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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第四章 ガルディシア落日編】
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44.トンネルを出たら暴れろ!

エンメルスはエウグスト解放軍として組織が再編された際にエウグスト内の階級で大尉に昇進した。一応自衛隊に席は置いたままであるが、特殊な事情を勘案してエウグスト解放軍の参加も認められたのだ。これは日本が後々エウグストへの干渉を維持する事を狙った政治的な特例であった。彼は今、ロアイアン南基地への侵入口と目される地点への偵察をランバートと共に行っていた。


「…んー? おいおい、なんだあいつら?」


「エンメルス大尉、あれは武装してませんぜ。おまけに正規軍じゃない。」


「そうだな。一見すると酒場で良く見かけるようなゴロツキばかりだ。」


「どうも正規軍が変装している訳でも無さそうだな…指揮している奴は正規軍っぽいんだがな。侵入口Bの方はどうだ、ランバート?」


「今、確認してみます…こちらランバート、侵入口Bの現状はどうか? …了解。どうやら侵入口Bも同様の状況です。正規軍はトンネルに入らず、ならず者達が大挙して押し寄せている模様。武装無し。」


「こりゃ、基地に侵入して騒ぎを起こす事だけが目的かもしれんな。下手にニッポンがこいつらを攻撃して死人でも出たら、それを理由に避難だの基地の撤退だのと騒ぎ立てるのが目的か。早急にタカダさんに報告だ。」


「了解しました。ここは引き続き監視しますか?」


「頼む、俺は一旦戻る。お前らは第5偵察隊を待て。だが危険を感じたら下がれ。」


こうしてエンメルス達からの情報を得た高田と鴻上一佐達は迷っていた。これから基地の中に侵入してくる連中は武装していない。つまり騒乱が目的である事は明白である。だが、制圧にあたり武器を持たない者達に攻撃を行うのは、ことが済んだ後でどんな避難が起きるか分かった物ではない。これが転移前の米国であったなら、例え武装していなくても基地に侵入した段階で問答無用で射殺しても恐らく問題にはならない。だが、日本では非武装の者が基地に侵入したとしても捕縛するのが精々で、侵入者に対しての射撃を行った場合は途轍もない非難が巻き起こるだろう。これは国民が安全な場所から通常の世界での基準しか想像出来ないのが原因だ。何が起きるか分からない環境であるからこそ、ルールを設けてそこを外れたならば問答無用で過剰とも思える定められた手順に従う方法をとらないと自らの被害が大きくなるのだ。そんな事も分からない国民に対して懇切丁寧に説明しても、そもそもそんな環境自体を想像出来ないから自らの想像の範囲内での理想の世界から非難を行うのだ。それが故に、可能な限り非難が出ない方法を取らないとならない、という制限が生まれる。この制限こそが派遣された隊員達を危機に陥れるのだ。鴻上一佐は隊員達を危険な状況に追い込む事は避けたかった。


「これはどう対処しますかね……エンメルスさん、規模はどの程度でした?


「そうですね。Aの方は2千人に満たない程度でしたね。Bも同様です。」


「合計でも4千人未満位かな。鴻上一佐、結束バンドは用意出来てます?」


「ああ、本国から送って貰って既にここに用意してある。1万個位はある筈だ。」


「銃やら剣の使用は制限しましょう。殺さず無力化する武器は用意していないですよね?」


「ゴム弾か?それは用意していないな。その代わりになる物も無いな。」


「そうですよね。さて、ある程度は外に出てきた奴を誘導して纏めて片っ端から捕縛して一か所に集めた上でバンドで固めて転がしときますか。ああ、それと第5偵察の小島ニ佐に絶対に指示している帝国軍の将校を捕縛するように伝えて下さい。そろそろ侵入口に着く頃でしょう。エンメルスさん、侵入口の監視は何名付いてます?」


「それぞれ2名張り付いてます。」


「小島ニ佐に彼等の特徴を伝えておいてください。さて、状況開始しますか。」


「了解!」


その頃、侵入口では帝国第三軍の兵達は全て引き上げ、代わりにならず者達がどんどんと穴に入っていた。その場を指揮する者はレティシア大隊第三中隊のマイヤー中尉と第四中隊のリンデマン大尉で、ならず者達と同じ様な恰好に偽装して突入を指示していたのだ。つまり一見して突入をする者達は全てがならず者にしか見えない。


「よし、お前等、このトンネルを出たら直ぐに外に展開して暴れろ!何をしてもいいぞ!それを確認出来れば、残りの報酬を支払うぞ!さあ、行け!進め!!」


だが、流石に人一人が通るのが限界で中々に進まない。延々と列が繋がる状況だが、ようやく最後尾がトンネルの入口に差し掛かる頃に、第5偵察隊の車両が周辺に到着した。小島ニ佐は侵入口Aに到着すると直ぐに包囲する様に車両を展開し、サーチライトを穴に向かって浴びせた。


「うっ眩しい、なんだぁ?」


「なんだっ、見つかったぞ!!」


「急いで通り抜けろ!!見つかった!!」


「おい、押すな!!前が詰まってんだ!行けねえんだよ!!」


侵入口では見つかる事の無い筈が見つかった事によってパニックが発生した。この混乱の最中、急いでトンネルに飛び込んだマイヤー中尉はそのままトンネルを進み、基地内への侵入を図った。だが、入口周辺に居たならず者達は偵察隊に威嚇発砲されて直ぐに大人しくなった。彼等は後ろ手に縛られ、周辺に纏められた。


「なんだよ、話が違うじゃねえかよ。これ報酬貰えんのか?」


「知らねえが、こんな所で捕まるとかな。バレてんじゃねえか。」


「おいおい、丁寧に扱えや!痛ぇよ。」


それでも入口周辺で捕まったのはごく少数に過ぎず、トンネルの中には大多数のならず者達とレティシア大隊の少数が侵入していた。そして、ちょうど基地内ではトンネルの出口が開けられ、トンネル内に居たならず者達がPKFロアイアン南基地に大挙して潜入を開始した。

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