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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第一章 ガルディシアと日本の接触編】
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1_21.不死の王の幸運

危機管理センター 午後11時半


危機管理センターでは、みょうこうCICをモニターしていた。


『ハープーン、目標まで10秒…弾着、今!』


『どうだ?』


『…目標健在。ハープーン効いてません。』


『あ、急に嵐が晴れました!』


『ん?どういう事だ?嵐が無くなった、だと?』


『はい、突然天候回復しました。』


むぅ、効いてないのか。


総理は落胆しかけたが、ふと天候が回復した事が気になった。

何故、天候が回復したのか? 何故、嵐の中心部分に島があるのか? 何故、常に暴風雨が吹き荒れていたのか。そして、何故、今この瞬間に、嵐は無くなったのか?


攻撃をした結果?天気が回復した? 攻撃が効いている?


あの嵐は人為的なものなのか? あの大魔導士とやらが、島への接近を嫌って起こした嵐か?

何故、島への接近を嫌うのか。それは、島に致命的な何かがあるのではないか?


飯島総理の妄想は、実の所正解にほど近い場所にあった。ともかく攻撃は未だ全て終わっていない。24発全弾が命中した後に、どうなるか?が、問題だ。


『ハープーン全弾命中。…目標は依然健在です。』


『ううむ、やはり何か超自然的な力が働いているという事か。』


『続いて90式SSM目標まで10秒…弾着、今!』


『目標、一部損壊。上部構造物に命中。どうやら、何かシールドみたいな何かがあったみたいです。90式SSMのほとんどはこれに防がれたようですが、最後の2発が敵シールドを突き破った模様です。』


『そのようだな…全弾撃ち尽くした。一旦補給に戻る。次は第7護衛隊も含めて可及的速やかに再度攻撃を行う。』


みょうこうからのモニター画像を眺めながら、総理は確信を持った。そうだ、あの塔のシールドには限界がある。防御力を超える攻撃を行った場合、あのシールドは突き破れる。今回24発の誘導弾をぶつけたが、抜けたのは2発だった。


次に…次は海からの攻撃ではなく、だ。

天候も回復して、航空機の制限は無くなった筈だ。即座に空から対地攻撃を行えば良い。畳みかけるのだ。機械ではなく、何らかの意志ある何かの所業であるなら、回復をする前に畳みかけて連続で攻撃するのだ。


「如月君!航空幕僚長を呼べ!」!


--

佐渡島 佐渡分屯基地 午後11時半


アイナは佐渡分屯基地内の小さな部屋に居た。

女性の自衛官にこの部屋を案内され、その後にひいおばあちゃんが車椅子に乗せられてやってきた。ひいおばあちゃんは鎮静剤を打たれているので、暫くは目を覚まさないと女性自衛官は説明した。部屋の小さなベットにひいおばあちゃんを寝かせると、後で呼びに来るから、と言って女性自衛官はどこかに走って行った。そして呼びに来るを待っていたのだが一向に連絡がこない。

もう4時間も経過していた…


--

佐渡島 両津港 午後11時半


大和田司令は多忙だった。

ここ数年でも経験した事の無い様な多忙ぶりだった。本土と完全に分断された、止む事の無い暴風雨。謎の死を遂げた佐渡島の住人達。連絡を絶った小木港と輸送艦しもきた。官邸筋からの訳の分からない命令。


そんな中、先ほどから気になってた事を遂に口にした。


「原田3曹、大湯士長はどこだ?先ほどから姿を見ていないが。」


「自分が最後に見たのは、分屯基地でおばあちゃんを部屋に運んでいる所です。4時間程前でした。」


「何っ!すると大湯士長は未だ分屯基地内に居るのか?神野のおばあちゃんも未だ基地の中か!?そりゃ不味いな…」


大和田司令は彼女達を第一便に新潟に送る予定だった。そのつもりの指示を大湯士長に出していたのだが、どこかで行き違いになった模様で、彼女達は未だ基地の中でおおすみには乗っていない。なんてこった…これは失態だ。


急ぎ、彼女達を確保して輸送しなければ。ただ、天候が回復したので航空機という手段も選択肢に入っていた。


最悪、ヘリコプターかプロペラ機でも用意可能だろう。ただし…両津港の混雑を抜けるのは容易じゃないな…


大和田司令は両津港から分屯基地にどうやって戻ろうか思案した。両津港では、小木港と同様に車の渋滞が凄い事になっていた。


--

佐渡島 最初の西の町


なんとも幸運の息吹が我に吹き付けるものよ。

あの老婆、死んだものと思っていたが未だ生きておるようだ。島の中央辺りに、少数の人間共と一緒に居るな。あれは死なぬから、我のコアの修理に打って付けだ。途中、死なぬ者があればそれも含めて塔に向かおう。


コアの損傷によって、不死の王の力は著しく減少した。今や、防護障壁を維持するのみしか発揮できない。一端防御障壁を構築するには、それなりの時間がかかる。つまり、障壁の張り直しは時間的な余裕がある場合のみに限られる。あのような長距離攻撃の手段が可能な者共を相手に、障壁の張り直しは自殺行為に等しい。

かといって、暴風雨を呼べば防御障壁が消えてしまう。

そもそも暴風雨を物ともせずに圧倒的な火力を伴う攻撃手段を実行する相手に防御障壁以外の防御手段は意味が無い。その為、防御障壁を止むを得ずに維持し続けていたのだった。


だが、それもコアの修復が終われば…

しかも既に確定した死なぬ者が居るのだ。


不死の王は自らの幸運ぶりに100年ぶりにほくそ笑んだ。

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