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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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56.ザムセン軍港閉塞計画

「それでは計画を説明しますね。」


ル・シュテル伯爵の城ではレイヤー部隊と解放戦線の主だった者が集合していた。その中で日本から飛んできたばかりの高田がこれから行う作戦を説明していた。日本からは他に何人かの自衛隊員がやって来ていた。彼らは高田の持ってきた機材を色々と展開している。


「まずですね。解放戦線の戦力ではガルディシア海軍戦力に対抗出来ません。戦う為の手段が全く無いので、戦うという選択肢は無い事をご理解下さい。その上で、解放戦線側が取り得る手段をこれから説明致します。」


高田はプロジェクターで投影したザムセンの上空地図を拡大していった。

そこにはザムセン港と係留している第一艦隊が映し出されていた。上空から見たザムセン軍港は入口が狭く、奥が広いひょうたんの様な形をしていた。


「ここの狭い入口部分に、マルソーから旧式巡洋艦を運んで沈めます。沈める方法は艦の底に爆薬をしかけて所定の位置に来た際に爆破してこれを沈めます。また、事前にガルディシアの大型艦に対して海中から爆弾を仕掛けます。爆弾を仕掛けた船が動き始めたら、理想の位置で爆破します。これでザムセン港からの艦の出撃を防ぎます。と、同時にヴァント港でも同様に工作を行います。」

「待ってくれ、タカダさん。爆弾ってどうやって仕掛けるんだ?どうやってそこまで行く?」

「それはですね…これを使います。」


高田は後ろに控えていた日本の自衛隊員が持ち込んだ機材の中から、ウェットスーツとタンク、そして爆弾を出してきた。


「潜水用の装備です。これを着こみます。タンクは中に圧縮された空気が入っています。凡そこれで40分程度は潜ったまま水中で活動が可能です。爆弾を船の底に仕掛けた後には潜水要員は供与の海上保安庁巡視船で回収し、直ちに撤収します。尚、この爆弾は無線で爆破しますが、爆破のタイミングは上空から監視して一番良い所で爆破する予定です。」

「だが、船が動かないとなると海兵達は上陸して陸軍の第一軍に加わると思うが…」

「上陸する地点は想定可能です。この辺りですね。」


高田はスクリーン上のザムセン軍港と町に至る海岸と、その海岸沿いの山を指した。


「その上陸した海兵を釘付けにする伏兵を配置します。そうですね、第三レイヤー部隊と解放戦線の一部で山に籠った上で攻撃を行い、第一軍への合流を阻害します。ただ、それほど長い間拘束出来ないと思いますので、数度ちょっかい掛けたら撤収ですかね。2日稼げたらそれで良しです。」

「2日か…その山からの脱出は?」

「状況に応じてとなるでしょう。恐らく第一軍の2個師団は騎兵で構成されている様ですから、どちらかの師団が迂回しつつ山の後方から攻め寄せてくるでしょう。それまでには撤収しなければなりませんので…ちょうど後方の逆側から海岸沿いに出て脱出、という形になるでしょう。これも巡視船を回して回収しましょう。ですので、山に籠る人数は20名程度となります。脱出路の海岸にはボートを用意しましょう。間宮君、RHIB(複合艇)持ってきてたっけ?」

「今はありませんが供与する巡視船には装備されてます。必要量は当日までに確保可能です。」

「了解、ボートは大丈夫ですね。さて、1個軍が相手だと7万位ですか。解放戦線の全てを投入してもとても手が足りませんね。ちなみに今、解放戦線がザムセン方面に投入可能な人ってどの位でしょうかね?」

「そうですね…恐らく最大で1.5万位ですかね。他にティアーナ守備に5千です。」

「1.5万…それとザムセンとエウルレン間の街道を押さえる必要があります。第1軍が別動隊でエウルレンを襲うかもしれませんので、エウルレン守備と街道の確保、これに3千は必要になるかと。と、するならば実質1.2万が上限ですね。」

「1万少々で7万の軍を相手ですか…厳しいですね。モーリス大尉、ザムセンでの指揮はあなただ。大丈夫かい?」

「伯爵、我々には先進装備があるからね。やるからには第二軍と同じ目に遭わせてやりますよ。」

「そこなんだが、ガルディシア側はどの位の弾薬を用意しているかなんだよな。ゾルダーからの情報でも生産数は分からない。迂闊に今迄の連中と同じだと思ったら、同じ武器で対抗されると厳しいぞ。」


そう、今やガルディシア側にもカラニシコフが存在するのだ。この点を考えると今迄のような楽観的な気分にはならない。少し雰囲気が暗くなった所で高田が口を開いた。


「皆さん、彼等が入手した銃は100丁程度なんですよね?そこでこれから弾を生産するにも、相当時間がかかりますよ。どの位に生産体制が確立するかは分かりませんが、恐らくはそれほど簡単には大量生産は出来ません。やるべきは大量生産体制が整う前に潰す事です。あと数日は用意も何も出来ないでしょう。」

「それは裏を返せば数日以内になんとかしないとならないという事だろう、タカダさん?それなら、弾薬の製造工場を攻撃した方が良くないか?」

「それも考えたんですけどね。結局は製造方法が分かればどこで作っても一緒なので、1カ所潰しても、どこか別の場所で作られてしまうんですよ。そうなると追いきれなくなりますよ?」

「ううむ、そうだな…では、ザムセン攻略は第一目標で変更は無いという事だな?」

「そうですね。ではここで一旦状況整理しましょう。

 ザムセンへの攻略目標は皇帝の確保。皇帝を確保した後に退位とエウグレンの自治を要求。ザムセンへの戦力投入は1.2万。ティアーナ守備に5千、エウルレン-ザムセン間の街道確保に3千。この1.2万で火力発電所の停止、海兵を海岸に拘束、城と城下町の制圧、城制圧後の周辺要塞化と防衛を行います。その際にはレイヤー部隊で、稼働前の第一軍への破壊工作も同時に行い、軍の動きを阻害します。

 海上での目標は旧式巡洋艦2隻によってザムセン軍港とヴァント軍港の閉塞。艦と乗組員は旧第五艦隊の人員を使い、回収は巡視船3隻で行います。それと同時に潜水要員によってザムセンとヴァントに停泊中の艦隊に対し爆破工作を行います。これも要員の回収は巡視船で行います。大まかな流れはこんな感じになると思いますが、質問や疑問はありますか?無ければ詳細を詰めて行きましょう。」

「ううむ、なんとかなりそうな気がしてきたよ、タカダさん。」

「いやなんとかなると良いんですけどね。今の所この位しか出来る事が無いのが残念です。それにどうにも日本人として閉塞作戦は鬼門なんですよね。上手く行くと良いのですが。」


高田としては機雷による港封鎖が一番簡単な方法である事を理解した上で、巡洋艦を沈めて閉塞させる案と遂行する事には一抹の不安があった。過去成功した事が無い事をやろうとしているからだ。だが、ガルディシアにもエウグレンにも機雷という物が存在しない。新しく作るにしても時間が無い。その為、止むを得ないこの選択を成功させる為には、綿密な計画が必要である事を理解していた。

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