表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
35/327

1_34.陸上戦艦製造遅延中

ガルディシア帝国東部 ティアーナ港 帝国歴227年4月16日 午後5時


ここティアーナ港は、旧エウグスト公国領東部にある港だ。

デール海峡のすぐ下に位置し、かつてエストニア王国との交易を行っていた頃には非常に賑わった港であった。しかし、今はガルディシア海軍の新兵器である陸上戦艦を作り、そして送り出す工廠地となっていた。ティアーナから40km程南に下ると、ガルディシア帝国第2艦隊の駐留拠点

であるムルソー港がある。この艦隊の司令官ロトヴァーン侯爵は、現在ティアーナ港で陸上戦艦の製造及び配置の指揮を取っていた。そのロトヴァーンの元に報告が入る。


「提督、本日の製造分が終了しました。予定4隻完成でしたが、2隻完成、2隻は進捗60%のままです。その他、製造着手8隻分、木製部分の遅延はありません。進捗60%の理由は蒸気ボイラーの到着が遅れて、未搭載のままです。」


「今までに完成したのは85隻。予定は100隻だ。作戦予定は2週間後の4月30日、残り14日はギリギリの線だな。しかし最近遅延が激しいな…主な理由はボイラーの未着か?」


「はい、本国からの輸送は陸路なのですが…数日前から本国から旧エウグスト領に入った山岳地辺りで、反帝国分子が出没しております。それによる被害が馬鹿にならず、大きく迂回して輸送を行い始めた為に、この経路の主要な輸送品であるボイラーの到着が遅れています。ここティアーナでそれが製造出来れば一番良いのですが…」


「木製の物はここで製造可能だが、金属加工は無理だな。反帝国分子に関しては、早急に陸軍に応援を依頼する。」


「やはり海路での輸送は無理でありますか?」


「無理だ。陸上戦艦は秘匿兵器だ。ここで作っているのが分かれば、直ぐにエステリアからの妨害が入るだろう。ましてや輸送路を叩くのは奴らにとっては至極簡単だ。いくらこちらの第2艦隊が居るとはいえ全ての輸送路をガード出来ない。ともあれ明日から、足りない部品以外の工程を進めてくれ。」


「はっ、了解いたしました!」


エステリア王国侵攻作戦には二つの作戦軸がある。

一つは第四、第七艦隊によるヴォートラン海軍とエステリア海軍の北部への拘束と誘引。これは第七艦隊を囮にして北部まで敵艦隊を誘引し、艦隊主力である第四艦隊にて撃滅するという物。可能であれば、敵海軍の艦隊合流前に各個撃破する事が望ましい。最悪でも北部方面に拘束し

デール海峡方面に向かわせない、というのが目的である。


もう一つは、エステリア西部海岸の要塞陣地射程外から第二艦隊による砲撃で要塞を無力化した後、陸上戦艦を海岸に着上陸する、という物。既に砲の性能はガルディシアが上回っており、要塞砲の射程外から砲撃を行う事によって、要塞陣地を無力化可能と判断している。


その後、海岸を守備する部隊が上陸部隊を攻撃してくるだろうが、その守備部隊は事前の調査で極少数しか存在しない事が分かっている。しかし、この守備部隊と、エステリア海軍に挟み撃ちになるのは避けたい。第二艦隊も海岸の敵要塞と戦いつつ、敵艦隊とも戦うには荷が重い。つまりは、ヴォートランとエステリアの艦隊をデール海峡に入れない事が、作戦の要となっていた。


その為、第四、第七艦隊は派手に情報を流して動いていたが、第二艦隊はムルソーの港に引き篭もっていた。そして物流を全て陸路に切り替え製造の動きを悟られないようにしていた。


--

パレスホテル東京 午後5時~


「おい、トア!トア!ちょっとこっち来い!」


トイレに行こうとしたトア伍長を呼ぶ声がする。物陰に居たのはエンメルス曹長だ。


「あ、曹長どうしたんですか?」


「あのな。ニッポンってどう思う?」


「いや技術凄いすね。ガルディシアを遥かにぶっちぎってますよ。空飛ぶとか、超早い車とか、遠くで顔見てお互い話せる電信とか。おまけに飯は美味いし、酒も美味いし、完璧ってこういう事すか?」


「おう、そこよ。ガルディシアをぶっちぎってる。そこでだよ。このニッポンの技術をガルディシアよりも先に入手して旧エウグストの分離独立派に流したら…どうなるだろうな?」


「え、エンメルス曹長マジっすか??てっきり中佐と仲良いからアッチ側かと思ってました。」


「そこはお前、大人の処世術よ。しかしな、何も笑顔で侵略者共に手を振っているのは、それなりの理由がある訳よ。俺達はガルディシアに攻め滅ぼされた。だが、国が滅びても俺達が居る。いつの日か再興をと密かに思っているのはそんなに少ない数じゃねえ。ただ、俺達が国を取り戻す為の蜂起を行うにはそれなりの準備が必要だった。ところが、だ。今、目の前にニッポンが居る訳よ。」


「あの連射の銃一つで、1個軍団滅ぼせますからね…逆にあの銃で撃たれる事考えたら…2秒で降伏するっす。」


「だろ。で、相談だ。

 お前、これからの会議中に腹が痛いって抜けろ。抜けた先でタカダに接触しろ。そしてガルディシアのネガティブな情報を流せ。タカダはかなり曲者だ。恐らく諜報関連の奴だと思う。この後の会議は、恐らく両方とも良い事しか言わんだろう。だが、ネガティブ情報を流せばニッポンは必ず調査する。調査の結果がどのような事になっても、ガルディシアへニッポンの武器が渡るタイミングは遅くなる筈だ。」


「了解しました。ネガティブ情報…ネガティブ。何、話せば…ああ、俺達が負けた時の事、負けた後の事を話せば良いっすね。」


「そうだ。頼む。俺はゾルダー中佐からは離れられんのだ。くれぐれも内密にな。ゾルダーにバレるなよ。」


「了解っす。」


二人はミーティングルームに戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ