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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第四章 ガルディシア落日編】
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25.エウグスト独立軍

エウルレンでは刻々と状況の改善が進んでいた。

まずロアイアンへの街道整備は日本政府が派遣した第五旅団とエウルレンの土木会社の協力により一気に整備された。この道路が整備された結果、ロアイアンからエウルレン間の相互の物流が行き渡るようになった。これは流通だけではなくエウルレン側の戦力がロアイアン方面に急速な展開を行えるようになったという事だ。そしてロアイアンとエウルレンの間に、複数のガソリン補給所が設置された。エウグスト解放戦線の思惑としては最終的に過去エウグストとして存在し現在ガルディシアに占領されている領域の回復を狙っていた。そして、今日本の第五旅団が境界線上に居る事は解放戦線にとって大きなアドヴァンテージだった。何故なら彼ら第五旅団が居る間に北側からの侵攻は絶対に有り得ない事と認識していたからだ。


そしてル・シュテルが起用したデルロンと公官庁出身者達は、非常に効率的に諸問題を解決していった。戻らない避難民に対しての彼等の対策はエウルレン周辺域における避難滞在者への資金援助の減額と、帰還者に対する期間限定の資金的援助設定だった。避難期間に応じてエウルレン市が公的に行っていた資金援助を段階的に減額した上で、帰る事を選択した人にはそれなりに纏まった額を渡す事で、避難民を戻らせる事を加速させた。勿論、戻る場所の安全が確保されない事にはそれも進まない事から、積極的にバスツアーを企画して第五旅団への見学ツアーを実行させたのも彼等だった。この結果、実にエウルレン周辺における避難民達の75%が自らの家に戻っていった。そしてエウルレンに残った者達の大部分は、資金援助が先細っていった事からエウルレンでの仕事を見つける方向に進んでいったのだ。こうして現状で最も問題と思われた避難民問題は解決の方向に進んでいった。


そして解放戦線は名称を変更した。

既に帝国との武力対立は避けがたい物としての認識が広がり始め、解放戦線という名称が実情と合わない物となっていたのだ。そこで皆と話し合った結果、解放戦線はエウグスト独立軍と改名し、旧エウグスト領域の独立を宣言した。


「あれから帝国は随分静かになりましたね。」


「ははっ、伯爵。ニッポン軍が駐留を続ける限り、この辺りで戦いは起きんでしょう。」


「それはそれで別の問題もあるんだけれどね。」


「それは伯爵、どんな問題でしょう?」


「時間があれば、それなりに戦力や体制が回復するんだよ、モーリス大佐。」


「ああ、それは確かにそうだがね。だが、帝国の受けた打撃はこちらの比じゃないだろう? 回復の度合も我々とは大きく違う筈だ。失った人員の数も装備もそう簡単には行かないだろう。」


「それはそうなのだけれど、相手を過小評価する事が最も危険なんだと思うよ。それにね、私達が相手を見くびる程に戦力がある訳ではないんだ。ついでに言うと帝国の人材の厚みは我々とは比較にならない程に厚いんだよ。」


「決して帝国を過小評価している訳では無いんだが。ただ、現状で動けない帝国を考えると、彼等も結局何も打つ手が無いのではないかと思ってしまうのだ。」


「帝国が次の手を、ね。そうそう、ゾルダー君からの連絡がこの前に入ったよ。秘密警察が解体されて第一軍への編入が決まったそうだ。」


「なんとそれは…戦力的はどんな物なのだ? 彼等の能力は?」


「基本的に秘密警察自体が例の特殊作戦団残党が海軍や警察から引き抜いた精鋭を鍛え上げたそうだ。だから、素人が戦力に加わったと考えるのは間違いだよ。第一軍残余と彼ら秘密警察を合計すると5万強の戦力となる。第一軍の元々の戦力を考えるとそれ程強化された訳では無いが、彼等秘密警察軍の能力を考えると、相当侮りがたいと思った方が良い。」


「秘密警察軍とはそういう類の物か…中々に厄介な連中だな。」


「ああ、彼らは次々と何等かの手を打ち続けている。何も打つ手が無い、というのは大きな間違いだよ。繰り返して言うが彼等を侮ったり過小評価しても、何も良い事は無い。それにもう一つ、彼等はザムセンの入口に障壁を作り始めたそうだよ。何やら長いトンネル状の物で、要は入口に律速を設けて、敵軍が大量に侵入する事が不可能になるようにね。」


「第一軍の再建と障害の設置か…ザムセンは近寄れない状況だな。」


「だからこそ、我々はこの状況に対応した対策を行って行かなくてはならないんだよ、モーリス大佐。」


エウグスト解放戦線はエウグスト独立軍として組織を再構築した際に、様々な指揮命令系統の整理を行った。そして今迄独立軍を指揮する者の頂点としてモーリスは大佐に昇進した。そして旧エウグスト軍だった者達の独立軍への再雇用も積極的に行った結果、今迄の解放戦線とは軍として隔絶した組織となった。今やエウグスト独立軍という組織は、モーリス大佐が指揮するのは合計4万弱の戦力を有する二個師団相当の兵力と、これとは別にル・シュテルの輜重部隊がこれを支えた。そしてル・シュテルは日本の自衛隊が持つ輸送能力や兵站能力を模倣するように学習を続け、エウグスト独立軍独自に輸送状況に合致した輸送能力や兵站能力を強化していったのだ。つまり、輸送トラックの充実と、輸送トラックに軽装甲を施したトラック改造型兵員輸送車を独自に作り上げた。


つまりエウグストはその距離と輸送路を輸送能力を武器に少ない戦力で戦う方向に進化していったのだ。だが、エウグストの地勢的に上下に挟撃された状況も、圧倒的に足りない兵力も依然として変わらない。この二正面をなんとかせねば、エウグストに未来は無い、そう思っているル・シュテルだった。

誤字脱字、感想、ブックマーク、評価ありがとうございます!!

更新遅くなってすいません、youtubeの動画で音楽聞きながら書いていたら、つい見入ったり聞き入ったりしてこんな時間になってしまいした…アカン

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