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ガルディシア帝国の興亡  作者: 酒精四十度
【第三章 ガルディシア回天編】
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52.ブルーロ作戦団、再び

あれから1件の摘発も無い。このエウルレンから、いやバラディア大陸から一切の密造銃が消えたかの様だ。秘密警察の人員を大量動員し、疑わしい場所への家宅捜索や強制捜査を何回か繰り返したが、例の検問所以降は銃の1丁、弾丸の1発も発見していない。どうやら、この密造銃を流通、或いは製造しているのはかなり大掛かりな組織の様で対応も早い。こういった案件は表側から攻めるより、裏手から踏み込んだ方が確実だ。潜入捜査の連中はどこまで潜り込めたのやら。早めに結果を出さないとそろそろ皇帝が癇癪を起こす頃だ…


「局長!レオポルド局長、ブルーロ大尉から連絡が入っています。」


現在、ブルーロ大尉はエウグスト人による反ガルディシア組織への潜入を試みていた。ただし、その実態が不明な為、エウグスト地域全域に対して少人数による潜入工作を仕掛けている。ブルーロ大尉は、レオポルド局長からの潜入捜査の指示を受け、直ぐにシュタインバウアー教育機関に居る自分の部下を呼び寄せた。そしてブルーロ特殊作戦団を再結成し、尚且つ秘密警察から何人かを引き抜き、潜入工作部隊をエウグスト地域全域に解き放った。総勢50名からなる特殊作戦団は、旧ブルーロ特殊作戦団を中核にして新たに転属した秘密警察官達を配下に従えている。そしてエウレルン市とエウグスト市を結ぶ中央街道の街ブランザックに拠点を設置した。流石にル・シュテル領内のエウルレンには拠点を置けない。どんな妨害工作があるか分かったものではないからだ。だが、エウグスト市では遠すぎる。その為、ル・シュテルの影響力が無くエウルレンに程近い上に交通の利便性が良く、適度に大きい街としてブランザックを拠点に選んだのだ。


「レオポルドだ。」

「局長、ブルーロです。ブランザックでの拠点化が終わりました。順次、各部隊は潜入工作を開始しております。尚、ブランザック市内を調査した結果は白でした。反ガルディシア組織の気配もありません。」

「拠点は表向きそれと知られぬ様にしているだろうな?」

「当然です。表向きはベラック商会という名の看板を付けてます。それ用に取引も何点か行っています。尚、取り扱い商品には金属加工物をメインにしてますんで、そこからも網を掛けます。」

「なるほど、それは良いな。」

「それにしても、この電話とは便利なモノですな。」

「ああ、バラディア大陸全域とまではいかんが、ザムセン、ヴァント、エウルレン、ブランザック、エウグスト、ヴォルンは電話が通じるようになった。あと各軍港や陸軍基地関係だな。何れ全土に電話線が引かれれば、どこでもこういう即時性のある情報のやり取りが可能となろう。」

「それは逆に言うと、反ガルディシア組織の連中も同様にその領域内に居るならば、即応性のある情報のやり取りが可能という訳ですか。」

「うむ、先進技術は誰が使っても同じだからな。当然、相手も同様だ。」

「とするならば、やはりエウルレンが一番怪しいですな。どうにも相手の動きが早い上に対処も的確なんでしょう。あれから全く尻尾を掴めないのも、相手側の情報網の速度が早い事に起因している気がしてなりませんな。」

「うむ、その可能性も高いな。引き続き調査の方を頼む。」

「了解です。」


ブルーロがブランザック市で作った拠点ベラック商会は表向き金属加工品を取り扱う。そしてこの商会には、ブルーロ大尉を筆頭に12人程の人員が詰めていた。人員は全て秘密警察で構成されているが、普段の商会としての営業中には全員商会の社員として働いている。建物自体は三階建てであり、三階には社長室と金庫と称する武器庫があった。ブルーロは表向き、ここの社長として動いている。そしてこの拠点には特殊作戦団のギュンター少尉とオットー上等兵も詰めていた。オットーはエステリアの森で遭遇した一件で共に脱出した事から、ブルーロの信頼も厚い。ここではオットーは金属加工品の仕入れ関係を担当していた。


「あれ、おかしいな…」

「どうした、オットー?」

「ええとですね、この金属加工品なんですがどうも先週から値上がり続けているんですよ。一時期随分安くなってて仕入れやすかったんですが値上げと同時に入荷がどうも不安定になってまして。で、今回も未入荷で納品未定になっちまいました。」

「ふーん、どっかで需要が高騰しているんだろうさ。…ん?おい、待てそれ見せろオットー!」

「お、大尉どうしたんすか。これですよ。」


オットーから見せられた仕入れ台帳を確認したオットーは、ある項目に注目し、その価格の推移情報を追っていった。それは彼の頭の中にあるエウルレンでの調査の時期を正確に相場がなぞっていたのである。つまりエウルレンで秘密警察の活動が活発な時期には、その金属加工品の価格は低下し、調査や活動が下火になると価格は上昇する相関関係が描かれていた。


「おい、オットー!でかしたぞ!!」

「え、え?えええ。なんですか、俺なんかしました?」

「なんかしたじゃねえぞ、大手柄かもしれん!!おい、この金属加工品の流通経路を全て洗え。どこから来て、どこに納品するか。どこが作っているか、全てだ!密造銃に関連した加工品かもしれんぞ。ギュンターお前が指揮を取れ。何人使っても構わん、早急にだ。」

「了解!」


ベラック商会に詰めていた12人は、この金属加工品の全てを洗い出し始めた。だが、そこから得られた情報は実に不透明だった。所々の情報が切れているのだ。まるでこの加工品が出来る迄の履歴を辿ると流通であったり製造であったりの記録の所々が辿れない。意図的に情報が辿れないようにしてある工作の気配がある。そして最大の問題は、エウルレンで流通している筈の大量の金属加工品が、何時の間にかどこかに消えているという事だった。表向きに見える需要と、実際に流通してい出荷量に相応の乖離がある。これはどこに消えているのか?


ブルーロは、この消えた先に銃器工場があると睨んでいた。

そこで何組かのチームを呼び戻し、この金属加工品に携わる製造、輸送部分への潜入へと方針を変更したのだった。

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