表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
43/327

1_42.洋上の苦悩-③

稚内とガルディシア間の洋上中間地点 4月19日午前8時~


「お待たせしました、マルモラ艦長ゾルダー中佐です。」


「いえいえ、それではこのボートにお乗り下さい。足元に気を付けて。」


「それにしても急な話ですな。一体どうなさいました?」


「小官は詳細を知らされておりません。機内に詳細を知る人物が居ります。その人物に、ご確認願えますでしょうか。」


「まずはあの飛行機に乗らないと分からないという事ですな。」


「そのように願います。間も無く到着します。」


黄色いゴムボートに揺られて、US-2に到着した。飛行機も勿論だが、このボートも凄い。機内に人を収容した際に、あっという間にボートが萎んだ。このボートは空気を入れて膨らませている?空気が抜かれて容積が小さくなったボートも機内に収容された。感心していると、後ろから声をかけられた。


「ようこそUS-2へ。ゾルダー艦長。」


「なっ、おま、、タナカ!!」


タナカがにこやかに立っていて、こう言い放った。


「当機は、このままガルディシアの首都ザムセンに向かいます。」


「え?ザムセン!?なんだと!???」


飛び立つUS-2をエンメルス曹長以下甲板上の艦員は見送っていた。急にブリッジに上がってきたゾルダー中佐は、艦長代理を指定し。挙句ニッポンに行く、と言い出した。あの飛行機に乗る気になったらしい。まぁ、俺達にとっちゃ好都合だ。あとはニッポンの出方だ。


突然来たあのニッポンの軍人達は、去り際に俺に何か小さな機械を渡し、最低限の使い方だけを教えてもらった。あの"すまーとふぉん"という機械とはまた別の物らしい。携帯無線機という機械で、相手が話す時は何もせず、こちらが話す時はこのボタンを押す、話し終わったらボタンを離す、それだけだった。


果たしてゾルダーが飛び立って10分程すると、無線機に耳障りなノイズが入り始めた。そのノイズは段々人の声らしき物になってきた。


「ザ…ザザザ…こ…船…しり…ザ…モラ…応答せよ!」


「お!なんか聞こえてきた!!」


「ザ…ザザ……こち…巡視…り……ザ…応答…ザザザ」


無線機の周りを皆がわいわいと囲む。


「ちょっとお前ら静かにしろ。よく聞えない。」


「ザ…こちら巡視船りしり、駆逐艦マルモラ号、応答せよ!」


「おおおお、俺達を呼んでる。すげえ!」


「ちょっとどうだっけ、話す時にはここを押す、と…こちら駆逐艦マルモラ!こちら駆逐艦マルモラ! 離す、と。」


「こちら巡視船りしり、感度良好、良く聞こえている。」


「おおお!!!」


話せた!別の船と話せた!無線機凄ぇ!!と歓声があがる。これ便利だなぁ、とエンメルスも感動する。


「駆逐艦マルモラ、停船せよ。今接弦する。」


「了解した。両弦停止!」


接弦したニッポンの巡視船りしりは、そのままマルモラに上がり込んで来た。そこで大島船長が、エンメルス曹長を探した。


「緊急の要件にて失礼します。どうも一昨日ぶりです。日本政府からの要請で、再度御目に掛かる事になりました。実の所、この船はガルディシアに戻る事は出来ません。恐らく機関に何等かの工作がしてあり、港に戻る前に動かなくなると踏んでいます。もし、ゾルダー中佐が艦に同行していた場合は、港で全員拘束される事になっていました。」


「それはニッポンの通信装置で情報を入手しているという事ですか?」


「有り体に言えばそういう事です。

 その為、日本国政府として皆さまを全員保護する事としました。ただし、この船はゾルダー中佐の目論見通り、沈めます。皆さまには巡視船の方に移って頂きます。」


「ああ、俺達は死んだ、という事にするんですね。マルモラ号沈めるのか…」


「それについては申し訳無く思います。ただ、皆さまの安全を考慮した上での判断ですのでご了承頂きたい。」


「いや、勿論了承しますよ。ところで我々はどういう立場になりますか?なんなら亡命でも一向に構わないのですが…。」


「一応、政府からの指示では保護、と命令を受けております。その後の事に関しては我々は指示を受けておりません。ただ、安心して欲しい、との伝言は受けております。」


「分かりました。まず何をしたら良いですか?」


「順次、巡視船りしりの方にお移り下さい。必要な物があれば、急いで持って来て下さい。」


30分後、駆逐艦マルモラ号は巡視船りしりの30mm単装機銃によって海の藻屑となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ