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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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63.計画決行2日前

昨晩から始まったエウルレンでの警察の一斉取締りによる影響はそれなりの衝撃を解放戦線に齎した。ただ、いち早く幹部クラスを市内から撤収させていた為、指揮系統へのダメージはそれ程なかったのであった。


「随分捕まりましたね…」


「そうですね。ガルディシア側が何を目的としての大量逮捕なのかは未だ分かりませんが、例の計画が露呈したとまでは行かないでしょう。バレているなら直ぐに伯爵を押さえに来る筈でしょうから。問題はエウルレン防衛の際に人員がどこまで確保出来ているかどうか。」


「確かにそうだ。ちなみに把握しているだけで150人は捕まっているぞ。その中でも比率が一番多いのはE集団だ。恐らくE集団のエウルレン防衛を担当している一部の連中が移動せずに済むからってんで盛り場でうろついていた所を捕まった状況が多い。今日は全員に通達を出して、開始までは外に出るなと命令を出している。」


「私達が言える事ではありませんが、どうにも場当たり的な印象がありますね、今回の逮捕劇は。何れにせよ、こうやって毎晩混乱を引き起こされたら、計画どころではありません。決行日前夜の集合前には警察を無力化する事が必要になるかと思います。」


「伯爵、それなんだが俺も同じ事を思っていた。E集団の一部を使い、エウルレンにある警察詰め所を通信遮断と同時に攻撃出来ないだろうか?」


「そうですね。当初計画にこれが無かったのは警察力が増強される前でしたからね、警察が脅威となるなら応じた対処が必要になるかと思います。E集団のうち通信遮断を行うのはどこの部隊でしたっけ?それ以外に、同時に警察署を急襲して無力化しましょう。それと、E集団で足りないのはD集団から抽出して補填しましょう。モーリスさん、Dから多少引き抜いて大丈夫ですか?」


「それは人数によるな。余り多いと厳しい。」


「アレストンさん、どの位が必要ですか?」


「そうだな。E集団としては警察を押さえるのに100人も居れば大丈夫だと思う。その位ならD集団も影響は出ないだろう、モーリス?」


「ああ、それなら大丈夫だ。」


「分かりました、それではDからの抽出はモーリスさんにお任せします。それと駐車場に設置するゲートの準備は出来ました。動作確認を只今行っているので、後程連絡が来るかと思います。このゲートでのチェックで問題が発生した場合の対処はやはりE集団のアレストンさん担当ですが…アレストンさん、手順覚えてます?」


「大丈夫だ。警戒すべき人物はブザーが鳴る。鳴ったら列から除いて俺達が取り押さえる。部下にも指導している。明後日に備えて、明日そのゲートで予行演習をしたいが可能か、伯爵?」


「そうですね、大丈夫そうですね。予行演習も可能ですが、日中にお願いします。それと、必ずゲートを通った先で誘導して下さい。ゲートは全部で10カ所用意してあります。ゲートを通り抜けた先には輸送用のバスやトラックがあり、そこで乗り込み輸送し、降車の際に武器弾薬を渡す手配となっています。問題がある人物は武器を渡す前に排除したい。」


「伯爵、分かってる。大丈夫だ。ブザーが鳴る奴への対処は万全だ。だが、ブザーが鳴らない奴はどうしていいか分からんぞ。」


「それはもう事ここに至っては仕方が無いかなとも。何せ炙り出す方法が無いんですよ。ああ、それとゾルダー君から連絡がありまして。例の56式小銃なんですが、親衛軍に配られたらしいですよ。親衛軍の中でも最精鋭の近衛部隊に全て供与したそうで、連日ゲルスフェルト武器試験演習場で、撃ちまくっているとか。」


「なんだと?!もうそこまで量産が出来ていると言う事か?」


「それがですね。一部は中国人が残した遺留品の流用。一部がガルディシア産なんですが、ガルディシア産は中国人の遺留品である薬莢を回収して再利用しているモノと、1個1個手作りで作っているモノらしくでですね。相当な数の不良品が出ている様です。そこで撃って確かめて良品をまた利用して、というとんでもない手間を掛けている様です。」


「それならガルディシア第一軍には56式は渡って居ないという事だよな。しかし近衛部隊というとゲルトベルグ城の防衛部隊か。エンメルス、大丈夫か?」


「昨日今日使い始めた連中相手にゃ遅れはとりませんよ、モーリス大尉。」


「頼もしいな。よっしゃ、警察押さえれば捕まった連中も解放される筈だ。若干の変動もなんとかなると思う。伯爵、明日はゲートの予行演習は宜しく頼む。輸送手段の手配は助かった、ありがとう。」


「いいえ、エウグストの為に、ですよ。」


「そうだな。エウグストの為に!」


その頃、ゾルダーは皇帝拉致計画についての概要についてアルスフェルト伯爵とグラーフェンを呼んで説明していた。詳細な行動計画を既にル・シュテル伯爵から聞いていたゾルダーはこれを大まかにかみ砕いていた。


「ゾルダー君、…その、1万にも及ぶ連射銃を持つ部隊がザムセンを襲うという事になるのか?」


「それは一部の部隊です。彼等は全て同じ武装をしていますので、1万以外の部隊も全て同じです。また、恐らくゲルトベルグ城を襲う部隊は精強の特殊部隊が襲います。」


「だが、幾ら何でも帝都に居るのは7万にも及ぶ帝国陸軍第一軍以外に、親衛軍と第一艦隊の海兵達もいるだろう。たった1万で何とかなるのか?実際の話、こちら側の蜂起とか期待していたのではないか、ゾルダー君?」


「その辺りも確認しています。今回は制限をした要求を行うだけであると。あちらの力を見せつけると共に迂闊にエウグスト地域への干渉を行えないようにする事が目的の様ですね。その為、今回は無理に動かないようにしてくれ、むしろこちらの弾に当たってくれるなよ、との事です。」


「ふーむ…そうか。して、どのタイミングで始まるのかな?」


「ザムセンとヴァントが停電になった瞬間が合図です。それ以降は立ち回りにご注意下さい。危険な場所は、ゲルトベルグ城、そこからエウルレンまでの街道、火力発電所、軍港と周辺の街道ですね。」


「分かった。教えてくれてありがとう、ゾルダー君、グラーフェン君。気を付ける事にするよ。」


だが、彼等と解放戦線はガルディシアの戦力を一つ見落としていたのである。

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