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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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62.エウルレンでの一斉取り締まり

「おい、テメエ俺が何したってんだよ!!」


「いいから大人しく来い。何も悪い事をしていなければ検査に協力出来るだろう!」


「だから何も疚しい事なんざしていねえって。何の容疑だよ!」


「貴様、抵抗するな!公務執行妨害だ!現行犯逮捕!」


「おいマジかよ、なんで勝手に転んでるのに俺が逮捕されんの?」


エウルレン市内ではあちこちで怒号と悲鳴が沸き起こっていた。

秘密警察であろうコートの男に率いられた警官達がエウルレン市内のあちこちで取り締まりをしているのだ。しかも明確な罪状無しに目に付く者を手当たり次第にしょっ引いて行く。だが、良く見ると引っ張られて行く者の手には特徴的なリストバンドをしていたのだ。


「ブルーロ大尉!エウルレン市内のあちこちで大規模な取り締まりが行われてます!」


「取り締まりだと?どういう類だ?」


「それが良く分からんのですよ。一見、手あたり次第に見えるような出鱈目な取り締まりをしています。公務執行妨害が多いので、恐らく難癖付けて微罪でしょっ引いているのではないかと。」


「なんだそりゃ。きっと何か目的があるに違いないんだろうが…」


恐らく、表立った警察の背後には秘密警察が居るに違いない。こうも出鱈目に逮捕や拘留を連発しているという事はエウルレン市内に居る解放戦線の麻痺が狙いだろう。現在、エウルレンでは解放戦線が集結しつつあり、この集結の目的を掴んではいないが何かありそうなので取り合えず適当に捕まえて吐かせる、という辺りか?だとすると、この時間でウロウロしているのは非常に不味いだろう。難癖つけて重要な人物が確保されてしまうと、作戦に支障が出る。すぐにブルーロはル・シュテル伯爵に連絡を居れ、市内のリーダー格及び準リーダー格の外出自粛を要請した。


そしてブルーロ特殊作戦団のヴァルターとハンスを尾行中のストルツの所にも無線で連絡が入った。


「ストルツ、大至急戻れ。今エウルレンではガルディシア警察が大規模に動いている。ここで捕まっては元も子も無い。捕まらないように大至急戻れ。」


「なに?このエウルレン北辺りではさっぱり警察を見かけないが…わかった、戻る。」


無線を聞いて鼻白んでしまったストルツは、結局二日連続で空振りに終わりそうな気配に落胆していた。急ぎ近隣のアジトに撤収したストルツは似顔絵の得意な者を呼んで、ヴァルターとハンスの似顔絵を作らせた。


ヴァルターはエウルレン北に着いた辺りで追跡の圧力を感じなくなっていた。どうやら攪乱を目的とした警察の動きを察知したのか、追いかけてきた連中は引き上げたらしい。いいぞ、北方面は警察を動かさないように指示していたが、あいつらはキッチリ守っているらしい。この辺りでの警察の動きは無い。つまり、連中の仲間で連絡が来ていないような下っ端がこの辺をウロウロしている。より取り見取りだな…よし、あいつに決めた。ヴァルターは、一人の鈍そうな男に目を付けた。


「ハンス、あの角に居る男が見えるな?左手に例のバンドをしている。何か紙を見ながらウロウロしている様なので、恐らくこの辺りには詳しく無いんだろう。何を探しているかは知らんが、声掛けてもし酒場なら適当な場所見繕って連れ込め。俺は周辺を警戒する。」


「了解、ちょっと行ってきますわ。」


ハンスがその男に声を掛けようと近寄り、ヴァルターは人混みの中に消えた。

ハンスは男に近寄り声を掛けた。


「よう兄さん、難しい顔してどうしたんだい?」


男は声を掛けられた瞬間、辺りを見渡し自分が声を掛けられている事を認識し、突然見知らぬ男に声をかけらてた事に警戒しながら答えた。


「…え?ぼ、僕ですか?」


「ああ、そうだよ、他に誰が居るんだよ。何見てんだ?なんか探してんのかい?」


「あ、あの…僕はエウルレンが初めてで…ホテルの場所が分からないです。」


「どれ、その紙を寄越しなよ。それにホテルの場所が書いてあるんだろ?」


「え、良いんですか?助かります、お願いします。」


この声を掛けてきた男は親切にも困っている自分を助けてくれるのだ。そう解釈し、警戒を解いてホテルの場所が書かれた紙をハンスに手渡した。この紙を見ると、ホテルの場所と宿泊手順が書かれている。ホテルはエウルレン北にあり、ここから程近い場所にあった。そして地方からやってきてホテルに泊まる際には、この紙に書かれている手順でチェックインするとホテル代が只となる仕組みになっているようだ。金持ってんな…


「なんだ、近いよ。ここから歩いて200mも無いぜ。目ぇ瞑ってでも着くような場所だ。どうせなら、そこらで1杯呑んでいかねえか?兄さんあんた、名前なんてんだい?どっから来た?」


「す、すいません、僕お酒飲めないんで…気持ちは有難いんですが…僕はレヴェンデール奥のリレト村から来たんです。ビュートって名前です。」


「そうかい、レヴェンデールたぁそら遠くから来たな。ビュートか、宜しく。俺はハンスってんだ。それにしても酒が飲めねえのか。じゃ、ホテルまで案内してやるよ。」


「良いんですか?ありがとうございます!」


ハンスはホテル方向を見渡すとヴァルターの顔がちらっと見えた。

ビュートは安心したのか、険しい表情が無くなり柔和で無害な顔つきをしていた。ハンスはビュートを連れ、ホテルの方向を目指しつつ道一本逸れた路地の方向に入っていった。その後をヴァルターが追った。


そして数分後、その路地から二人の男が出てきた。


「今日はこれでブランザックまで一旦戻るぞ。必要な物は手に入った。」


「でも、この手首に巻く奴切っちゃって大丈夫ですかね?」


「うーん、適当な雑貨屋でテープを買って繋げば良いんじゃないか?詳しく見ないだろ。」


「そうかもしれないっすね。ともかく暗号表が入手出来たのは上出来ですよね、曹長。」


「うむ、ブランザックまで戻って内容を精査しようぜ。」


「了解っす。」


そしてヴァルターとハンスの帰還後、ブルーロ達は暗号表を元にチラシの内容を解読した。その内容には、3日後の午後20時にエウルレン市内にあるバスステーションの駐車場に集合せよ、と書かれていた事を掴み、この期日に向けて潜入計画を立て始めた。


後日、エウルレン北で身元不明の死体が発見され、酔っ払い同士の喧嘩か、強盗にあったものとして処理されたのだった。

誤字脱字報告大変感謝です!!本当ありがとうございます!

何時まで経っても、無くなりません…ほんとすいません。

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