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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第四章 ガルディシア落日編】
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21.レティシア特殊作戦団の復活

レティシア大尉はブランザックに到着した後に、直ぐエウグスト市へと移動した。エウグスト市では第二軍に立ち寄ろうとしたが、グリュンスゾート大隊の件があった為、そのまま第二軍には寄らずに更に北のヴォルンまで移動し、ハルメル中将を頼った。流石にヴォルンの町ではエウグストの件は噂レベルでしか無かったが、命令撤回を伝達しに来たゾルダーからの情報とレティシア大尉からの情報を擦り合わせると、ザムセンとそれを取り巻く状況にハルメル中将は焦りを隠せなかった。そこでハルメル中将はレティシアに便宜を図り、帝国陸軍第四軍から好きなように人材を補給する事と、訓練宿舎を与えた。


ハルメルは直ぐに第四艦隊のミューリッツ少将に連絡を取った上で、高速の駆逐艦を借りてザムセンへと向かっていったのだった。そこで彼はザームセン公爵邸を尋ね、秘密会議へと相成った訳である。そしてレティシアは陸軍第四軍から人材を補充したのだが、残念ながら前程の戦力は回復していない。そこで戦力の充実を図るべく日夜新参兵を鍛えに鍛えていたのだった。そして今日も第四軍から選り抜きで送り込まれ、特殊作戦団基準の試験基準に合格した者達が選抜試験を受けていた。


「大尉、本日の選抜試験の結果ですが、100名中5名が合格です。」


「あら、結構多いわね。どこに居るの?」


「あそこでヘバってます。会いに行かれますか?」


「行かない。だって、この後の特殊訓練に合格しないと結局使い物にならないもの。居なくなる人に挨拶をしに行くも可笑しくない?」


「まぁ、そうですね。俺はこの後残った連中を扱いてきますんで、また後でです、大尉。」


「じゃあ、頑張ってね。」


彼等は体力審査で合格すると専門の教育課程へと進む。だが、それらの施設は全てザムセンにある為、ここではジーヴェルトが担当教官代りに試験教官を行っていた。それとは別に既に合格した者達への教育もジーヴェルトとレティシアが交互に行っているのだった。余りにも人手が足りない。もう何人か教育係が欲しいと思っていた矢先に、ブルーロ特殊作戦団の一団がヴァントにやって来たのだ。


「あら、ブルーロ! 久しぶりじゃない!生きていたのね!」


「レティシアか。久しいな。お前の所は何人生き残った?」


「私含めて二人よ。ほら、例の中国人の件で私達の部隊、大分減ったから。」


「ああ、そうだったな……俺の所は俺も含めて9名だ。エステリア潜入及び脱出で、かなりの被害を受けたんだが、エウルレンへの潜入で更に減らされた。補充も効かんし、そもそもザムセンとも連絡がつかん。お前はどうしているんだ?」


「私?今、部隊の再編補充中。ハルメル中将に頼ったら、第四軍から人員を好きなだけ抽出せよ、ってね。おまけにここに訓練宿舎を貸してくれたのよ。それで今、選抜している訳。」


「ああ、それで中将付きの将校がここに行けと言っていたのか。」


「何なら私達を手伝ってくれない?人手が足りなくて大変なのよね。」


「あのな、漸く俺達はザムセンでの秘密警察訓練の教官から抜け出せたのに、また教官をやれというのか?」


「え、そうよね! 秘密警察が居たわ! 彼等も相当貴方方に選抜されているわよね?」


「あ?ああ、確かに。俺達が鍛え上げたからな。」


「ここヴォルンに秘密警察軍ってどのくらいいるのかしら……」


「そうだな。恐らくだが最低でも1万以上の兵力はあると思うが。」


「良い事考えちゃった。あなた、ヴォルンの秘密警察軍で一番偉い人知ってる?」


「お前の考え分かったぞ。一緒に行くから付いて来い。」


「話が早くて助かるわ、ブルーロ。」


そしてブルーロとレティシアはヴァントを含む旧ダルヴォート地域を管理するダルヴォート管轄区秘密警察支部長シェーラーと面会した。そこでレティシアはむりやり秘密警察軍の構成員を引き抜こうと画策したが、シェーラーは当然拒否した。そこでレティシアはレオポルドから言質を取る為には一度実際にレオポルドとの会わなければならない。その為、ブルーロ大尉にヴァントでの部隊補充の為の教育を任せ、ザムセン行きへの船に乗った。レティシアはブルーロ隊の吸収と秘密警察軍からの人員補充をレオパルドに要請しに行ったのだ。


そして結果的にレティシアは再びハルメル中将の助力を得て一階級昇進の上でヴァントに戻ってきた。ハルメルから得たのは秘密警察軍及び第四軍から兵力を吸収する事に対するフリーハンドだった。ハルメル及びレオポルドからの協力要請の書面に目を通したダルヴォート管轄区秘密警察支部長シェーラーは、苦々しい顔をする訳にも行かず全面的な協力を約束したが、裏で妨害を行おうと画策したが、直ぐに露呈して言葉通りの全面的協力を実行した。


そして、その甲斐もあって第四軍の切り札としてレティシア特殊作戦団は再生しつつあったのだ。その規模は既に大隊クラスにまで膨れ上がった。だが、ハルメル中将の思惑としては未だ足りない規模であった。彼は、レティシアの部隊を少なくとも連隊クラスにまで引き上げる事を考えていたのだった。この時点では彼の目標よりも四分の一に過ぎなかった。


だが、予定の四分の一に過ぎないこの戦力は恐ろしい威力を発揮するようになるのだ。今はそれを誰も知らない。

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