1_25.第二次 骨の塔 攻撃作戦(下)
危機管理センター2025年4月16日 午前5時半
「全弾命中!…なっ!効いてないぞ!」
「塔頂上部ではなく、足元狙った方がよくないか?」
「報告にあった通り、塔表面に不可視のシールドがあるようだ。」
「こちらシリウスリーダー、補給に戻る。各機続け。」
「こちらパンサーリーダー、こちらも補給に戻る。」
「第二次攻撃隊、攻撃位置についた。」
「各機攻撃を開始せよ。」
第一波合計160発の爆弾を不死の王は凌いだ。続く第二波攻撃も効いてはいなかった。落着する場所に合わせて、塔の上部部分に障壁強化した。前回の船の攻撃に比べて数は多いものの、攻撃場所が集中していた。その為、不死の王の障壁を強化するタイミングは十分に間に合っていた、
だが、不死の王の予想を裏切る事態がそこでは進みつつあった。
「管制機より確認したい。目標の塔に人影が見える。二人程人間の姿を確認している。」
「…な、なんだと!?人が居る?!?それは、魔導士とやらじゃないのか???」
「魔導士は一人と聞いております。目標には他に2名の人影。恐らく女性ではないか、と判断します。」
直ちに攻撃を中止するか!?
飯島総理は、危機管理センターのモニターの前で逡巡した。人だって?あの塔に住んでいるのは大魔導士とやらじゃないのか?人間の女性?しかも二人だと??大魔導士が近くに居たならば、人間は生きては居ない筈だ。だとすると、それは人のように見えて人に非ざる存在な筈だ。
きっと、攻撃を躊躇わせる魔導士の手妻に違いない。ここは攻撃続行だ!騙される訳には行かないのだ!
「それは魔導士の欺瞞工作だ。第三次攻撃を開始せよ!」
飯島総理は力の限り言い切った。その判断は間違っていたのだが、実は結果オーライだった。
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骨の塔 最上部
空飛ぶ人間達による3回目の攻撃が始まった。3回目の攻撃も、実に正確に塔の頂上部を狙っていた。そして確実に頂上部に爆弾は落ちていた。
『狙う場所が一点集中しておるわ。逆に守る場所も1点集中しておれば良い。先程の矢よりも守るに容易いぞ。ふふふ、気が逸っておるな、人間共め。』
不死の王は、既に守るという点に於いては勝ち誇っていた。航空機の攻撃手段が直上からの攻撃に集中していた為、確かに1点のみの障壁に集中するだけで、全てを防御出来ていた。ただ、それは簡単ではあるものの、次から次へと降ってくる爆弾を完全に防御し続けるのは、膨大な集中力を要した。だが、防御に集中する不死の王の足元では…
「ミヨばぁ、この結晶に手を当てて治れ、って祈れば良いんだって。」
「ちょっとあんた、こんな事やっちゃ駄目だよ。これやったら、あの何とかの手品師が息吹き返すんだろ。」
「だって、これやんないと帰れないよ。黒ちゃん、これ治したら元の世界に帰すって言ってたし…」
「その前にあんた、爆弾が山程落ちてきてるんじゃない!」
「黒ちゃん、障壁?ってので守るって言ってたよ。」
「うーん、どうしたもんかね…この結晶を治せって言ってんだろ?これ壊したら、どんな事になるんだろね?」
「黒ちゃん、困るんじゃない?」
…二人は顔を見合わせ、そこらの何か固い物を探し始めた。取り合えず目についた物を二人は結晶に向けてぶつけ始めた。アイナは壷のような物がすぐ傍にあったので、それを振りかぶって思い切り結晶にぶつけてみた。結晶はびくともしなかった。が…壷は木端微塵に砕け散った。
『ぬぉっ!きっ、貴様等一体何をしている!!!魂が、我が集めた魂達があっ!!!』
「あら、見つかっちゃった。黒ちゃんごめんね!!」
「ちょっとあーちゃん謝る事なんか無いよ。…アンタはこれでも喰らいな!」
ミヨばぁは近くに落ちていた金属片を結晶のひび割れの中に刺し込み、金属片を右に左にかき回した結果、結晶のひびは致命的に広がった。
「ほれ、こうしてやるよ。これでどうだい!?」
更にミヨばぁは金属片を奥まで刺し入れ、結晶は完全に割れた。途端に真っ黒な大魔導士の身体の中心から、メリメリと光が漏れだし、大魔導士は空中で薄く淡く四散し始めた。
『おのれ…無念だ…こんな事で…何故だ…』
強力なF2の第三波目の爆弾攻撃を凌ぎ切った不死の王は老婆の金属片の一撃で雲霧四散した。そして第四波攻撃を迎える前に、骨の塔がガラガラと崩れ落ちた。幸いな事に小さな部屋を含む最上部は徐々に落ちていったので、中の二人には被害が無かったのだった。