表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第四章 ガルディシア落日編】
268/327

27.ハルメル中将の呼び出し

新生レティシア特殊作戦団は大隊規模となった事から、レティシア戦闘団と名乗るようになった。そしてハルメル中将の指示で情報局から第四軍への編入となった。だが、やはり第四軍の中でどこの師団にも属さずハルメル中将の司令部直属部隊として行動を開始した。


大隊はレティシア少佐を筆頭に4つの中隊で構成され、各中隊長にはブルーロ大尉、ギュンター中尉、秘密警察出身のマイヤー中尉、リンデマン大尉が配置された。ブルーロ指揮下の第一中隊はヴァルター曹長、ヨーゼフ軍曹、ジーヴェルト軍曹ら、旧ブルーロ隊とレティシア隊の面々が小隊長として配置され、この第一中隊が最も旧来の性格を色濃く出していた。


「どうにも暇ねぇ…」


「少佐、何やらニッポン軍の駐屯地で面白そうな事をやろうとしている様ですよ。」


「なに、ヴァルター?どこが?ニッポン軍が?それとも別の何かが?」


「あー、ええっとすいません。ハルメル中将がどうやらニッポン軍に何かを仕掛けるそうです。」


「何かって何を仕掛けるのよ。情報として全然足りてないじゃない。」


「すんません、そこまでは調査不足でして。ただ、ハルメル中将の関係がザムセンで秘密会合を相当開いている様です。その中から出てきた話らしいんですよ。で、うちのレオポルド局長が絡んでいるようなんですね。」


「あなたの話、全部憶測ばかりじゃない。ちょっとレオポルドに聞いてくるわ。」


「え?局長は今、ザムセンに居るんですよ?どうやって??」


「あーそっか。もしかして中将も一緒かしら?」


「恐らくに。前にザムセンに行ってから暫く戻って無い筈ですよ。」


「何も分からないわねぇ…ま、何かあったら私達にも声が掛かるでしょ?」


「そうすね、それは違いありませんね。」


そしてちょうどその頃、日本のPKF駐屯地への訪問を目的として移動していたハルメルがヴォルンに高速駆逐艦で到着した。そのまま第四軍司令部に戻ってきたハルメルは即座にレティシアを呼び出して、こう告げた。


「レティシア少佐。近々儂とニッポン軍駐屯地に行くぞ。何名か選抜しておけ。近接戦闘能力の高い奴を選んでおけよ。」


「はっ、畏まりましたぁ!ちなみにニッポン軍駐屯地へは切り込みでしょうか?」


「馬鹿を申せ、話し合いだ。いいか、貴様を同行するのは不測の事態に備えての事だ。だが、目的は話し合いなのだ。決して、儂の指示あるまでは抜刀するなよ。そも儂らはニッポン軍とは事を構えようとはしておらん!」


「りょーかいです。なんか詰まらなさそうですね。」


「なっ…いや、もう良い。下がって良し。」


……実力はあるのだが使い辛い女だ。

ハルメル中将は、日本へ自分達旧皇帝派閥と、現皇帝派閥とは違う説明を行う為にヴォルンまで戻ってきていたが、まだ決死隊の選抜は終了していない。軍刑務所があるザムセンではザームセン公爵が秘密裏に人を動かして死刑相当の罪人を搔き集めている筈だ。それらの準備が整い次第、こちらはニッポン軍の駐屯地に行って事前に説明をせねばならん。だが、その説明が早過ぎれば、そして現皇帝に知れる所となれば反逆罪は間違い無い。説明が遅すぎれば、自分がニッポン側に助かりたいが為のその場凌ぎの嘘と思われてしまう。あくまでも現皇帝側に知られない有耶無耶に出来るギリギリのタイミングで行わなければならない。だが、万が一の事もある。もし万が一、ニッポンに疑われ拘束されそうな時にはレティシア少佐が切り札となる。道を切り開いて脱出するにあたり、あの大隊の手練れが居れば狭い施設内では連中の恐ろしい武器も使えまい。あとは決死隊が混乱を拡大している内に脱出が可能だ。だが、そう考えていたハルメルの思惑通りに行くかどうか、今はまだ分からない。


「ねぇねぇブルーロー!!今、ハルメル中将に呼び出されたんだけどね。」


「おう、レティシア…少佐か。どうしたんでありますか、少佐殿?」


「ちょっとブルーロ、他人行儀じゃない? いいよ、何時もの調子で。」


「そうは行かんだろう…でしょう。軍とはそういう組織なのですよ。」


「……キモチワルイ。」


「わかったわかった、人の目が無い時はいつもの調子にする。下が居るときは勘弁してくれ。」


「そうそう、それで良いのよ。あのね、近いうちにニッポンの基地に中将と共に行けってさ。」


「ほう、ニッポンの基地か。俺も噂のニッポンの基地には行ってみたいんだが。機会がなぁ…」


「聞いて聞いて。何人か近接強いの連れて来いってさ。ブルーロも行く?」


「俺、そんなに近接強くないぞ?」


実はブルーロは常日頃からレティシアの近接戦闘能力を知っているので、彼が思う強いというレベルは彼女を指していた。だが、あの領域に踏み込める者はそれ程は居ない。常人の域ではブルーロは相当に強かった。


「ああ、いいのいいの。何か遭ったら全部私が殺すから。後ろだけ守ってくれたらそれでいいの。」


「お前、後ろにも目があるだろうが?」


「無いわよ、なに人をバケモノみたいに言ってんのよ。行くの?行かないの?」


「あー行きたいな。他に人選して強い奴が居たらそっち優先してくれ。だが枠があれば行きたいぞ。」


「分かったわよ、人選に加えておくね。」


「ところでそれは何時になるんだ?」


「さあね。集めて置けとは言われたけど何時とは聞いて無いわ。」


「そうか。日付が決まったら教えてくれ。」


「何時になるのかしらねぇ…」


「そういう類の命令か。何時になる事やらだな。」


「そうね、何か決まったらまた教えるわね。じゃ、他の人選しなきゃ。またね、ブルーロ。」


「おお、またな、レティシア。」


命令を出した方も受けた方も、これは何時に実行されるのか皆目見当がつかなかったのだが、意外に早い時期にそれは訪れたのだった。ヴォルンの港にザムセンから囚人の一行がやってきたのだ。そして彼等は、レオポルドに引き攣られ第四軍司令部にやってきたのだった。

誤字脱字チェック有難う御座います、感謝感激感涙にむせび泣いております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ