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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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74.ザムセン街道の後退

ル・シュテルはエンメルスからの連絡で皇帝誘拐が失敗した事を知った。

そして取るべき次の対策を模索していた。今の所、帝国の第三軍と第四軍の動きは無い。それは通信遮断によって情報が届いていないからだ。だが、何れ情報が伝われば必ず南下してくるに違いない。だが、第二軍ドラクスル壊滅の記憶も新しい今なら慎重に動くだろう。これは後回しで良い。だが、エウルレン街道を北上する第一軍は夜が明けた頃には必ず来る。問題はエウグスト陣営としては戦争準備が全く成されていない事と、防衛体制を整えていない事だ。戦力不足も甚だしい。そこで、戦力の補充としてティアーナの解放戦線戦力を呼び出した。


「ル・シュテルです。第一レイヤーのルーホンさん。悲しいお知らせとお願いがあります。」


「それは…計画は失敗したのですね?」


「ええ、そうです。只今エンメルスさんから連絡がありました。急ぎ次の手を打たなければなりません。現在、急襲部隊はザムセンからの撤退中ですが、帝国陸軍第一軍から追撃を受けております。全軍規模で7万少々の軍です。エウレルンに向けて街道を北上しています。急襲部隊は遅滞しつつ後退してエウルレンに向かっています。」


「それは各部隊は壊滅していないという事ですね? それならば侵入路を塞いで防衛体制を整えて出て来たところを叩き続ければ、敵の侵攻を止められるかもしれませんね。」


「それを行う戦力が足りないのです、ティアーナの戦力を投入して頂けませんか?」


「了解しました。ただ、移動に多少時間がかかります。鉄道を輸送列車で構わないので動かせませんか? 我々は昨日から臨戦待機に入っているので集めるのは簡単です。ただ、そこに行く手段が無い。」


「ルーホンさん、移動は任せて下さい。早急に手配します。手配が完了したらまた連絡します。」


これでエウルレンを守る戦力は、E集団3,000とティアーナ5,000の合計8,000の兵力となる。次に連絡しなければならないのはE集団のアレストンだ。現在E集団は街道守備に大半を注ぎ込み、少数がエウルレン北の防衛についている。これを引き抜いてエウルレン防衛に当てて…いや、恐らくE集団の街道守備チームは輸送車の保護と転回場に大半が集中しているだろう。つまり撤退が完了しないとこれは動かせない。その場所に居ないと状況がいまいち掴めないのは実に不便な事だ。情報が欲しい。なんとかならないものか。…タカダさんを頼るしかないか。


「夜分遅くに大変申し訳ありません、ル・シュテルです。タカダさん…その……大変言い辛いのですが…」


「どうもこんばんは、伯爵。大丈夫ですよ、ずっとモニタリングしておりました。現状を把握していますよ。」


「え?それはどういう事ですか?ええ?」


「何時、連絡来るのかなと思っては居たんですけね。皇帝拉致に失敗して解放戦線は全軍撤収に入ってますね? このままだと帝国軍が北上を続け、エウレルンは蹂躙されるでしょうね。それは日本にとっても困るんですよねぇ。」


「すると、何か助けて頂けるんでしょうか!?」


「それがですね。公に日本が片側に介入するという事自体は難しいです。それを行う為の世論の納得とか政治の調整とか、まどろっこしい事が山の様に聳えてましてね。それを解決する間に問題自体が悪い形で終わっているでしょう。ですが、公にならない方法ならお手伝いする事が可能です。」


「タカダさん!助かります!!して、どんな方法を?」


「そうですね。端的に言えば情報です。只今、ザムセン上空に監視用の無人機飛ばしてます。それで帝国の動きを逐一モニターしておりますんで、この戦力の規模や移動方法、作戦意図などが分かると思うんですよね。この情報をお渡しするならば、相当に戦い易いと思うんですよ。後で簡易の作戦指揮用システムを持ってそちらに伺います。そんな時間はかかりませんので少し待ってて下さいね。」


「タカダさん、い、今どこに居らっしゃるのですか?!」


「割と近くです。ではまた後程。」


高田はエウルレンから離れる事200km洋上の護衛艦いずも船上に居た。

エンメルスから事前に情報を得ていた高田は、この日に備えて秘密裏にエウグスト解放戦線を支援可能とするべく準備を整えていた。だが表向きエウグストが自身でこのクーデターを成功させる様に動いていたのだが、遂に彼らの限界が来たのだ。高田はいずもからの発艦準備をいそいそと整えた。



ザムセンから4km程離れた転回場。

そこに防御陣地を構築中だったE集団の元にD集団が撤退してきた。転回場で転回した輸送車両は既にエウルレン側に頭を向けており、長蛇の列を作って停車している先頭車両から順次人を乗せ次第エウルレンに向かっていった。相対する帝国第一軍の動きはB集団の奇襲攻撃の連続で完全に動きが止まっていた。一見、手札が切れて膠着状態に陥った帝国軍であったが遂に待っていた物が来た。


第二歩兵師団師団長ヒァツィント少将は、遂に夜明けが来た事に歓喜した。

これで森の中に入って小細工を繰り返す小賢しい賊共を殲滅出来る。損耗率35%?知った事か!帝国に弓引く連中の末路はいつも同じなのだ。奴らの損耗率が100%になれば帳尻も合うだろう。彼は命じた。


「第四連隊!!森の中の賊を殲滅せよ!掃討戦だ!」


第二歩兵師団第四連隊が森の中に浸透しようとしている時、第三歩兵師団が街道に進出した。これまで市街戦を行っていた為に損害がそれ程大きく無かった第三歩兵師団は第二歩兵師団が通った後を進んで街道を進行した。第三歩兵師団師団長アルブレヒト少将は、街道に転がる第二歩兵師団の死体が罠によってやられている状態を見て進軍速度を極端に落とす事を命令していた。その結果、森に入った第二歩兵師団と、街道を進む第三軍の距離がずれ込んでしまい、転回場陣地に到着する頃には相互に連携を取れない程に距離差が出てしまったのだ。そして森に入った第二歩兵師団による転回場陣地側面への攻撃は単独強襲となった。


そしてB集団は依然として森に潜んでいた。

エンメルス達は街道をゆっくりと進む第三歩兵師団を側面から強襲した。だが暗闇の中から攻撃した先程と違い、こちらの姿も直ぐに捕捉される為、一撃を行ってから直ぐに後退する。そして移動後に、再度攻撃を繰り返していた。そこに高田がからの連絡がエンメルスに入った。


「エンメルス君、森林浴はどんな感じかな?」


「タカダさん、どっから見ているんですか?! 森林浴最高なんですが、そろそろ飽きましたよ。」


「そうだね。そこの部隊を相手にしていると磨り潰されるよ。引いた方が良いね。」


「ですね。タカダさんこっち来ないんですか?」


「もうそろそろ伯爵の所にお邪魔するよ。指揮システム持っていくから。」


「了解しました、お待ちしてます。」


エンメルスのB集団は森林からの遊撃を終了し、後退していった。

いつも誤字脱字報告大変ありがとうございます。

何時まで経っても無くならない事に絶望しております…が!

評価、ブックマークして頂いた方々大変ありがとうございます。

少しでも面白いと思って頂いたんだな、と喜びと感謝を感じます。

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