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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第四章 ガルディシア落日編】
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67.第三勢力の介入タイミング

「うーん、これは困りましたねぇ……」


「そうですね、タカダさん。まさか第三艦隊があそこまで粘るとは。それにザムセンを砲撃しているあの砲艦も厄介ですよ。一部撃沈された様ですが、それでも数隻残っているだけで、あの射程範囲内は反乱軍が完全に掌握している状況ですね。」


「それも困るんですよね。それにしてもロトヴァーンさんの第二艦隊に被害が出たのが大きいですね。彼の艦隊は、この後にあの砲艦を片づけて貰いたかったんですが。ちょっとゾルダーさんと話しますね。」


ヴァント軍港沖の戦いで、反乱軍第三艦隊は行動不能に陥って無力化には成功した。だが、反乱軍第三艦隊はロトヴァーンの第二艦隊に対して結構なダメージを与えていたのだ。特に装甲艦と駆逐艦を1隻づつ沈められ、ロトヴァーンの旗艦ブーヘンベルグの前部砲塔2基が破壊されてしまっていた。


「ゾルダーさん、タカダです。そちらの状況は如何ですか?」


「ああ、今結構な数がムルソー港に集まっている。総兵力は5,000程だ。武器も受け取った。手配感謝する、タカダさん。」


「ああ、その辺りの手配のお礼はル・シュテル伯爵にお願いしますね。で、早速用件なんですが、反乱軍第三艦隊の無力化には成功しましたが、ロトヴァーンさんの艦隊にも被害が出ました。で、直ぐにムルソー港に残る全ての艦艇に集めた兵と武器を乗せてザムセンに向かって欲しいんですよ。」


「ん?計画ではもう少し後か、と思ったんだが…」


「そうですね。以外に反乱軍が予想以上に頑張っているのと、帝国第一軍自体が弱体化しているというのが理由ですかね。ただ、帝国第一軍の本命がこれから出てくるでしょうから、これから膠着状態になるとは思うんですよ。そこで再度のロトヴァーンさんの出番です、と言いたかったんですが。」


「ロトヴァーン伯爵の第二艦隊に被害が出た事で、実行し辛い状況となったと?」


「そうなんですよね。で、今中央ザムセンを攻撃する為に反乱軍第三艦隊残余の砲艦数隻が、ザムセン第二防衛線を攻撃しています。これを押さえたい。という事で、ムルソーからの応援が欲しいのです。ああ、それとアルスフェルト伯爵の準備は如何ですか?」


「なるほどね、了解した。直ぐに出港しよう。実の所、既に積込みも終わっているので出撃命令待ちの状態だったんだよ、タカダさん。それとアルスフェルト伯爵は、我々の武器待ちでザムセン市街の方々に隠れている。彼等への武器引き渡し方法を何か考えなければならないな。」


「ああ、それなら日本から来た機材保管用の倉庫がザムセン港にあります。ここは警備が皇帝直轄で行っていた筈ですが、そこを使いましょう。場所は確かゾルダーさんご存知ですよね?」


「ああ、分かった。あちらの指揮はグラーフェン中佐が行っているので彼に連絡しておく。グラーフェンもあの倉庫は知っている。ちなみに武器運搬には例のニッポン製の輸送船を使っても良いのかな?」


「寧ろその船を使かわないと、ザムセン港には入れないと思いますよ。というか、疑われずにザムセン港に入る為にはあの輸送船じゃないと行けないでしょう。倉庫のある場所は指定の係留場所の先なので、そこも問題無く行けると思います。必要な書類は全て輸送船に乗せてありますので、普通の荷揚げを装えば大丈夫ですよ。」


「把握した。それでは直ぐに出港する様手配する。それではまた。」


アルスフェルト伯爵を首魁とする第三勢力たる反帝国組織は、ル・シュテル伯爵のエウグスト解放軍と共同で当初の予定通り、帝国軍と反乱軍との戦いで終盤に介入する為に戦力を集めていた。だが、介入するタイミングとしては両軍が疲弊しきった状態で戦力を双方共にすり減らした状況が望ましい。どちらか一方が圧倒的に勝つような状況にならないように、陰に陽に両軍に対して小さな介入をしてきた。だが、状況は当初の予想とは裏腹に互角の状況ではなく、反乱軍が優勢で戦況が進んでいたのだ。


そこでアルスフェルト伯爵は、反帝国組織による介入を当初の予定よりも早める積もりだったのだ。既にザムセン内に15,000の兵を潜ませてはいたが、彼等には全く武器が無い。そこでル・シュテル伯爵の輸送網を使いエウルレンの武器工場からロトヴァーン伯爵のムルソー軍港に向けて海路を輸送した。しかもル・シュテル伯爵は日本製の輸送船を高田から供給されており、この輸送船は帝都ザムセン港に入港許可証を持つ船と同型の船で、偽装もされており見分けがつかない船だった。この船に乗り込んだゾルダーは、武器弾薬をムルソーに集まっていた5000の兵力に武器を供給した。この兵力の中にはグリュンスゾート大隊の姿もあった。


そして帝都ザムセンは、依然として健在だった。

帝国陸軍第一軍は、ザムセン東方の第一防衛線を突破されたが、ザムセン外周の第二防衛線を頑強に守っていた。この第二防衛線は海岸線に至る防衛線右翼を、第一防衛線と同様に反乱軍第三艦隊砲艦隊によって攻撃され、右翼防衛線を下げるに至ったが、中央の野砲によって砲艦隊に被害を与えて最終的には後退させた。その結果として、両軍の戦力は空いた右翼陣地を狙って、一進一退の攻防が始まっていた。


だが、ここに介入するにはアルスフェルト伯爵の反帝国組織は戦力が足りなさ過ぎるのだ。現状で帝国陸軍第一軍の戦力は未だ5万弱を数え、そして反乱軍も同様に5万前後の戦力を保っていた。双方が互角に戦い、そして戦力を磨り潰して行くのが望ましい。最終的に反帝国組織が両軍に対して攻撃を行う頃には、双方が反撃能力を喪失しているレベルで疲弊し、戦力が消耗している状態が望ましい。だが、このままでは帝国第一軍は海からの砲撃によって、ザムセン第二防衛線もまた突破されるだろう。


これはどのようなタイミングで介入すべきか……

アルスフェルト伯爵は、刻々と移り変わる戦場の情報をル・シュテル伯爵経由で受け取ってはいたが、未だ介入のタイミングが掴めなかった。


そうした中で、第二防衛線の戦いは大きな転機を迎えたのである。


帝国陸軍第一軍司令官ルックナー中将は膠着状態に陥った第二防衛線を見渡し、反乱軍が海岸線近くの右翼に兵力を集中している状況を確認した。果たして海岸線は、第一防衛ラインと同様に砲艦隊からの砲撃によってズタズタに引き裂かれ、右翼を守備していた帝国陸軍第一軍ファルマー少将旗下の第一歩兵師団残余が守っていた。だが、残余とはいえ秘密警察軍の補充を受けた1個旅団相当であり、砲艦からの砲撃の際にもそれほど被害を受けずに後退していた。そして中央及び左翼を守る第二歩兵師団には殆ど被害は無い。


「イエネッケ少将、敵は海岸線に砲艦を張り付けて、我が防衛線右翼への圧力を強めている。恐らく兵力を海岸線に集中し、第一防衛線と同様に海岸側から浸透した上で、我が軍を包囲するように突進するだろう。現状の第一歩兵師団に、後詰の第三歩兵師団を充てる。必ず防衛線右翼を守り切れ。」


「了解しました。第三歩兵師団、参ります。」


「よし。ヒアツィント少将、第二歩兵師団はこのすり鉢陣地を迂回し、敵の右翼突進に合わせて第二歩兵師団は敵左翼への攻撃を行え。例の連射銃大隊は温存せよ。まだ反乱軍の第九歩兵師団が来ておらん。だが、連中が来る前に反乱軍第八歩兵師団を海に貼り付けて殲滅せよ。そうなれば数の上では我々の優勢が確たるものとなる。」


「ふむふむ…承りました。第二師団、敵左翼への攻撃を行います。」


「そしてファルマー少将、貴公の砲兵大隊は海岸に遊弋する敵砲艦隊を撃滅せよ。全ての砲を敵砲艦隊に向ける事を許可する。そして右翼を第三歩兵師団と協力して守り切れ。良いな?」


「承知致しました。必ずや敵砲艦隊を撃滅します。」


「頼む。そうなればこの戦い、一気にひっくり返すのも可能となろうよ。」


帝国軍司令官ルックナーは、この時既に半分程勝った気持ちでいたのだった。

誤字脱字報告大変感謝です。相変わらず、誤字脱字多くてすいません。


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