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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第四章 ガルディシア落日編】
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37.PKF基地襲撃の顛末

PKF基地襲撃の第一報を入れた後に事態に対処していた笹川陸将補の元に日本政府からの矢の様な状況確認の連絡が殺到していた。だが全て状況確認中だと返事をさせた上で笹川は指揮に専念した。その中で、殆どの報告が状況が良い方向に行く中で、一点だけ報告が無い案件があった事から、笹川はこの確認を急いだ。


「ハルメル中将を案内していた遠藤一士から到着の連絡が無い。無線で呼び出せ。」


「……応答ありません。田所一士からも連絡つきません!」


笹川は応答のつかない遠藤一士の現状に対して最悪、ハルメル中将の裏切りを想定した。だが、その後にブルーロ大尉側を案内した部隊から無事安全な場所まで移動した連絡が来た時点で、その可能性を排除した。……恐らく彼等がこの基地での襲撃を狙っていたのなら、ハルメル中将以下全員が何等かの騒動を起こしたのだろうが、彼等のうち実戦部隊であろうブルーロ大尉以下7名が安全地帯に案内されてる。とするならば、ハルメル中将側に何等かの問題があり、遠藤一士と田所一士が連絡出来ない状況に陥ったと考えるべきだろう。だとすると孤立した状況にある可能性が高い筈だ。


「ハルメル中将は孤立している可能性が高い!急ぎ救助部隊を出せ!A-1地区だ!!」


「A-1地区に一番近い部隊は第四普連です。急行させます。」


「急げ。ハルメル中将に何かあったら、俺の首が飛ぶだけでは済まんぞ。」


「了解しました、急がせます。」


その当のハルメル中将の状況は正に孤立していたのだ。

彼等の制服はガルディシア帝国陸軍第四軍の正装だった。そして襲撃してきた囚人達が着ていたのは帝国陸軍第一軍の制服だ。ハルメル中将は、護衛の自衛官が倒れ自分達だけになった状況で傍と思い至った。別の自衛官と出会った瞬間に、彼らは自分達を保護すべき者として見るだろうか、それとも襲撃してきたガルディシア帝国の軍人と見なすだろうか?


「レティシア少佐、ニッポン兵を絶対に殺すな。」


「え。自衛の為でもですか?」


「彼等は銃を使う。もしお前がニッポン兵を倒した場合、一目瞭然だ。彼らはそれを検めて誰が倒したのかを知るだろう。だから絶対に殺すなよ。クルト中尉、貴様もだ。何れ彼らニッポンの情報収集能力では我々が孤立している状況にある事も把握するだろう。この場を動かず、防衛に徹せよ。」


「了解しました。レティシア少佐、あのドアを閉めて封鎖しましょう。その上で前方への防衛に徹しましょう。」


「そうね。貴方は左側の通路をお願いね。」


三人は塞いだドアを背に防衛体制を取りつつ迎えに来るであろう自衛官を待った。そして最初に現れたのはガルディシア帝国陸軍第一軍の制服を着た囚人部隊の一人だった。


「…ん?なんだ、アンタ達なんでこんな所に??」


「不運な奴だ。レティシア少佐、頼む。」


「了解!」


「え? 少佐殿? ……アンタなんで抜刀した! ちょ、ちょっと待ってくれ!!」


「ごめんね。すぐ楽にしてあげるね。」


「ちっ、むざむざ殺されるかよ、お前等皆殺しにしてここから逃げ」


その時ちょうどハルメル中将を迎えに来た第四普連の自衛官達が駆け付け、レティシアが囚人部隊の一人を切り伏せた所を目撃した。囚人兵は言いかけた言葉を最後まで言えないままに倒れ込んだ。


「失礼します、第四普通科連隊の篠塚二尉と申します。ハルメル中将、御怪我はありませんでしたか?!」


「お、おお。どうやら無事の様だ。案内してくれた貴軍の兵は第一軍の兵にやられたようだ。」


「そうでしたか。…第一軍と申しますと?」


「ああ、我がガルディシア帝国軍の皇帝直下に所属している陸軍第一軍の事だ。どうやらこの襲撃は彼等が行ったらしい。我々第四軍は軍服のここに印が付いている。彼等第一軍は同じ所の印が違う。倒れている兵を確認してみて欲しい。」


「そうですね、後で確認致します。ですが、まずは将軍を安全な場所にお送り致します。」


「そうか、良しなに頼む。」


『ハルメル中将の安全を確保しました、これよりセーフゾーンに移動します。以上交信終わり。』


「それではご案内致します。こちらにどうぞ。」


ハルメル中将、そしてレティシアとクルトの3名は迎えに来た第四普連の自衛官達に連れられ安全な場所に移動した。その頃にはPKF基地内におけるゲリラコマンドは殆どが掃討されていた。


「良し。ハルメル中将の安全は確保された。残敵の掃討は未だか?」


「C地区に少数の敵が潜伏中、A地区およびB地区の敵は掃討完了しました。」


「C地区か。こちらの被害はどれ程だ?」


「把握しているだけで最初の爆発時と建物内で出合い頭で何名かやられた模様です。以降は被害が発生しておりません。」


「よし。C地区を包囲して投降を促せ。何人かは生かして確保せよ。」


「了解しました。」


だが、PKF基地の自衛官達は頑強に抵抗する囚人部隊を生かして制圧する事が出来なかった。非殺傷兵器を装備していなかった彼等は手足を撃って身動きを取れなくさせようとしたのだが、彼等は動けなくなった時点で全員自害した。ブルーロは彼等囚人部隊への教育の際、ニッポン軍に捕まると死ぬより惨い拷問に会うと教育していた。彼らは全員が奥歯に即死毒を仕込んでいて、拷問されるよりは死を選んだのだった。


こうして最後の囚人兵が倒れたのは最初の爆発発生から7時間後の事だった。

明日には通常モードで更新します。

今日の更新は1本だけです、ごめんなさい。

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