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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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61.水面下の攻防

ル・シュテル伯爵は結局高田に連絡を入れ、簡単な識別を行う為の手段を相談した結果、こういう物があると渡された物はICタグが付いたリストバンドだった。勿論彼らにはどういう用途に使う物かは分からなかったが、以降の受付者は全てこのリストバンドを渡され、当日にこれを装着する事を義務付けた。これをモーリスに説明し、モーリスも理解した上で全員に説明した。


「現時点では未だ潜入されているか居ないかは分からん。ただ、これから滑り込まれた場合の対処はこれを使う。使い方は簡単だ。どちらの手でも良いが、これをこのように手首に装着する。一度装着すると外すにはバンドを切るしかない。外した物は再利用出来ない。」


そして伯爵がタブレットPCを持ってきた。

このPCの近くを通ると自動的にICタグを確認してOKかNGを判定する。


「ちなみに駄目な場合はどのようになるのだ?


「けたたましく警報音が鳴る。ここの前を通ってみてくれるかな、アレストンさん。」


「ん?ここをか?」


途端に警報音がタブレットPCから発生した。


「この手首に装着した者は警報が鳴らない。だが、それを装着していない者がここを通るとこのような警報を鳴らして教える仕組みだよ。現場では簡易ゲートを作って、そこにこれを置いて運用するんだ。」


「こんな便利なモノがあるとはな。最初からこれを用意して貰えば良かったのにな。」


「まぁ今回は色々準備が足りなかったからね、次に生かそう。何れ例のチェックを潜り抜けてこのバンドを付けられたらもう判別もつかない。何事も万能では無いんだ。重要なのは、自分達で万能に近づける努力やら完璧を目指す事さ。」


「ま、それもそうだな。よし明日からはこれを配ろう。これはどの位あるんだ、伯爵?」


「1箱に千個程入っているから、チェックポイント辺り2箱もあれば足りるのではないかな。一応、タカダさんからは20箱貰ってきているから数は足りると思うよ。」


「分かった、それはこっちで各所に運び込もう。」


「頼みましたよアレストンさん。ついでに今現在で既に受領しているのはどういう構成か分かるかな?」


「うーん、そうだな…A集団とB集団とE集団は既に全員選抜が終了している。勿論、例のチラシも渡っている。残っているのはC集団とD集団かな。元々E集団は一番最初の解放戦線のメンバーが多かったから選抜も早かった。その辺りはベールとモーリスに聞くと良いだろう。」


「それではA、B、E集団にもこのリストバンドを配布してください。」


「うむ、了解した。宿泊場所もこちらで全て把握しているからな。すぐ可能だろう。」


こうして解放戦線は新しいチェック方法を翌日から導入し、潜入を目論む何者かを検出しようとしていた。そうとは知らないブルーロ達は、朝からチェックを通ったと思しき人物の誰を拉致しようかと物色していた。ところが新たに何かをチェックポイントで配っているのだ。手順としては今迄通りだが、最後にチラシを渡す際にチラシと共に何やら袋に入った物を渡していた。受け取った者達は、直ぐに袋を開けて手首に何かを巻いていた。


「おい、話に聞いていたのと違うぞハンス。」


「そうすね…ヴァルター曹長。何か配る物が一個増えているように見えますね。」


「だが、あれを入手した者は検問を潜り抜けた奴、という証拠だ。これから攫う奴はアレを手首に巻いた奴を狙えば良いんじゃないか?」


「おおっ、さすが曹長!じゃ、場末の酒場であれ巻いた奴を狙いますか。」


「そうだな。あと秘密警察の連中にあの腕に巻いた奴を何人かしょっ引く様に要請してこい。誰が居なくなったか容易に判別されると困る。なんか適当に罪状でっち上げて1週間位ぶち込んどけばいい。いいな、ハンス?」


「了解っす、早速要請出してきます。場末はどこ辺りでやりますか?」


「そうだな。北の方に張り込もう。それだとブランザックまで直ぐに移動出来るしな。ともかくここで待っているから早く要請出してこい。ああ、そうだ。要請に一つ追加だ。北は除くと付け加えておけ。」


漸くハンスが秘密警察が居る溜まり場へと向かい、ヴァルターはその場で待っていた。暫く待っているとハンスが戻って来たので二人で北の居酒屋に向かったのだった。だが、この様子をずっと観察していた男が居た。昨日自らの感を信じて怪しい男を調べったものの空振りをしたストルツだった。彼は何人かの信頼出来る仲間を引き連れて繁華街を巡回していたのだ。ヴァルターとハンスの二人組に何かを感じたストルツは彼らを尾行し始めた。


「おい、気が付いているか、ハンス?」


「何をですか?」


「やっぱりか。俺達尾行されているぞ。お前が秘密警察から戻ってきた辺りからどうもつけられている。お前、なんかやらかしたか?」


「いや、覚え無いっす。もしや秘密警察の連中で面が割れている奴が居たとか。」


「その可能性もあるな。どんな奴か顔を見ておきたい。そこの先の店入るぞ。」


ヴァルターとハンスは街道に面している比較的大きな雑貨屋に入った。そして店舗の入口を監視出来る位置を取りつつ、裏口があるかどうかを確認した。だが、何時までたっても店の入口にはそれらしき者は入って来ない。ヴァルターは先程確認した裏口から出ようとしたが、ふと思い直して表の入口に戻ってもう一度外の通りを確認した。すると、先程まで店内に居た女が外の男に何かを尋ねられている。その尋ねられた問いに答える為に女はこちらを指さした。慌てて引っ込んだヴァルターは店の中程に控えているハンスの所に移動した。


「ハンス。思ったより大掛かりだぞ。表は張られている。裏は大丈夫か?」


「今の所は行けそうっすけど、表が大掛かりなら裏もそろそろな気がするっすよ。」


「だろうな。逃げ道無くなる前にいくぞ。」


ヴァルターとハンスはそのまま雑貨屋の裏口から逃げた。

後を追ってくるものは居なかった。


どうも雑貨屋に入った怪しい二人組が暫く出てこない。しびれを切らしてストルツは正面から雑貨屋に入った。が、雑貨屋のどこにもあの二人組は居ない。二日連続でこれか!だが、こちらの尾行を感知して裏口から逃げたのなら、あいつらは鉄板で敵だ。覚えたぞ。


「ストルツさん、追いますか?」


「既に遠くに逃げているだろう。この路地はどこに向かう?」


「街道と並行してますから北のブランザックですかね。では北の方面に探りを入れに行きますか。」


「分かってきたじゃねえか。行くぞ。」


ストルツとその一行はエウルレン北の方向に向かって歩き出した。


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