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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第四章 ガルディシア落日編】
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45.全員抵抗は止めて投降せよ

トンネルの中はちらほらと小さな明かりが点いていたが、トンネルの出口は真っ暗だった。恐る恐る外に向かって行くと、大きな広場の真ん中に出た様だ。周囲を見渡すと段々と目が慣れてきて少し離れた場所に建物が見え、その周辺にも明かりが見える。何か大きな土手のような物があちこち見える。一番最初に出たのは、ロアイアンの酒場で金に釣られて参加した男だった。


「おい誰も居ねえぞ、お前等さっさと来いや!」


「慌てんなってよ、今行くからよ。」


「外には出たけど、これからどうするんだ?」


「好き勝手に暴れろって言われてもな。誰も居ねえんじゃ暴れ甲斐がねえや。」


「そうだな、そこらに火でも付けるか。おい、火ぃ付けるモンあるか?」


「おお、マッチなら有るぜ。ほらよ。」


「ところでよ、この後は何をやったら金が貰えんのよ。お前知ってる?」


「知らねえ。あの偉そうなオッサンが寄越すんじゃねえか?」


「あの建物の中に入ってみようぜ!」


基地内に潜入した男達は全く無秩序な状態で、思い思いに勝手な行動を取っていた。ある者は大きな土手のような物の所に行き、ある者は燃える物を探してあちこちをふら付いていた。そしてある者はロアイアン南基地の建物の中に侵入しようとしていた。この様子を見ていた高田は事前に出口付近の兵を塹壕から引き上げさせ、発砲を禁じていた。穴からぞろぞろと出てきたならず者達はこれからどうして良いかも分からず、ただ辺りをうろついている。この穴の方向に向かって一斉にサーチライトが照らされ、ばらばらとエウグスト解放軍の兵達が包囲した時点で、穴から出た者達は50人程度だった。だが兵達は発砲を禁じられていた為、ただ銃を向けて指定された場所にならず者達を誘導しようとしていた。だが、大人しく誘導に従おうとしたその時にならず者達の中心に居た男が叫んだ。


「こいつらニッポン兵じゃないぞ、エウグスト人だ!」


「あぁ?なんでこんな場所にエウグスト人が居るんだ?」


「ニッポン兵じゃねえなら、遠慮する事ぁねえやな!」


「おい!大人しく従え!!発砲するぞ!!」


「おぅ、撃ってみろや!てめえらのヘロヘロ弾なんぞにゃ当たらねえぞ!」


「俺達の方が人数多いんだ、こいつらやっちまえ!!」


「止まれ!そこを動くな!!止まらんか!!」


「うるせえ!喰らえ!!」


そして基地内の侵入口周辺でならず者達とエウグスト解放軍兵の乱闘が始まった。その頃、基地内の司令官室で執務をしていた枝野陸将補は、突然鳴り始めたサイレンと広場での乱闘騒動に慌てて基地指令室に駆け込んできた。


「一体何事だ!何が起きている!!」


「敵の侵入です。基地内にトンネルを掘り進み、敵が侵入してきました!」


「なんだと!一体全体周辺警戒は何をやっているんだ!!」


「それは……周辺警戒は第5偵察隊が引き上げてから、夜間は省略されております。一部の当直によるゲート部分の警戒しか行っておりません。」


「それは一体どういう訳だ!?」


「戦力不足により交代制で警戒の人員を捻出が出来ない兵数となっております。」


枝野陸将補は傍と思い当たった。

そうだ、兵力削減は自分が決定した事だ。だが、それが原因で侵入されたとなると責任問題となってしまう。そうなれば、自分をこの地位に押してくれた人達にも迷惑が掛かるだろう。ここは別の何かをでっち上げて責任回避に努めなければ……


「鴻上一佐は何をしている!?」


「侵入した敵の対処を行っております。」


「早急にここまで来るように連絡しろ。」


「え、しかし!? 現在対処中ですが?」


「良いから呼び出せ!今直ぐここに、呼んで来い!」


「は、了解しました。」


枝野陸将補はこの状況に陥った原因を鴻上一佐に求めた。基地の防衛は第四普連の責任だ。そういえば第四普連はほんの数日前に急な演習許可を要請していた。そうだ、この演習を行ったせいでローテーションに無理が生じたんだ。それで警戒の人員捻出が出来なくなった、そういう事だ。つまりは敵の基地侵入の責任は基地防衛を担当する第四普連の責任者である鴻上一佐に求められるべきだ。私ではない。


基地に開けられた穴からは次から次へと人が出てきては、乱闘に参加した。

最もこの広場では自衛官は一人も参加しておらず、全てエウグスト解放軍が展開していたのだ。では自衛官は一体どこに居るのか? 彼らはこの広場から少々離れたヘリポート周辺に全員整列して待機していたのだ。この場所には明かりが当てられておらず、暗い状況である為、広場の皆からは見えなかった。だが、鴻上一佐からの指示が飛んだ瞬間に、このヘリポートに明かりが灯され、広場で乱闘する者達からもその姿がはっきりと見えるようになった。更に拡声器で辺り一面に声が鳴り響く。


「全員抵抗は止めて投降せよ!!」


そしてその声を聴いたならず者達は、彼ら自衛官達が完全武装で整列し、こちらを見ている状態であるのを確認した瞬間に戦意を喪失した。だが、このならず者達の中に紛れ込んでいたレティシア大隊のリンデマン大尉とマイヤー中尉は気が気でなかった。


「不味いぞ、ニッポン兵が戦闘態勢で待機している。」


「あれ完全武装してるじゃねえか?…どうする、リンデマン大尉?」


「まて、落ち着け。俺達はここで捕まっても、単なるならず者の扱いだ。ここは最後まで白を切ろう。幸いな事に俺達はここに潜入するにあたり自らを証明する類は全部置いてきている。この連中と共に動けば大事には至るまい。」


「そうだな…確かに。それにしても潜入が最初っからバレているとは、こいつらの情報収集能力はどうなってやがる。」


「ニッポン軍だからな。だが、エウグスト解放軍も居たのは計算外だった。」


「ああ、潜入しただけで情報収集も何も出来んな。」


彼等レティシア大隊からの潜入者が、ならず者達の列に埋没しつつある頃、鴻上一佐は枝野陸将補の元に出頭した。


「鴻上一佐、入ります。」


「来たか。君は一体全体基地の何を防備しておるのかね!?」


「我々の可能な限りの能力を以って当該基地を防衛しております。」


「それが足りないから、このような潜入工作が行われたのではないかね!?努力なのか才能なのかは知らんが。」


「一体どういう意味でありましょうか?」


「今回の侵入された責任は君にあると言う事だよ。当然だろう。で、侵入した敵は何者でどういった規模なのだ。現状どうなのだ?」


枝野陸将補は鴻上からの反論を塞ごうと矢継ぎ早に質問をしてきた。

その時、基地指令室に高田とエウグスト解放軍のエンメルス大尉が入ってきたのだ。


「やあやあ、お初に御目に掛かります、内調の高田と申します、枝野陸将補。」

誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

一行に無くならないですね…トホホ

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