艦ヴィターアールです。帆は無く、動力は全て蒸気機関のスクリュー推進式です。」


フェルマー上等兵はモニターを見ながら生き生きと話す。エンメルス曹長は上空からの映像を見ながら気が付いた。


「あれ?第七艦隊は、なんていうか…古い感じがするな。第四艦隊と比べて装備がなんか微妙だぜ。どう思う?」

 

「第四艦隊は、最新鋭の装備を最優先に回されますからね。比べて第七艦隊は暫く予備兵力扱い。今回漸く初出撃ですから…古い船の寄せ集め、と言われても仕方がないです。」

 

「駆逐艦だけは最新鋭だったんだけどな。沈んだけど。」


「いや、アレも速力は最新鋭ですが、砲が…」


エンメルス曹長も知らなかったが、砲が帝国一線級の奴では無いらしく安定量産を狙ったダウングレードの砲だという話だ。その性能の差は主に射程に現れるらしく、正規砲と比べて3/4程度の射程だと言う。


「他に目立った船はありますか?」


「ここの船の類は駆逐艦で、あの周囲に居るのは砲艦ですね。ここら辺りに固まっているのは外輪式の戦艦と戦列艦。港の端に固まっているのは補給艦ですね。」

 

「なるほど…この艦隊に輸送艦の類はありませんね。では、こちらをご覧いただけますか?」


一同、隣のブースに移る。

隣のブースにも同様の設備があり、正面に同様の状況が映っていた。


「ここの港はどこだか分かりますか?」


「え? ええと…マールーン港?…エステリアの??ああ、あれはエステリアの艦隊だ。ヴォートラン艦隊も居る!」


「はい、エステリア北部海岸付近を飛んでいます。」


「え、これ今の映像なんですか?今、まさにマールーンの上を飛んでる?」


「はい。今現在、3か所にグローバルホークを飛ばしています。一つは、ガルディシア北部のヴォルン港。一つは、エステリア北部方面。今映っているのはマールーン港。最後は、デール海峡上空、の3機です。全てリアルタイム、つまり今この瞬間の映像です。」


「それは…凄過ぎる。飛んでいるの、見つからないんですか?しかしこれでは貴方方の居た世界で戦争なんて起きないでしょうな。何せ何もかも筒抜けなのだから。」


「そうでもないんですけどね。」


自衛官は笑っていたが…

敵も味方も全て丸見えだ。神の視点に等しいではないか。元のモニターに視線を移すと、ガルディシア第七艦隊が洋上に向けて出港しつつあった。だが、第四艦隊は未だ動かない。そして、暫く眺めていると第七艦隊は移動の為の艦隊運動をしていたが、どうも何かおかしい。何が…とは明確に分からないが…


「ちなみに、最後のデール海峡上空ですが…海峡部の最短部ガルディシア側に、小舟が集まってますね。あれは何だか分かりますか?」


「あ、いいや、あれは良く分からないですね…」


と、エンメルス曹長。

すかさずフェルマー上等兵が答える。


「ああー、あれ噂に聞いた陸上戦艦じゃないですか?確か海から直接上陸が可能、って話です。ただ、陸上だと前に進むか後ろに下がるかだけの筈だったと思ったけど…実用化したんだ。」


「ああ、あの小舟で上陸する積もりなんですね。それと…カメラをずーっと引いて…ああ、見えた。ガルディシアの艦隊がもう一つ移動中ですね。あの艦隊にズームして…この艦隊はどうです?」


「あれは…ムルソー港から出港した第二艦隊でしょうかね。もう少し近くに寄ってみると分かるかも…あ、もう充分です。あれは第二艦隊です。あの艦隊も新型砲搭載です。」


「どうもご協力ありがとうございました。色々分かりました。また聞くことがありましたら、お呼び致しますので。」


帰りしなエンメルス曹長は2、3の事について不思議に思っていた。タカダの話だと、ガルディシアとの交渉の中で、"領土拡大を目的とした戦争の禁止"ってのが条件にあった筈だ。であるのに、今日見たガルディシアの港は明らかに戦争準備行動だ。領土も取らずに戦争だけする?そんな金のかかる事だけの事をする国じゃない。必ず敗戦国から金、資材、宝、人を戦勝国は奪ってゆく。必勝の何かでもあるのか?ニッポンは加担しないぞ?そもそもガルディシアは条約を満たす国に非ず、とニッポンが判断した場合はどうなる?交渉の場にも立てない事になるんだぞ?

それなのに、これから戦争だって?あいつらの考えている事はわからん…何か策でもあるのだろうか。


気にしても仕方が無いな。エンメルスは気持ちを切り替え、日本から依頼されていた訓練を開始した。すなわち、エウグスト人による潜入工作員の訓練である。

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