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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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65.魔女の大釜

エウルレン北にあるブルーロ特殊作戦団のアジトの中にヴァルター曹長が息を切らせて飛び込んできた。ヴァルター曹長は無念の表情で報告した。


「ブルーロ隊長、エウルレン南のバス駐車場に集まった連中への潜入作戦は失敗、ハンスが殺られました。ギュンター少尉はその場で監視を続けています。警察軍投入をお願いします!」


「ハンスが…?一体どうやってバレたんだ…その警察軍なんだが、さっきから全然連絡が取れない。それどころかザムセンへの回線も通じないんだ、一体どうなっているんだ?」


「それは…もしかして通信遮断されているのではないでしょうか?」


「なんだと?」


「これは大規模な何かの前触れなのでは…?」


「その可能性も高いな。そうするとギュンターも危ないかもしれん。一人で監視は危険過ぎる。急ぎ戻るよう連絡したいが…面の割れていないのはヨーゼフか。行けるか?」


「行けますが、どこに行くかの指標を頂きたいです。」


「どこ辺りに潜んでいるんだ、ヴァルター?」


ヴァルター曹長は簡単な地図を描き始め、ブルーロに渡した。


「ここが連中が集まっている駐車場、この場所が警察軍の集合場所、俺達が潜んでいたのはこの倉庫の建物近くの傍です。わかるか、ヨーゼフ?」


ヨーゼフはヴァルターの書いた地図と、周辺の詳細地図を照らし合わせて位置を確認した。


「大丈夫です、これなら分かります。…武装が必要ですか?」


「分からんが、一応最低限の武装は必要かもしれん。警察軍と連絡が取れないのが気にかかる。見つからない類の武装をしていけ。」


「了解です。」


そしてヨーゼフ軍曹が正にアジトを出ようとしたその瞬間、タイミングが良い事にギュンター少尉が秘密警察のテオドールを連れてアジトに飛び込んできた。既に全力で走ってきたようで、直ぐに話せる状況にない程に息が上がっており、室内に入るやいなや二人とも床に倒れ込んでいた。


「ギュンター!一体どうしたんだ?何故持ち場を離れた?いや、これから撤収を伝えようと思っていたが。」

「……ハァハァ……大変です…解放戦線の武装蜂起です…既に警察詰め所は壊滅しました…」


「なっ、なんだって!?」


ギュンターの一言で室内は騒然となった。

その後、息を整えたギュンターとテオドールの話によると、既にエウルレン南に集まった警察軍と、エウルレン中央の警察軍詰め所は全滅し全員射殺された事。しかも市内監視要員の警官達も巡回中に敵と遭遇した場合はその場で射殺されていた事。警察に詰めていた秘密警察の大部分は詰め所での掃討にあって殆ど射殺されており、運よく逃げる事が出来たテオドールがギュンターと合流し、ここまで逃げてきた事。恐らく、エウルレンはこれから閉鎖されるであろうから、直ぐに脱出しないとエウルレン市はガルディシアにとって魔女の大釜の中になる事。そして攻撃の手段として使われたのは手持ちの見た事も無い銃で、しかも発射音がほとんどしない上に連続射撃が可能な事。


「な…なんて事だ……だからザムセンへの回線が通じないのか…」


「隊長、それは破壊工作でしょう。解放戦線の武装蜂起なんです。ともあれここに留まるのは非常に不味い。音のしない銃なんて使われた日にゃ気が付いた時には胴体に風穴空いてますぜ。一旦、ブランザックの拠点まで引きましょう。」


「うむ、そうだな。よし、ここを引き払うぞ。テオドールと言ったか。お前もついてこい。撤収する次いでにここは爆破しろ。それと検問所の兵も連れてゆくぞ。手駒が足りん。」


「了解しました。お供します。」


未だエウルレン北側の入り口である検問所には焦った空気は無かった。何故なら市内で何が起きているかの情報が全く入っていなかったからだ。だが、そこに特殊作戦団のエバーハルトがやって来て、そこに詰めている兵達に対して言った。


「俺はザムセン情報局直属ブルーロ特殊作戦団のエバーハルト曹長だ。貴様等はこれから俺の指揮下に入る。今直ぐこの検問所を撤収せよ。敵が迫っている。」


「え。え??すいません、本部に問い合わ」


検問所にいる歩哨が言いかけた事をエバーハルトは遮り言った。


「市内の通信は既に遮断された。本部も通じないだろう。エウルレンの市内では解放戦線が武装蜂起して警察官を殺して回っている。もう間も無くここにも来るだろう。撤収急げ!」


「なっ!りょ、了解です!」


だが、このやり取りの様子を観察していた者が居た。

エウルレン北の街道入口には、以前ガルディシア第二軍を食い止めるのに使用したコンクリートビルが2つあった。アルファとブラボーと呼ばれたこのビル屋上にスナイパーを配置し、エウルレン脱出を図る者のうち脅威度が高い者の排除を行っていた。


ブルーロ達は普通の恰好をしていた為、脅威度判定が低い者として見逃されていたが、検問所に詰めていた兵は当然脅威度が高いと判定される。しかも、そこに駆け寄り中の兵達に命令するような奴は当然脅威度が高い。先行したブルーロ達に追い付く為に急ぎ兵達と行動を共にしていたエバーハルトが狙撃されている事に気が付いたのは、さきほど話しかけた歩哨が血煙を上げたかと思うと前のめりに倒れて動かなくなったからだ。どこから狙撃しているのか銃声が聞こえない。だが銃創を見ると上からやや斜め下に弾が抜けている。この辺りの高所というと…あのエウルレン入り口のビルか!まずい、ここに遮蔽物なんざないぞ、既に隊長は随分先に行っているがどうやってやり過ごしたんだ?ちくしょう、とにかく逃げねえとこの場所はやば過ぎる!!


「おい、お前等散れ!!狙撃されて、」


エバーハルトは最後まで言えなかった。

突然倒れたエバーハルトと歩哨の姿を見て残りの兵達はパニックに陥ったが、次々と上から狙撃され全滅した。前を行くブルーロ達はこの事を未だ知らなかった。


「こちらアルファビル狙撃班、エウルレン北検問所はクリア。恐らく秘密警察関係者と思われる者が検問所の兵7名を連れ脱出させようと誘導していたが、こちらで対処した。」


「本部了解。引き続き警戒を頼む。北方面から脅威が接近したらすぐ報告せよ。」


「アルファビル了解。」


とっくにエウルレン内はガルディシアにとっての魔女の大釜と化していたのだ。この後、エウルレンから北方向に軍や警察の制服を着て脱出を図った者は一人も成功しなかった。

累計20万PV達成です!皆さんお読み頂きありがとうございますー!

それと誤字脱字報告大変助かってます、感謝感激ですー!

&某掲示板での書き込みは自分ぢゃありませんですよ…

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― 新着の感想 ―
[一言] めちゃめちゃおもしろいです。 これからの展開に期待してます! 頑張ってください!
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