表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
237/327

72ゲルトベルグ城の戦い-④

ゲルトベルグ城一階の広間は停電中にも拘らず薄明るい状況となっていた。それは城前面に広がる庭園が炎上している事により、炎の明かりが差し込んでいたからだ。この薄明りの中でB集団エンメルス達と特殊作戦団レティシア大尉の死闘が行われていた。だが、レティシアの猛攻にエンメルス達は押され気味だった。明らかにレティシアよりも自分達が劣ると判断したエンメルスが奥の手として取り出したのは閃光手榴弾だった。そしてエンメルスはピンを引いて叫んだ。


「スタン!!!!」


広間に閃光と大音響が響き渡る。

エンメルスが叫んだ瞬間、B集団は耳を塞ぎ目を腕で覆った。だが、レティシア大尉とジーヴェルト軍曹はピンが引かれた物の正体が分からない。単純に手りゅう弾の類と判断し、咄嗟に身を隠した。結果として直視して完全に戦闘力を失う状況にはならないまでも、大音響の効果が出てしまった。その影響は2、3秒の間だったが、エンメルス達が攻撃する分には十分な時間だった。


「制圧射撃!!」


エンメルス達はレティシアとジーヴェルトが隠れている場所に銃撃を行った。暫く銃撃を行い、反撃が無い為恐る恐る近づいたエンメルス達にジーヴェルトが立ち上がって反撃した。ここでジーヴェルトの反撃が、先程拾った56式であったなら、その結果も違ったかもしれない。だがジーヴェルトの反撃は剣による物だった。飛び出したジーヴェルトは一番近くに居たトーマに切り付けた。咄嗟に身体を捻ったトーマだったが、利き腕を斬られて反撃出来ない。だが、ジーヴェルトは飛び出して振り回した剣に身体が振り回されている。


「ジーヴェルト、戻りなさいっ!!」


「レティシア大尉!お逃げ下さい!!ここは自分が!!」


「逃げるだなんて!」


「おいおい情報局大尉殿よ、そろそろ状況把握してくれや。お前の負けだ。降伏しろ。今、お前も平衡感覚がおかしいだろ?そんな状況でさっきの様な動きは出来ねえ。もうアンタの勝ち目はねえぞ。」


「あんな武器があるのね…でもアナタ方も同じ状況では無いのかしら?」


「俺達ぁ訓練で慣れてるからな。…投降するなら殺さない。だが、これ以上やるってんなら表の兄ちゃん含めて皆殺しだ。どっちも俺は選ぶ事が出来るが、そこをアンタに選ばせてやる。一応アンタの剣技に敬意を込めてな。」


「そうね…降伏するわ。ジーヴェルト、剣を降ろして。アナタ部下の生命を保障してちょうだい。」


「そこはお願いしますだろ?」


「部下の生命を保障してちょうだい。頼むわね。」


「こいつどこまでだよ…」


エンメルスはレティシアとジーヴェルトを結束バンドで縛り上げ、見張りを置いて直ぐに2階へと向かった。そして先行していたB集団の面々と合流したが、そこらに近衛部隊がバタバタと倒れているだけだった。


「おい、皇帝はどうした?」


「2階は制圧しました。近衛部隊は排除しましたが、皇帝が居ません。」


「そんな馬鹿な。ここから動いていない筈だ。ちょっと待て。」

『こちらエンメルス、C集団は城を包囲しているな?怪しい人影は見なかったか?』


『ベールだ。現在前面の敵と交戦中。他から何も連絡は無いぞ。皇帝はどうした?』


『…城に居ない。どこに脱出路があるんだろう。これから捜索する。』


『分かった、早めにな。』


「ちっ、隈なく探せ!どこかに非常出口の隠し扉がある筈だ。城の周辺には出ていない。だとすると、地下通路か何かがある筈だ。探し出せ!」


B集団が躍起になって城内を探しまわり、城内に居たメイドや下働きの者達に聞いて回ったが彼らが知る筈も無かった。息のある近衛部隊に聞いても、彼らも知らなかった。B集団は遂に皇帝を捉える事が出来なかったのだ。だがそれは、第14連隊とレティシアの攻撃によって貴重な時間を稼いだ結果だった。エンメルス達の突入が彼らの放火によって牽制され、しかも戦力を二分した事により制圧時間が伸びた。この小さな遅延の積み重ねが皇帝脱出の為に必要な時間を確保したのだ。これはエウグスト解放戦線の計画に重大な齟齬が生じた瞬間だった。


エンメルスは皇帝の逃げた先を追跡して確保する誘惑に捕われ続けていた。だが、追跡した先がどんな場所か分からない。もし、出口に重武装の兵が集団で待機していたら?もし、あちこちに罠が仕掛けられて追跡した者達が罠に掛かってしまったら?それを考え、追跡を断念した。つまり計画は失敗した、という事だ。エンメルスは切り替え、無線機を手にした


『エンメルスだ。計画は失敗。急いで後退しろ!』


『なっ、なんだと!?…モーリス了解、D集団を後退させる。こちらも相当被害が出ている。このままエウルレン街道方向に撤退するが、城の方は大丈夫か?」


『まだ城に敵が多少居る。こいつらを片付けないとこちらも後退出来ない。D集団は街道入口で防衛線を張っておいてくれ。B、C集団の合流後にザムセンから撤収だ。それと転回場を防御陣地化しておけ。あそこが取られると撤退出来ない。』


『分かった。E集団にも連絡しておく。』


さて、次は海の方か。

直ぐにエンメルスはA集団のレパードに連絡した。


『エンメルスだ、計画は失敗、直ちに撤収しろ。そちらから巡視船に連絡可能か?』


『レパードだ。海兵はまだ立ち直っていない。海岸線から街の方へ海兵の移動は無い…が、牽制しなくて大丈夫か?』


『ああ、生きて帰る事が目的だ。皇帝を押さえられなかったという事は軍を牽制する事が出来ない。次を考えよう。だが、今は撤収する事が優先だ。』


『分かった、こちらから回収要請を出す。』


『頼む。生きて帰れよ。』


『了解だ、お前もな。』


さて、撤収の連絡は終わったが、大人しく撤収させて貰えるかどうか。まずはこの城の前面に展開する連中を片付けないと移動も出来やしない。


「よし、お前等、祭りは終わりだ!これよりB集団はC集団と城前面の敵を排除し、D集団と合流の上でザムセンから後退する。城に転がる銃は全て回収しろ。敵も味方もだ。弾薬も残すな。行動開始!」

ジャンル別月間8位になってましたよ、ヒャッホー

皆様が読んで頂いた結果です、本当にありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ