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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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58.ブルーロ大尉の勘

ル・シュテル伯爵は皇帝誘拐計画において、後方の兵站関係を一手に引き受けていた。その最たる物は1万人近くのD集団をザムセンに送り込む事である。エウルレンでの伯爵が使用可能なバス及びトラックを100台程を搔き集め、その上で送り込むタイミングと回収のタイミングを予定の時間に合わせて可能な限り実現するようにスケジュールを組んだ。そしてトゥラン港で廃艦待ちの旧式巡洋艦のボイラーに火を入れ稼働状態へと持っていった。また、地下工場と地下倉庫から銃器の搬出を行い、決行日に合わせて武器弾薬の潤沢な供給が可能となるように準備していた。


モーリス大尉はそれぞれの支部へ全ての解放戦線メンバーへのエウルレン招集命令を発令した。カモフラージュとして解放戦線の重要集会が行われる体で、エウグスト各方面から大規模な人の移動が行われたのだが、当然エウルレンの検問所では多数の問題が発生した。彼らの処理能力を上回る人間がエウルレンに流入し続けた。そこでエウルレン市に入る各検問所では大量の人員が増員され、その増員メンバーには秘密警察の人員も含まれており、解放戦線の人員がこれ程移動してくる事に疑念を抱いた。そして、その事はブランザックに拠点を構えたブルーロ達の耳にも入る。


「随分ここ最近人の流れが多いなと思っていたが、解放戦線がエウルレンで集会をやるらしい。その集会に参加するにあたり人があちこちからエウルレンを目指しているってな。」


「しかしこの規模の集会なら事前に情報を掴めると思いますが、なんか突然決まった感じがしますね。どういう集会なんでしょうかね、大尉。」


「なんだろうな。軽く情報収集した限りでは重要な集会という話だが、何か臭いな。かといって誰を出すにも人員が足りねえんだよなぁ。仕方が無い、ちょっくら俺が潜ってくるか。」


「大尉が自ら動くとか、後で問題になりませんか?」


「どうせ大した集会じゃないだろうよ。一応給金分は働かねえと恰好つかないからな。例の方は引き続きギュンター少尉に任せてあるんで2、3日抜けるぞ。後は頼む、ヨーゼフ。」


「了解です、ギュンター少尉にも伝えておきます。」


軽い気持ちで集会に参加しようとしていたブルーロ大尉であったが、エウルレン市に入った後もこの人の流れの行きつく所は判明した物の、肝心の情報が手に入らない。人の列に並び案内されるがままに受付を行った際に、対応した係りの者はちらとこちらを見てチラシを渡してきた。だが、ブルーロは自分がチラシを受け取る前の人や、自分の後の人達を観察していた。そこには自分が貰った対応と若干の差異が存在していたのだ。テーブルの上に置いてあるチラシは数種類存在していた。そして受け取る前に数字を申告した者には数種類の中から1枚を手渡し、数字を言わない者はブルーロと同じチラシを受け取っていた。ブルーロは自分の受け取ったチラシの内容と比べてどのような差異があるのかを、他の人が受け取ったチラシを覗き見しながら確認した。だが、一見して大した差異が無いのだ。語句の言い回しやらに多少の違いがあるだけだった。ブルーロは印刷時期の違い程度の事なのか?とも思ったが、納得できない何かを感じていた。受け取る際に言っている数字は一体なんだ?


予め解放戦線は、関係の無い第三者を排する目的で符丁と暗号コードを決めていたのだ。符丁は解放戦線が支給したネックレスをチラシを受け取る際に身に着けて見える位置にしている事。そしてチラシを受け取る際に解読する為の暗号表番号をいう事。各支部には数字が割り振られた暗号表が配られており、受け取る際にその暗号表と受け取ったチラシを組み合わせて内容が分かる仕組みとなっていた。ブルーロは最初の段階でネックレスをしていない事で一般市民用チラシしか渡されておらず、もし仮に情報が入ったチラシを受け取ったとしても暗号表が無い限りは内容を理解出来ない。


疑問に思いつつも集会とやらに参加したが全く何も成果が無かった。釈然としない思いでブランザック市まで戻ってきたブルーロはギュンター少尉に手荒く迎えられた。


「大尉!この大変な時期に一体なに無駄な調査してんですか!!」


「ど、どしたの、ギュンター?」


「エウルレンで大規模な何かが動いています。流通から何からとんでもない状況になりつつありますよ。言わば騒乱状態です。バスやらトラックやらの運行が数日停止するそうでエウルレン市内は大混乱しているんですよ。」


「エウルレンで?ああ、それもしかして解放戦線の重要集会とやらじゃないかな?あれって、あと数日で終わると思っていたが、まだ市内は混乱しているのかい?」


「例の12エリアの件なんですが、どうもここも関連しているようなんです。潜入自体は出来ていないんですが、昨日見慣れない色のトラックがやってきて倉庫内で積み込み作業を行った後に去っていったんですよ。そのトラックの所属が不明で調べても分からんのです。で、その工場に秘密警察を入れたんですが、何も問題が無かったんですよ。」


「ん?言っている意味が分からん。問題無かったんじゃないの?」


「すんません、分かりづらいかもしれないっすね。前回と今回と二回に分けて立ち入りしたんですよ。で、一見して在庫に変動が無いんですよ。ところが積み込み自体はしている。その工場は何を生産して何を出荷していたのか、という話で。」


「ますます分からん。前回と今回の間に生産した物を出荷したんじゃないのか?…あ、倉庫の積み込み作業で乗せた量と比べたら生産量的に合わないという話か?」


「そうです。しかもそういう事例があの12エリアで多発しているんですよ。調査対象ではないエリアでも若干そういう事例が見受けられるようです。何かが大量に動こうとしている状況だと思います。」


「そのトラックは止めて中身を確認したのか?」


「いや、すいません。確認する前に去って行きました。というか我々も車欲しいですね。人間の足じゃ追い付けませんよ。」


「車も部隊としてはあるんだけどな。誰も免許持って無いんで乗れないんだよ。時間とって免許取りに行きたいんだがな。誰か秘密警察側で免許持っている奴いないか?そいつに運転させれば良かったのに。」


「そうですね。あとで調べてみますよ。全く免許なんて面倒なモン拵えやがって…」


「話を戻すとだな、ギュンター。今、エウルレンでは銃器製造や流通の疑いがある所から大規模な物資の移動がある可能性があるという事だな?俺が探りを入れにいった解放戦線の集会とも関係あるかもしれん。どうもあの集会には何かが隠されている気がしてならん。」


「そうですね。一旦潜入チーム引き上げさせてエウルレンを探りますか?」


「その方が良いな。なんか引っ掛かる。」


こうしてエウルレンでの大規模な物流や解放戦線の動きは、ブルーロ特殊作戦団と配下の秘密警察をも引き付ける事となったのだった。

会話を1行づつ空ける形にしました。

可能であれば過去のモノも順次そのようにします。

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