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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
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1_35.一手、足りない。

ヴォートラン王国 帝国歴227年4月16日 午後6時


「やはりガルディシアは、エステリアを攻めるか…。」


「はっ。現在の情報を総合しますと、ガルディシアは北部方面のグロースベルゲン公爵指揮下の第四艦隊及び、南部のアルスフェルト伯爵貴下第七艦隊の2艦隊による北ロドリア海からデール海峡に至る海域で哨戒行動という名の示威行動を行う、と見ています。」


「何故、ガルディシア西部方面軍の第五艦隊は動かないのかね?」


「第五艦隊は西部の港町マルソーを拠点としており、艦隊司令はエウグスト出身のル・シュテル伯爵で、旧エウグスト海軍が主体です。恐らくはそれが理由では無いか、と。」


「最悪、裏切る。良くて役に立たないだろう、と?」


「そう判断している、と思います。もしくは第五艦隊に関しては作戦予備として控えているのかもしれません。何れ会戦したとしても作戦海域に間に合わないので、この艦隊は考えなくても良いかと思います。問題は、この行動の主目的がどこにあるのか?という事です。」


「ふむ、どう見る?カヴァルビオ大佐?」


「今回のガルディシア第四、第七艦隊は陽動です。真の目的はエステリア上陸にあると思っています。ただ、上陸地点がどこになるのか…普通に考えて要塞地帯に上陸は考えられません。戦艦対要塞は、圧倒的に要塞が有利です。その為、要塞地帯とは別のどこかに奇襲上陸が考えられます。」


「ここまでどうだ。オルビエト?」


王国軍作戦会議室には、ヴォートラン王国国弟フィリポと海軍上級大将オルビエト、そして作戦将校のカヴァルビオが詰めていた。王弟フィリポに問われて上級大将オルビエトが答える。


「そうですね…カヴァルビオと概ね同じ考えです。ただ奇襲上陸の場所に関しては、恐らく要塞地帯の下側、エステリア南西海岸でしょう。ちょうどロトヴァーン侯爵指揮下のガルディシア第二艦隊が居ます。要塞を避けて、艦隊の援護を受けつつ上陸、という流れでしょうな。」


「そこまでは手を伸ばせないな。分かっていても我々の相手は敵の陽動艦隊か…」


「敵第四、第七艦隊を可及的速やかに撃滅し、以てデール海峡を越えて敵第二艦隊及び上陸部隊を叩く、というのが理想でしょうな。」


「無理だな…」


どう考えても駒が足りない。

パーフェクトで陽動艦隊を叩き、無傷のままデール海峡を越えて敵第二艦隊と対峙しこれを破り、最後に上陸部隊を殲滅する。最初の段階で陽動艦隊と戦って無傷で終わる訳が無い。しかも艦隊戦が行われている頃には既に上陸も始まっているだろう。敵の上陸を阻害する一手分の駒

が無い。内陸部にはエステリアの重騎擲弾兵連隊が守備しているが、その守備範囲は広大だ。駆け付けた時には橋頭保が築かれている。こちらから守備用の陸軍を出す余裕も船も無い。フィリポは艦隊戦以降に恐らく訪れる展開に暗い気持ちになった。


だが、エステリアを支援しなければ、ガルディシアの狼が次に狙うのは確実にヴォートランなのだ。ここで少しでも敵戦力を削っておかなければならないのだ…


--

パレスホテル東京 午後6時~


川端外務大臣は5時半にはパレスホテル入りをしていた。その後、15分程度二階堂と轟から本日のレクチャーを受けていた。


正直、異世界の住人と接触するのは初めてなのだが、そもそも帝国主義を掲げる国家を相手にするのも初めてだ。おまけに大陸統一を成し得たのが僅か5年前だと言う…危険な国家だと思って接触した方が面倒が起きないだろうとは思うが…


だが我々がこの異世界で暮らして行くには余りにも資源が足りない。必要な資源を確保する為には、下げたくない頭も下げる必要がある。その為の第一歩としての今回の意見交流会だ。細かい話は轟君や二階堂君が居るから大丈夫だろうが…


満面の作り笑顔で交流会場のドアを開けた。


「私、外務大臣の川端と申します。

 ガルディシアの皆さま、ようこそ日本にいらっしゃいました。本日、日本とガルディシア間初の開催となる意見交流会を歓迎すると共に、今日この場で挨拶することが出来、大変光栄に思います。」


日本とガルディシアの公的な話し合いが始まったが、ガルディシア側は軍人であり、正確には外交担当官では無い事から意見交流会という形でお互いに何も責任が発生しない形としたのである。しかしながら、この挨拶後はゾルダー中佐と川端外相の腹の探り合いが展開したのだった。


そんな中、トア伍長が腹痛を訴え中座した。

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