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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
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1_44.帝都ザムセン-②

エステリア北部 中央軍司令部 帝国歴227年4月19日 午前10時


「将軍!ジョスタン将軍!!」


「何事だ。」


「西部海岸派遣中のフェルメ二等大佐からの伝令です。」


「なんだ。また増援要請か?目の前に要塞があるというのに、何が増援か。」


「…申し上げにくいのですが、仰る通り増援要請です。」


「我が軍に余剰戦力無し。現有戦力を以て当該陣地を死守、と伝えよ。」


「了解しました。」


実の所、エステリア軍の上層部としては、艦隊による決戦が行われた場合、西部海岸の要塞陣地に態々攻め込む馬鹿もおらぬ、エステリア要塞設置部分を避け、北部方面の海岸に上陸するだろう、と見込んでいた。大兵力が上陸するには、ガルディシアとエステリアの両岸が非常に接近す

るデール海峡内のエルメ海岸が適している。しかしエステリア側の丘には複数の要塞と要塞砲が待ち受けている。ガルディシアは知ってか知らずかこの海峡には余り近寄らない。


その為、エステリア軍主兵力は北部に集中していた。

この主兵力は西部海岸の要塞陣地から450km程離れた場所に展開していた。フェルメの危惧が当たれば、エルメ海岸に上陸した敵戦力は橋頭保を確保した後は、450kmの間は敵と遭遇しない。この間に存在するのはフェルメの重騎擲弾兵400名と少数の猟兵だけなのだ。が故にしつこい迄の増援要請を繰り返したフェルメだったが、その要請は今回も通らなかった。


「フェルメの臆病者め。要塞陣地が目前にあって何を恐れる事がある!」


ジョスタン将軍は、もし仮に海軍が突破された場合の演習を繰り返す事に余念が無かった。そして、直ぐにフェルメの件を忘れた。


--

ガルディシア ザムセン港 4月19日 午前10時30分~


港内では大混乱が巻き起こっていた。

見た事も無い空飛ぶ物が爆音を立てて城の上を旋回したかと思えば、港の中迄やってきて着水した。おい、あれどうすりゃ良いんだ??と、港の保安要員は取り合えずおっとり刀で駆け付けるも湾の上に浮かぶ空飛ぶ物を遠巻きに見ていた。首都ザムセンの守備用として、第三艦隊が居るには居るが、こんな急には動けない。


湾に降り立ったUS-2は港の中までに入らず、少し遠い所からゴムボートを降ろした。ボートには鐘崎3佐と護衛の2名、そしてゾルダーがボートに乗ろうとした際に、高田は声を掛けた。


「ゾルダー中佐。ええとですね、駆逐艦マルモラなんですが、先程連絡がありまして、機関故障からの爆発事故を起こした様で…日本国の海上保安庁が救助に駆け付けたのですが、間に合いませんでした。」


「なんですって!?何てことだ…我が乗組員達が…ああ…いや、しかしこれから陛下に報告をせねばならない故、御国との交渉がその際に上手く行くように、気持ちを切り替えて参ります。」

(なんだと?!機関故障から…蒸気爆発でも起こしたか?しかし、それなら好都合だ。案ずるより産むが易しだな。)


ゾルダーは秘かに安堵しつつボートに乗り、その後に高田も乗った。ボートはあっと言う間に港に到着し、ザムセン港の責任者を呼び出した上で、ゲルトベルグ城への交通手段を確保した。ここに海上自衛隊の3名と内調高田は異世界で初めて他国に上陸した。


ガタゴトと揺れる蒸気自動車の中で、高田はゾルダーに言った。


「ところで。…一石二鳥でしたね、ゾルダーさん。」


「え?何がですか?」


「いやいや…ははは。先程は名演技でしたよ。」


「さっきから一体何の話なんでしょうか?」


「大変申し訳無いんですが…ゾルダーさんの行動は逐一モニターしてましてね。」


「え?…モニターって何ですか?」


「ああ、そうでしたねぇ。

 平たく言うとお部屋でクチにした言葉は全部覗ってました。マルモラ号の乗員の皆さまは港に着くと全員拘束ですとか。それとも機関部に細工して漂流させようとか。全部知っているんですよねぇ。まさか爆沈するとは運が良いですよねぇ。」


にこやかに語る高田の本意はどこにあるのか?ガルディシアとニッポンの交渉において、何等かの優位に立とうと?馬鹿な。無理だ。陛下の前に俺は一匹の蛆虫にも等しい存在だ。何か有利な条件を引き出そうとか、それは無理な相談だ。ゾルダーの喉はカラカラに乾き、変な汗が出てきた。高田は続けた。


「ああ、いや。別にこちらもそれは気にしてないんですよねぇ。特にこの件で我々があなたにして貰おうという事も無いんです。ただ、この国の一番偉い人と会いたいだけなのですよ。」


--

ガルディシア ゲルトベルグ城 4月19日 午前10時30分~


「緊急報告!失礼します!!

 只今湾内に来ました空飛ぶ機械より、第七艦隊所属 駆逐艦マルモラ艦長のゾルダー中佐が参ります。陛下に謁見を求めております!またニッポンという国から4名の使者が同行しております!」


「なんだと?ゾルダー中佐は我が軍の将校だな。空飛ぶ機械から、我が軍の将校が出てきたと言う事か?ニッポンという国はなんだ?誰ぞ、聞いた事があるか?」


会議室の皆は当然初めて聞く名前に当惑しつつ沈黙していた。


「誰も知らぬようだな。余も知らぬ。武装解除して、ここに連れて参れ。ゾルダー中佐もな。」


日本からの使者は、皇帝ガルディシアの謁見に臨んだ。

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