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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
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1_41.洋上の苦悩-②

稚内とガルディシア間の洋上中間地点 4月19日午前7時半~


駆逐艦マルモラ甲板上では、乗組員が総出でUS-2を見に来ていた。ニッポンの飛行機がやってきた。しかも海上に止まってる!そして飛行機からボートが降ろされ、艦に横付けされているのだ。何から何まで驚きだ。そのUS-2からやって来たボート上の鐘崎3佐にはもう一つ伝言があった。


「それと、エンメルス曹長という方はいらっしゃいますか?」


「今、ブリッジに上がったのがエンメルス曹長です。呼び戻して参りますので、今暫くお待ちください。」


ブリッジに甲板員が上がってきた。


「エンメルス曹長に伝言。ニッポンのカネザキ3等海佐がお話があるそうです。」

 

「なんだ?俺にか?今行く。ゾルダー中佐、ニッポンへの返答はどうしますか?」


「…少し後に返答すると伝えてくれ。」


ゾルダーは逡巡していた。


艦をそのまま部下に任す?有り得ない。

こいつらは港に着いたその足で、反政府組織に駆け込むだろう。そして独自にニッポンと交渉を持とうとするだろう。もし仮に、ニッポンがこの連中に肩入れしよう物なら…この圧倒的な科学力を前に、ガルディシアは自分達が滅ぼした連中と同じ目に会う事請け合いだ。良くて炭鉱送り、最悪銃殺だ。が故に、こいつらの口封じは絶対だ。…最悪、ここで自沈するか?いや、ニッポンの前では不味い。

 

それにニッポンが俺に話があるという件。一体何の事なんだ?何か隠していた事がバレた?

艦隊の事か?これからの戦争の件か?いや、そんな兆候は無かった筈だ。なんだ。一体何の件なんだ…?


そうだ!!

秘かに機関部をぶっ壊しておこう。エウグストの港までは、あと300km程ある。50kmも移動した辺りで機関が壊れたら漂流するしかない。この辺りの海流だと、恐らく中央ロドリアに向かって流れる。永遠にこいつらは漂流を続ける筈だ。そうだ、それで行こう。


ゾルダーが秘かに今後の行動に決意を決めた頃…

甲板にエンメルス曹長が降りて来て、鐘崎3佐に話しかけた。


「自分がエンメルス曹長です。何か伝言があるとか?」


「先程はどうも。日本の高田より伝言がありました。"反乱は今暫く待て。ゾルダー中佐を遠ざける"との事です。ご理解頂けましたでしょうか?」


「え?!?」


瞬間、エンメルスは思考と息が止まった。

何故!…何故ニッポンがそれを知っている??…もしかしてあの通信機械の類による物か?そうだ、あれ程通信技術が発達しているのだ。俺達が気が付かない通信設備があっても可笑しくない。それにしても部屋の中であれ程の小声で話していた事がか?一体どれ程の性能なんだ…しかもニッポンは全部それと知っていて動いているのか?知った上でのこの対応なのか…なんてこった…辛うじてエンメルスは、鐘崎3佐に答えた。


「わ…わかりました…タカダさんに宜しくお伝えください。了解した、と。」


そしてエンメルスは直ぐに立ち直った。

逆に考えるんだ、どうやら俺達全滅のルートは無くなったぞ。そうだ。ニッポンは反乱せずにゾルダーと引き離すと言っている。という事は、ゾルダーをニッポンに連れ戻して何かをする。俺達は…この後見逃してくれるのかどうなのか?


…このまま艦を沈めるような事はニッポンはしないだろう。ニッポンにとってメリットって何だ?食料や資源を購入する件はかなり前のめりだった。とすると、ニッポンはガルディシアと交渉に価値を見出している。ガルディシアとの交渉…


ああ、そうか!

俺達が反乱を起こすと、ガルディシアとの交渉が遅くなる。情報を本国に伝えるべきゾルダーが俺達に殺されるからだ。という事は、今ニッポンにとって大切なのはゾルダーか。それなら何故ニッポンに居る間に、俺達を拘束しなかった?昨晩の中で反乱の情報は知っていた筈だ。艦に戻る前にどんな対処でも可能だったのに、しなかった。ニッポンの考えている事が分からん…


どうだろう。

タカダに亡命希望と言ってみるか…


エンメルスの中で結論は出なかった。

そして、ちょうどその頃、ゾルダー中佐は機関室に居た。ほぼ総出で甲板上に乗組員が居る今、機関室にはごく少数の当直しか残っていない。何かをするなら、今がチャンスだった。

明けましておめでとうございます。

今年も宜しくお願いいたします。

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