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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第四章 ガルディシア落日編】
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4_81.窮地に陥る反乱軍

司令部の建物に突入した帝国軍連射銃大隊は、入口周辺を反乱軍レティシア大隊に攻撃された為、建物から出られなくなり、そして突入していた部隊の先端は反乱軍のレティシア少佐とクルト中尉を前にして完全に動きが止まっていた。そこに反対側から第三勢力のエンメルス率いる第一レイヤー部隊が突入してきたのだ。


「くそっ、後ろから新手が現れた! 応戦しろ!!」


「どうして奥に進めないんだ!逃げようが無いぞ!!」


「この奥に居る反乱軍のレティシア少佐に銃を奪われているんだ!」


「なんだと? その迂闊な奴はどこのどいつだ!?」


「第二中隊のテーパー大尉です、グラート曹長!」


「なんと……次席は誰だ!?」


「ペーターゼン中尉ですが……最前列で戦ってます!」


内部に突入した帝国軍連射銃大隊の中で最も階級が上の者が先頭切って突入した挙句に斬り倒され銃を奪われていたのだ。しかもレティシア少佐が潜む通路の奥とは反対側から新たな敵の出現に帝国軍はパニックに陥った。次席の中尉は後方からは届かない場所に居た。止むを得ず後列の帝国軍はレイヤー部隊と応戦したが、彼等レイヤー部隊との火力の差に圧倒された。


「なっ、なんだあの砲は! 一人で撃てる火力じゃないぞ!! 何人やられた?!」」


「最後列の5人程が遮蔽物ごと吹き飛ばされました、生死不明です!」


「グラート曹長、奴等何者ですか?」


「知らん!だが、反乱軍ではあるまい。あのような装備は見た事も無いぞ。」


「噂に聞くエウグストの秘密部隊じゃないですか?」


「なんだそれは? 詳しく話せ!」


「エウグスト解放戦線の秘匿部隊でニッポン軍と同等の装備に身を固めたエウグスト人で構成された部隊だそうです。あの反乱軍のレティシア少佐もあの連中に捕まったとか……」


「道理でやたらと火力がでかい訳だ。この連中を相手にしていると全滅するぞ、一旦外に出られんか?」


「駄目です、正面入り口は反乱軍に集中攻撃されてます。連射銃大隊本隊が正面入り口から後退してます!」


「外には出られん、後ろにも下がれん、あとは前に進むだけだ。先にレティシア少佐を何とかせんと!」


「し、しかし……」


そう、通路は連射銃大隊で一杯だった。

後方から攻撃された事により、通路に隣接する各部屋に逃げ射撃から大多数は助かってはいたが、そこから反撃に出ようにも、余りにも後方からの攻撃が強すぎて出るに出られない。そして次第に通路に居た兵はレイヤー部隊によって排除され、残っているのはレティシア少佐と対峙している前列と、部屋に逃げ込んだ数十人にまで撃ち減らされた。通路には4つの部屋があり、後方の敵が居る一番近い部屋は既に制圧されていた。残る3つの部屋のうち一番奥にグラート曹長は陣取った。グラート曹長の部屋を抜けると、曲がり角に前列のペーターゼン中尉の数人がレティシア少佐と対峙している。少し遠い部屋で爆発音が響き、少しの銃撃の後に敵兵が叫ぶ声が聞こえる。そして隣の部屋から再度の爆発音が響き、やはり少しの銃撃音がした後に、敵兵が叫んでいた。


「おい、クリアってどういう意味だ?」


「知らんが、次はどうやら俺達の番だな……」


「おい、皆一斉にドア目掛けて狙いを付けろ!直ぐに来るぞ!」


果たしてグラート曹長達はドアが開いた瞬間にありったけの弾をドアに向かって撃ち込んだ。だが、ドアの向こうには何も居らず、代りに何本かの手が現れてこちらに向かって何かを複数個放り投げた。グラート曹長が投げ込まれた物が手榴弾と認識したのと、投げられた手榴弾が爆発したのは同じタイミングだった。グラート曹長は閃光の中で意識を手放した。


「ちゅ、中尉、後方から爆発音が近づいて来ています。」


「だから何だ! 後方には100名からの連射銃大隊が居る。どうせ途中で制圧しているだろう。おい、誰か牽制しろ!誰も手榴弾を持っていないのか!」


ペーターゼン中尉は、迫りくる聞きなれない爆発音と射撃音に不安が高まっていたが、部下には不安な様子を見せられない。だが、前面の敵レティシア少佐を倒せる気がしない。後方には100人近い戦力がある。一斉に突っ込めばなんとかなると思ってはいたが、レティシア少佐の手には奪われた連射銃がある。それにより、このバリケードの向こうには確実な死がある。そう思うと前に進む気持ちが雲霧四散するペーターゼン中尉だったが、狭い通路に全員を突入させようと意を決して部下を集めた瞬間に、後方からレイヤー部隊の攻撃を受けた。ペーターゼン中尉は反撃しようと振り向いた瞬間に銃撃を受け昏倒した。


「おや、何やらあの連中静かになりましたね。」


「そうね……一体何者かしら?」


レティシア少佐は、近づく何者かの正体は分からなかったけれど、通路に溢れる帝国軍兵士を排除しながら進んできた事に、恐らく味方では無い事を直感していた。その時、曲がり角の向こうからレティシア少佐に対して声を掛けて来た。


「おい、そこに潜んでいるあんたは反乱軍のレティシア少佐か?」


「そういうアナタは誰かしら?」


「エウグストのエンメルスだ。……何時ぞやぶりだが感動の再会でも無いな。」


「ああ、あの時のね! 決着を付けに来たのかしら?」


「出来ればアンタと戦いたく無いんだが、降伏しないか?」


「そうね。寧ろ私はあなたと再戦する方が素敵だわ。」


「やっぱり降伏は無し、か…銃か?剣か?」


「剣が良いわね。」


「ちょ、大尉! なんでですか?」


「なんとなくな。俺が死んだらロタール少尉、お前が指揮をとれ。俺が負けた時点でロケット砲をここにぶち込め。ここを突破したら後は皇帝守備の兵位しか居ない筈だ。頼んだぞ。」


そう言うと、エンメルス大尉は銃を置くと抜刀してレティシア少佐の方に進んで行った。



左翼戦線では、グラーフェン中佐に率いられた反帝国組織8,000の戦力が、ザムセンの門に取り付こうとしていた反乱軍第八歩兵師団を、徹底的に攻撃し続け遂には第八歩兵師団は損害に耐えられない状況となっていた。リンベルク少将は、散発的な攻撃を止め、全部隊によるザムセンの門側面に対する総攻撃を企画し、戦力を集中させていた。だが、それを上空から監視していた偵察機の情報により、兵力を集中していた場所を迫撃砲によって徹底的に砲撃し続けたのだ。これにより第八歩兵師団はほぼ壊滅し、敗残兵と共にリンベルク少将は陣を引き払って後退した。


中央戦線でロトヴァーン艦隊からの砲撃によって反乱軍第九歩兵師団は大混乱に陥っていたが、砲撃範囲を抜けた兵を集めて何とか立て直しを図っていたオームゼン少将の所に絶望的な報告がやってきた。


「ロトヴァーン艦隊が接岸、兵を降ろしています!!」


「なんだと? も、もう一度言え! それと規模はどの位だ!?」


「ロトヴァーンの輸送船から相当数の兵が降りてます。完全武装しており、見慣れぬ連射銃を全員が装備しています! 規模は恐らく…数千人規模です!」


「なんと…数千人だと……? なんとか下船を阻止出来んのか?」


「無理です! こちらの射程が届く範囲では、艦砲射撃が飛んできます!」


「ロトヴァーンめ、これを狙っておったか。第九歩兵師団の集合急げ! 何とかここで食い止めるぞ! 何れ海兵陸戦隊も来る。そうなれば連中を挟撃可能な筈だ!」


オームゼン少将の狙いとしては正しかったが、その宛にしていた海兵陸戦隊は既に海岸線を前進中にロトヴァーン艦隊からの砲撃によって壊滅し、残った兵も潰走状態に陥っていた。オームゼン少将は必ず来ると信じてザムセン西を海岸から来るロトヴァーン艦隊輸送船からの兵を食い止めようと必至に戦った。だが、この輸送船から降りた兵達もまたエウグスト解放軍と同等の装備をしており、数の上では上回っていた筈の第九歩兵師団は次第に追い詰められていった。


反乱軍司令部では打って変って凶報が相次いでいた。


「第八歩兵師団、ザムセンの門手前で壊滅、リンベルク少将は後退中!」


「な、なに? いや待て!リンベルグの第八歩兵師団は潰走した帝国軍第二歩兵師団を追撃中では無かったか?」


「第二歩兵師団は敗走中、追撃中にザムセンの門にて新手の敵と交戦、敵の火力に圧倒され第八歩兵師団壊滅、との事です!」


「その新手の敵とは一体なんだ!?」


「正体不明であります。ただ、装備優秀な平服を着た者達、との報告があります。」


「一体なんだ、それは?」


「第九歩兵師団、ロトヴァーン艦隊からの砲撃を受け相当な被害を受けつつ前進した結果、ロトヴァーン艦隊の輸送船から下船した新手の兵と交戦、戦線を支えきれずに後退中!」


「ここも新たな敵か!一体何者だ!!もしやエウグストが…?」


「どうする、ザームセン公爵?」


「どうもこうも無いわ、ハルメルよ。挙兵したからには栄光か死か、よ。直ちにその新たな敵とやらを特定せよ。必ずや帝国を掌握するぞ。新たな敵も何もレティシアが皇帝を捕えれば逆転も可能だ!」


勝利を確信していた時にはレティシアの動向を気にもしなかったザームセン公爵は今や自分の勝利の可能性が、レティシアの行動如何に掛かっている事に気が付いては居なかった。


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― 新着の感想 ―
[一言] レティシア少佐、恐ろしいレベルで強すぎやしませんかねぇ…しかもレバーアクション式とおぼしきライフル銃で無双とか…誰か特殊作戦群と第一空挺団連れてこい(白目
2021/05/27 23:21 退会済み
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