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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第四章 ガルディシア落日編】
318/327

4_78.第三勢力戦闘準備完了

どうやら間違って完結済みを押してしまっていた模様です。

まだ続きます。トホホホホ…

ザムセンの門には俄かに膨大な人が集まりつつあった。そもそもザムセンの門に向かっていたのは当初第三勢力の反帝国組織だけだったのだが、ザムセン市街に反乱軍の浸透が進むにつれ、避難民が彼等に同行し始めたのだ。だが、反帝国組織も彼等を無碍に扱わず、攻撃に合わないようになるべく通路の西側を歩かせた。そこにエウルレン街道終点たるザムセンの門手前の転回場に、日本の高田手配による武器弾薬を満載したトラックが到着した。状況を知っているグラーフェン中佐は、直ぐに転回場に反帝国組織の兵を誘導し、次々と銃を渡していった。この光景を捕虜として反帝国組織のベルート大尉の元に連れてこられていた帝国軍のエマーゼン中尉は、茫然としながら身近な兵に聞いた。


「あ、あんた達、一体その装備は……一体どこから……?」


「ああ、これか?アルスフェルト伯爵の手配で、エウグスト解放軍の武器を融通して貰ったって話だ。お前等が使っているパチモンの弾じゃない、正式な弾を使用した連射銃だ。」


「つかぬ事を聞く。一体その銃でどこの誰と戦うんだ……?」


「先ずは迫りくる反乱軍だな。そして……こんな体制を打破する。」


「こんな体制って……まさか、帝国を倒すという事か?」


「ああ、ここに集まっている連中はその積もりだな。勿論俺もそうだが。」


「一体どんな理由でだ。我々ガルディシアは漸く全土を統一したというのに。」


「結局、全土を統一しても戦争は終わらん。次から次へと新しい敵を求めて戦いが続く。この戦争は一体何時終わるんだ?それに軍人にならなきゃ、この国ではマトモにも扱われない。隣の国を見てみろ。」


エマーゼン中尉は隣の国と言われても、エステリア王国かヴォートラン王国しか思いつかない。だが、確かにこれらの国をもし仮に打倒したとして、ガルディシア帝国は歩みを止め内政に専念するだろうか? 恐らくはエステリアとヴォートランを占領し収奪が消化し終えた後は、次なる戦争が待っているのだろう。そう思う事に全く疑問の余地も無い。だが、隣の国を見てみろって他に見るべき何かが……?


「それはニッポンの事か?」


「そうだ。あれだけの科学技術が発達し、我等を数回滅ぼす程の能力を持っているが、悪戯に力を振り回さず極力話し合いで平和的解決を行おうとしている。だが、こちらが一線を超えた場合には激烈な反応を返してくるが、それは何れもこちらが一線を超えた場合だけだ。それに、ニッポンがテコ入れしたマルソーやエウルレンの発展具合を見たか?戦争せんでもあれだけ発展するんだよ。わざわざ殺して回らなくても、だ。」


ガルディシアは敵国を呑み込みその経済活動を自らの国に組み込む際には収奪を行った。その為、ガルディシアは収奪による利益が擦り減った辺りで新しい戦争を起こしていた。その繰り返しで国家を維持しているなら、猶更に新しい戦争を欲する事だろう。だが、穏当な経済的取引によって収奪を行わなくても双方にとって有益な状況を構築する事が出来るのだ。それは日本が過去70年も戦争を行う事無く繁栄してきた事実が証明しているのだ。といっても、これはグラーフェン中佐から聞いた話の受け売りだが、とベルート大尉は密かに思った。


「な、なあ…もっと詳しく教えてくれないか? 帝国をどうする気なんだ? 帝国が無くなったら、俺達は何をすりゃ良いんだ? 帝国が無くなってもあんた達のその反帝国組織とやらが新しく帝国になるのか? 俺達はこれから一体どうなるんだ?」


「俺達が目指しているのは、俺達民衆が国家の代表を選ぶ事が可能な国だ。だが、それには国民の教育が必要なんだ。国民が誰を選ぶのが最も良いのか自ら判断出来る教育をな。こいつは何年もかかる事だろう。だが、何年かかってもやるべきな事だよ。それに教育を行う事によって、より良い物を生む事が教育を受けた世代から出てくるだろうさ。だが、そうなる為には教育を何年も何十年も続けて行かなくちゃならん。今のガルディシアは、皇帝が戦うといったら何が何でも実行せにゃならんだろ? それに恐らくザームセン公爵が実権を握ったとしても、恐らくはドラクスルの焼き直しになるだろうな。そいつは保障する。」


エマーゼン中尉は、確かに帝国が日本と関わって以降の、一般市民の生活レベルが向上しつつある事は理解していた。何せ、日本の投資による火力発電所が建設されて以降、電気がザムセン市に著しい環境の向上を推進していた。何せ、夜まで明るく、何時でも冷えた飲み物があり、場合によっては電子レンジを持つ家庭も出てきているのだ。これは今迄の戦争による勝利よりも大幅に帝国の臣民達にとって利益となる事だった。そしてそれは戦争によって齎された物ではない。そして、この目の前に居る反帝国組織とやらのベルート大尉は、それが教育によって得る事が出来ると言っているのだ。


「なあ……俺達もそっちに参加したいといったらどうする?」


「ああ、お前等は捕虜扱いだから来たくても無理だ。暫くは様子見だな。銃を渡した途端にこっちを撃たれても困る。だが、この戦いが終了した後ではそれも叶うかもしれん。その辺りはゾルダー少将に確認をとる事になるだろうが。」


「ぞ、ゾルダー少将だって!? もしかして彼も君達反帝国組織の人なのか?!」


「ああ、言っちゃ不味かったかな。でも帝国は今日で終わるから大丈夫か。」


エマーゼン中尉は戦慄した。ベルート大尉は完全に自分達の勝利を疑っていない。そして次々と降ろされる銃器を受け取る元第七艦隊の海兵達や、一見ならず者のように見える者達が受け取る装備を見て、彼等の自信に満ちた表情がこれらの装備に裏付けされ、来るべき新しい体制の国家に希望を抱きつつ旺盛な戦意に溢れる状態である事を知った。


「帝国は……終わるのか……そうか……」


「ああ、だが気を落とすなよ。俺達は必ずより良い国を作る。今日のお前さんは俺達の捕虜だが、将来のお前さんは別の何かを担う人になっているかもしれん。今日の所は捕虜として大人しくしていてくれ。だが、俺達の新しい国に協力する気になったら、早めに申し出てくれ。ああ、それと捕虜としての扱いの件だが、申し訳無いんだが今日の所は、そこのザムセンの門裏手にある収監所に入っていてくれ。おい、誰か彼等を案内してくれ。捕虜として丁寧に扱ってくれ。」


「あ?……ああ……了解した、大人しく収監されよう。」


エマーゼン中尉が見ていた反帝国組織とは、旺盛な士気と十分な装備、しかも彼等の装備は連射銃だけに留まっていなかった。エウルレンで生産された迫撃砲や使い捨てのロケット砲の類も入手していたのだ。つまり個人の火力としても圧倒的な能力を持つ第三勢力が、ザムセンの門周辺に構築されつつあるのを直接目視していたのだ。足りないのは人員だけだろうが、その足りない人員を補って有り余る火力を有する何千人かの集団。そんな物が連戦で疲れ果てた敵軍の前に突然現れる事を思うと、エマーゼン中尉は反乱軍に同情した。そうと知らないリンベルク少将率いる反乱軍第八歩兵師団は、敗走しつつあるように見える帝国軍第二歩兵師団を追撃してザムセンの門に近づきつつあった。



「ザムセン市街の55%を反乱軍が掌握。帝国軍はザムセン西に後退して再編中。」


「ふーむ……そろそろロトヴァーンさんに再度頑張って頂かないとなりませんね。ザムセン西の陸軍司令部とザムセン市街地の間には、以前のザムセン戦で廃墟となっている場所がある筈です。恐らく反乱軍はその廃墟のゾーンを行かないと司令部には行けない筈ですよね。」


「なるほど……ル・シュテル伯爵。ロトヴァーンに廃墟となった場所に侵入した反乱軍を叩くように伝えよう。」


「その積もりで既にロトヴァーンの艦隊はザムセンの港に入っている。何時でも砲撃は可能だ。」


「反乱軍がそこを通るまでは砲撃しないように。帝国軍が被害を受けるだけでなく、恐らく反乱軍は警戒して後退してしまう。引けないタイミングで射撃が望ましいと思いますね。」


「ああ、そうだ。タカダさんの言う通りだ。それとザムセンの門の動きはどうなんだろう?無事に、アルスフェルト伯爵はザムセンの門に行けたんだろうか?」


「今の所、彼からは連絡は無いがマーカーはザムセンの門を示している。武器やら人員やらの整理でそれどころじゃ無いんだろう。それとエンメルス大尉の第一レイヤー部隊もザムセンの門に入った。今、武器の引き渡しが終わった後で、攻撃に加わる事が可能となる。」


「概ね、作戦通りって所ですね。あとは介入のタイミングですが、恐らく戦線左翼のザムセンの門が最初の衝突になるでしょう。そうなれば、ザムセン市街を掌握しつつある反乱軍の側面から、ロトヴァーンの艦隊による艦砲射撃と、輸送船の5000の兵をザムセン市街に突入、という流れになりますね。」


「ん?緊急通信です。ザムセンに潜入中のランバート准尉からの報告です。帝国軍司令部に反乱軍侵入、侵入者はレティシア少佐とクルト中尉、司令部の外では帝国軍連射銃大隊とレティシア大隊が交戦中。帝国軍の救援部隊は未だ到着していない模様。」


「そりゃ不味いな……ザムセンの門に居る第一レイヤー部隊を急行させましょう。ここで、反乱軍にドラクスルを捕縛されると計画を修正しなきゃなりませんし、ましてや殺害でもされた日にゃ。」


「そうですね、タカダさん。レイヤー部隊の指揮は頼みます。」


そして数分後には最後尾のトラックから機材を降ろしたエンメルス大尉以下第一レイヤー部隊が装備を整えて出撃体勢を取っていた。そして道なき道をオフロードバイクに乗って出撃していった。

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