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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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67.混乱のザムセン

ザムセン軍港に大音響が響き渡る。と、同時に異常な振動がザムセンを襲った。ガルディシア陸軍第一軍宿舎に居る軍人達は一斉に跳ね起きた。


「なんだっ、何が起きた!!」


「おい、明かり付けろ!何事だ!」


「起床ーー!!装備を整えて集合しろ!!


「おい、明かりが点かないぞ!!」


起床の号令がかかって慌てて装備を整えようとするも、宿舎の明かりが点かない。混乱の中、一部の陸軍兵がぱらぱらと表に出始めると、ザムセン軍港辺りが真っ赤になっていた。どうやら軍艦が爆発したらしく、小さな爆発音が途切れなく聞こえてくる。


「おい、船が燃えているぞ?」


「どこかの奇襲攻撃か!?」


「そんな馬鹿な。うちの…しかも帝都に攻撃仕掛けてくる奴なんざいねえよ。」


「じゃ、海さんの事故か?」


不安そうに話す兵達を更なる衝撃が襲った。

ベール率いるC集団が仕掛けた爆弾があちこちで爆発し始めたのだ。この第1軍駐屯地に程近い陸軍省の建物で大爆発が発生し、それとほぼ連続して元老院議会の荘厳な建物や警察軍本部、そして海軍省の建物が爆発炎上し、電気が切られたザムセンの町を眺める兵達の顔を赤々と照らし出した。


ガルディシア陸軍の第一軍司令ランツベルグ中将は最初の爆発で飛び起き、電気が切られている事に気が付いた時点で破壊工作では、との疑念を抱いていた。続いて連続した爆発が市内で発生した事により疑念は確信に変わった。枕元の電話で司令部や警察軍本部を呼び出すも、どこも電話は通じない。直ぐに着替えて当番兵を呼び出した。


「おい、急いで第一軍司令部に向かえ!」


「了解です!」


日本から輸入した旧式のセダンにて司令部に向かおうとしたランツベルグ中将は、道の途中途中にバリケードが築かれていて司令部に辿り着けない。しかも、向かう第一軍司令部の方から轟々と火の手が燃え上が上がっている。先程の爆発は陸軍省だったのか…しかもあちこちに障害物を設置されていて、向かえない。これは随分用意周到だな…兵は無事か?いや、それより陛下はご無事なのか!?


「司令部はもう良い、第一軍の宿舎に向かえ。」


まずは兵を纏めて皇帝陛下の居城に向かわねば。

ランツベルグ中将は第一軍の宿舎に向かおうとするも、途中途中に設置されたバリケードに阻害され、おまけに爆発騒ぎで帝都の臣民達が何事かと道路に出てきて行く手を遮っており、なかなか辿り着けなかった。ようやく辿り着いた頃には、第一軍宿舎には既に全員が装備を整えて整列していた。だが指揮官クラスは何人か来てはいない。城下に住んでいる高級指揮官達は、やはりあの障害物に阻まれて辿り着けていない。


「ファーヴィグ大佐、遅くなった。今直ぐ動ける部隊はあるか?」


「ランツベルグ中将閣下!私の連隊は直ぐに行動可能です。」


「よし、君の連隊は今直ぐゲルトベルグ城に向かってくれ。」


「閣下、一体何が起きているのですか?」


「分からん。だが電気が点かん事といい、通信が出来ん事といい連続して発生した爆発といい、何者かによる攻撃だ。皇帝陛下の安否が心配だ。すぐにゲルトベルグ城に向かえ。」


その時、一際大きい爆発が発生した。

港の方から恐らく戦艦と思われる大型艦が数隻同時に大爆発したのだ。それは遠くからもはっきりと見えた。海面付近まで船の底が見える程に艦が上昇した後で真っ二つに折れ、更に弾薬庫に引火したのか更なる大爆発によって辺りを火の海にしていた。この爆発によって隣接する船にも被害は拡大し、さながらザムセン軍港は地獄の様な有様だった。


「おおおおお…なんて事だ……」


「ファーヴィグ大佐、急げ!敵は相当に用意周到だ。立ちふさがる敵は実力を以て排除せよ。」


「了解しました!連隊傾注!我々はこれよりゲルトベルグ城に向かう。皇帝陛下をお守りするのだ。我々の前に立ちふさがる者は全て敵である。実力を以て排除せよ!連隊前進!」


「それにしても一体どこが攻めているんだ…ニッポンって事もあるまいが。」


ランツベルグ中将は更に行動可能な部隊を探して第一軍敷地内を探しまわった。


その頃、ゲルトベルグ城では最初の爆発が発生した時点で、皇帝を守る為に近衛部隊が動き出していた。ゲルトベルグ城の構造は左側低層階に使用人達が居り、右側低層階には親衛軍本部が置かれていた。そして左側中層階には客間や会議室、謁見室があり、右側中層階には近衛部隊が詰めている。中央上階に住まう皇帝を守る為、近衛部隊が展開していた。親衛隊の中から選抜された近接戦闘及び射撃に秀でた者達を集めた近衛部隊は、新式の56式小銃を装備して陛下の周辺をガードする。そこに、エンメルス率いるB集団の急襲を受けた。


電気が止まった城の中は所々に蝋燭が灯された状態だった。薄明るい場所、真っ暗な場所が殆どで視界は無いに等しかった。だが、それは相手も同じ筈だったのだ。だが、まず親衛軍本部があるゲルトベルグ城低層階が襲われた。親衛軍本部勤めのシェーラー中尉には侵入してきた敵が全く見えない。だが確実に敵は城の中に入っている。その証拠に、隣に居た同僚が血まみれで倒れている。どこかを撃たれたらしいが、全く音はしなかった。


「全員注意しろ!既に敵が侵入している!!」


「どこだ!全く見えん!!明かりは点かんのか!!?」


「一切電気が止まっているようだ。蝋燭灯せ!無いよりマシだ!」


蝋燭を灯そうとした瞬間、そこに弾着が集中する。蝋燭を持ってきた親衛軍の兵が穴だらけになって死んだ。恐怖に駆られて相手が居そうな場所に向けて銃を撃つも手ごたえは無い。一体この暗闇の中でどうやって狙って、どうやって殺しているんだ!?銃の音さえ聞こえないのに…これは確実に銃創だ。撃たれているんだ。なのに、何故!?シェーラー中尉の疑問は最後まで解けなかった。数秒後には彼も隣の同僚と同じ状態で転がっていた。そしてゲルトベルグ城の低層階からは銃声が聞こえなくなった。


そして海軍宿舎でも大混乱が続いていた。

当初の爆発から立ち直った海兵達は、急ぎ船に向かって消化作業を行おうと集まってきた。だが、爆発しているのは港の入口付近の見慣れない古い型の巡洋艦だった。そこでどうする事も出来ずに茫然としていると、今度は係留していた戦艦何隻が同時に爆発したのだ。しかもこの爆発によって消火作業をしようと集まってきた海兵達は大打撃を受けた。爆発の衝撃波や飛び散った火炎によって轟々と燃える船と共に沢山の海兵達が燃え上がった。後続の海兵達も余りの火勢の強さに為す術も無かった。だが、爆発炎上した船の火災が隣の船に延焼する状況となってきた為、慌てて消火作業を開始したが、正に焼石に水だった。


第一艦隊司令ザームセン公爵は、お忍びでとある場所に潜んでいた。

正式夫人ではない別宅に居たザームセン公爵に対して、海軍本部が爆破された事と通信不通だった事から、連絡将校が直接ザームセン公爵の邸宅まで深夜に連絡をする為に尋ねに行き、そこで不在が発覚した。ザームセン公爵はこの緊急事態での不在と帝都の惨状からスパイ容疑がかけられたのだった。公爵は急ぎ海軍本部に行こうとしたが、当然C集団によるバリケードによって辿り着けない。しかも所々道路が破壊されており、仕方なく海軍宿舎に向かった後で、姿を表した瞬間に逮捕された。この容疑が晴れる頃には、ザームセン公爵家で最も権力を持つ公爵夫人によって彼個人に更なる責め苦がザームセン公爵を襲った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 誤字かな? >ゼームセン公爵家で最も権力を持つ公爵夫人によって彼個人に更なる責め苦がザームセン公爵を襲った。 ザームセン公爵がゼームセン公爵になってますね。
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